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「ロレッタ、お前との婚約を破棄させて貰う。俺はお前の妹のレミリアを愛してしまったんだ!」
婚約者に冷淡な瞳で睨まれる。私は周りの音がだんだんと聞こえなくなっていった。
ああ、とうとうこの日が来たか…
今日は王宮で開催されているパーティだった。いつかは言われると思っていたが、まさかこんな人がたくさんいるところで言われるとは思いもしなかった。
私は興奮気味に唾を吐き出しながら喚くジョージ王子とその後ろにか弱そうに隠れる妹のレミリアを他人事のように冷めた目で見つめていた。
「聞いているのか!」
反応を示さない私に王子が痺れを切らす。
だいたいこの王子は短気で馬鹿で女癖が悪い、元々婚約者になどなりたくなかった私は頷いた。
「わかりました。では今日を持って婚約を破棄させていただきます」
私は泣きわめくことも理由を聞くこともなく淡々と答えた。
「では私がいると空気が悪くなりますのでおいとまさせていただきます」
そう言ってザワザワとうるさい会場を後にした。
騒がしいパーティ会場を背中に静かな外に向かって歩いていると後ろから足音が聞こえてきた。
「お姉様!」
妹のレミリアがあとを追ってきたようだ。
「レミリア…またなのね」
私はため息をついて振り返る。
「ごめんなさい、だって私ジョージを好きになってしまってしまったの」
はは、ついさっきまで私の婚約者だったジョージ王子をもう呼び捨てとは、きっとかなり前から関係があったのだろう。
この妹はいつも私のものを欲しがった。私が貰ったプレゼントのぬいぐるみに始まり、服やアクセサリー、ドレスに恋人…そしてとうとう婚約者。
親も同じ双子なのだが性格が明るいレミリアを溺愛していた。
「ロレッタはお姉さんなのだから我慢しなさい」
「ロレッタはお姉さんだから我慢できるよね」
そう何度言われてきたかが、さすがに今回の婚約破棄にはなにか言ってくれるかしら。
そんな淡い期待に屋敷に戻る。
「ロレッタ…すまないな。王宮からどうしてもレミリアを婚約者にして欲しいと言われてな」
「ロレッタは姉なのだから妹のレミリアの幸せを喜んであげられるわよね?」
「はい…お父様にお母様…」
私はこの人達に何も望まない。
笑顔で妹だけの幸せを願う両親に心がスーッと冷めていくのを感じた。
もう何も望まないから構わないで!
「では私は疲れたので部屋で休んでいますね」
「ええそうしてくれる? これからレミリアの婚約の準備に忙しくなるから」
「そうだな! ロレッタはゆっくりと部屋で休んでいるといい。王子とレミリアが幸せになれば婚約破棄の噂などすぐに無くなるさ!そしたらロレッタにも素敵な相手を見つけてきてやるからな」
父と母の言葉に私は呆れる事しか出来なかった。この人達は私達のどっちかが王子の婚約者になれれば構わないのだろう。
私はなんにも答えたくなく、部屋に一人戻った。
それから数日後、盛大に王子と妹の婚約が発表された。
妹の要望で式は豪華にしたいと一年も前から準備されることとなった。
私の時はそんな事聞かれもし無かったのだが。
王子は妹にベタ惚れらしくわがままをなんでも叶えてあげていると両親に自慢するように話している。
「私が花が好きと言ったら庭園に豪華な植物園を作ってくれたのよ!国中の花が植わっているらしいわ。今度そこでお茶会があるの」
「まぁ素敵ね! 私も行ってみたいわ」
お母様が嬉しそうに顔を輝かせる。
「もちろんお母様達も来て構わないわ! あっ…でも…」
レミリアが気まずそうに私の方をみた。
「私は辞退させていただくわ、さすがに元婚約者がいたら…ね…」
「お姉様…そんな言い方…酷いです。 私はただジョージから思いを伝えられてその思いに従っただけなのに⋯」
妹は私の答えに目に涙を溜めて俯いた。
「ロレッタ!レミリアは妹なのよ、どうして幸せを喜んであげられないの!あなたは姉でしょ!?」
泣くレミリアを慰めるようにお母様は寄り添って私を睨んだ。
「お母様すみません…レミリア、ごめんなさい。そんなつもりじゃないの…」
妹は俯いていた顔をあげる、その目には涙はなかった。
「ならしばらくはお姉様あんまり屋敷から出ないで下さいね、そしたら反省したって思って許すわ」
「そうね!その方がいいわ」
盛り上がる妹と両親に私は何か言うことを諦めた。