テラーノベル
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その夜、カジノの重厚な扉を閉めた後も、室内の空気は張り詰めたままだった。いや、むしろ密度を増している。
甘く、重く、肺に粘りつくような麝香の香り。それは、洗練された香水などではなく、もっと根源的な――生き物が発する『渇望』の匂いだった。
カウンターの奥、革張りの椅子に深く沈み込んだMafiosoは、自身の膝を爪が食い込むほど強く掴んでいた。完璧に整えられたスーツの襟元は汗で張り付き、浅い呼吸を繰り返すたびに、喉仏が大きく上下する。
「……おい、いつまでそこに居座るつもりだ」
「帰れってか? そんな顔で言われても説得力ねえよ、ボス」
Chanceは足音を忍ばせずに近づいた。Mafiosoは顔を上げない。深く被ったフェドラの下で、何かが激しく蠢いているのが分かる。
「来るな……っ! 今の俺は、加減が……」
「できないんだろ? 知ってるよ」
Chanceは、怯えるどころか愉しげに口角を上げた。彼はMafiosoの椅子の肘掛けに両手をつき、逃げ場を塞ぐようにしてその顔を覗き込んだ。
「見せろよ。あんたが必死に隠してるもんをさ」
Chanceの手が伸びる。Mafiosoがそれを振り払おうとした瞬間――指先が帽子のつばを掠めた。
カサリ、と乾いた音を立てて、黒いフェドラが床に落ちる。
月光に照らされたのは、漆黒の髪を割って天を突く、真っ白な二つの『耳』だった。長く、美しく、けれど血管が浮き出るほどに充血し、生き物のようにビクンビクンと痙攣している。管理者の理性を象徴する帽子が落ちた今、そこにいるのは冷徹なボスではない。発情期の熱に焼かれた、一匹の飢えた雄だった。
「……はは。すげえな、ほんとにウサギだ」
Chanceの感嘆の声に、Mafiosoは恥辱と興奮で顔を歪めた。白い耳が、羞恥を表すようにパタパタと小刻みに震える。
「見る、な……っ」
「嫌だね。……ここ、そんなに熱いのか?」
Chanceの指先が、無防備に晒された耳の付け根をなぞった。神経が集中する急所。そこを親指の腹で擦り上げ、先端を甘噛みするように爪で弾く。
「あ、ぅ……っ!?」
Mafiosoの背が大きく跳ねた。喉の奥から、理性が弾け飛ぶ音がした。獣の呻き声と共に、Mafiosoの腕がChanceの腰を乱暴に引き寄せる。
「……後悔、するなよ」
警告は、すぐに捕食者の咀嚼音に変わった。Chanceの唇を塞いだのは、甘いキスではない。呼吸さえ奪い尽くそうとする貪欲な吸引だ。舌が口腔内を蹂躙し、唾液が混ざり合う水音が、静寂が広がる店内に卑猥に響き渡る。
「ん、ぐ……っ、は、げし……っ!」
Chanceが酸素を求めて口を開けると、Mafiosoはそれを許さず、さらに深く舌をねじ込んだ。同時に、Chanceの衣服が引き裂かれる。ボタンが飛び散る音。布が裂ける音。Mafioso自身のスーツもまた、もどかしげに脱ぎ捨てられ、灼熱の皮膚が露わになった。
冷たい床に押し倒されたChanceの視界に、揺れる白い耳と、欲情で赤く染まったMafiosoの瞳が映る。
「あんた……、目が、イッてるぞ……」
「お前のせいだ……。この匂いが、俺を狂わせる……」
MafiosoはChanceの脚を強引に割り開き、自身の硬く勃ち上がった欲望を、濡らす暇さえ惜しんであてがった。ウサギの本能。それは、速く、深く、確実に種を残すこと。
「ぐっ、……ぅあ!!」
一息での貫通。裂けるような痛みと共に、質量のある熱がChanceの最奥までをこじ開けた。内壁が異物を排出しようと収縮するが、Mafiosoはそれを許さない。腰を引くことなく、さらに奥へ、奥へと楔を打ち込んでいく。
「あ、がっ、あっ、あっ……! ま、Mafioso……っ!」
モーターのような速度。人間離れしたピストンが、Chanceの思考を白く染め上げていく。ガツン、ガツンと腰骨がぶつかる音が加速する。突かれるたびに、Chanceの身体は床の上で跳ねた。
「ッ、締め、るな……! そんなに吸い付かれたら、暴発する……っ!」
「うるせえ……っ! あんたが深いところばっか、抉るからだろ……っ!」
Chanceの言葉は悲鳴に近かった。拒絶ではない。あまりの快楽に身体が勝手に収縮してしまうのだ。その反応が、Mafiosoの獣性をさらに煽る。頭上の耳がピンと張り詰め、Mafiosoは咆哮するようにChanceの首筋に噛み付いた。
「良いぜ、加減なんかするな……! 壊れるまで犯してみろよ、ウサギ野郎……っ!」
Chanceの挑発が、最後の引き金だった。
「だめだ、もう……っ、出る……っ!」
限界を超えた速度での連打の後、MafiosoはChanceの腰を死に物狂いで抱きしめ、最深部へと自身を突き刺した。
ドクン、ドクン、と熱い波動が炸裂する。注ぎ込まれる白濁した熱。それは、一人の人間の許容量を超えているのではないかと思うほど、長く、濃密な射精だった。Chanceの腹の底が、Mafiosoの熱で満たされ、重く熱くなっていく。
「はぁ、ぁ……っ、すげえ量……」
意識が飛びそうなほどの絶頂の中、ChanceはMafiosoの汗ばんだ背中に爪を立てた。射精が終わってもなお、体内の楔は硬さを失わず、むしろさらに大きく脈打っている。
Mafiosoが顔を上げた。乱れた黒髪の間から覗く白い耳は、まだ熱を帯びて痙攣し、次はどうしてやろうかと待ち構えるように動いている。その瞳に、理性の光は戻っていない。
「……言ったはずだ。一度火がついたら、燃え尽きるまで止まらないと」
再び熱くなり始めた欲望を感じて、Chanceは力なく、けれど満足げに笑った。
「上等だ。……朝まで付き合ってやるよ、ボス」
月が隠れるまで、カジノの床には獣の荒い息遣いと、甘い喘ぎ声が止むことはなかった。
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最高だあ