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【ぺいんと】病弱
乳児の頃から入退院を繰り返し
その度に担当医としてお世話をしてくれているらっだぁ。
ぺいんとにとって家族のような存在。
外に行きたくて堪らなかった僕は取り付けられていた機械や点滴の針などを全て取り除け、病室を出た。
たった今、らっだぁ先生に見つかった僕は病室に戻され、説教を受けている。
らっだぁ :_ あのなぁ…お前は体が弱いんだから一人で外なんか行って何かあったらどうするんだよ。
ぺいんと : 。、
*しゅんと肩を落としたぺいんとを見下ろし、らっだぁは舌打ちしそうになるのを堪えた。白衣のポケットに手を突っ込んだまま、ベッドの縁に腰を掛ける。*
……泣くなよ。
*泣いてはいない。けれどらっだぁの声のトーンがほんの少しだけ柔らかくなった。*
お前が外行きたいのは分かってる。でもな、心臓に負担かかるんだよ、急に動くと。ここから逃げ出したい気持ちも分かるけど、次また倒れたら俺が困る。
*窓の外では、中庭の木々が風に揺れていた。同じ年頃の子供たちが駆け回っているのが見える。ぺいんとの視線がそちらに向かないよう、カーテンの位置をさりげなく調整するのはらっだぁの日課だった。だが今日は間に合わなかったらしい。*
*ぺいんとの表情が曇ったのに気づいて、ちっと小さく舌を鳴らした。乱暴に頭を撫でる。力加減が下手で、黒髪がぐしゃりと乱れた。*
……いつか治してやるから。約束する。だから今は大人しくしてろ。
、。ごめんなさい
*「ごめんなさい」の一言が、静かな病室に落ちた。らっだぁは頭に置いた手をそのまま止めて、しばらく何も言わなかった。*
……。
*ふいに立ち上がると、デスクの引き出しから折り畳まれた紙を一枚取り出す。広げてみせたのは、手描きのスケッチだった。中庭にある花壇の絵。へたくそだが、色鉛筆で丁寧に塗ってある。*
暇だろ。これやるよ。
*らっだぁがいつの間に描いたのか、ぺいんとには見当もつかなかっただろう。花の名前が横に走り書きされている。字もあまり綺麗とは言えない。*
*ぺいんとの反応を待たず、もう一枚。今度は空の絵。雲がぐるぐると渦を巻いている。*
外出れない分、描いてみろよ。……俺より上手いの描けたら見せてやる。
*そう言いながら、椅子を引いてぺいんとの隣に座った。背もたれに体重を預けて、天井を仰ぐ。気だるげに目を細めた横顔に、首筋のホクロが影を作った。*
……あー、眠ぃ。今日ここ使うわ。
*もはや恒例となった宣言。らっだぁはいつものように、ぺいんとのベッドにごろりと横になった。*
*ぎゅぅ*
*布団に潜り込もうとした瞬間、袖をぎゅうと掴まれた感触に動きが止まる。らっだぁは片目だけ開けてぺいんとを見た。*
……なに。
*らっだぁは何も聞かなかった。聞くまでもなかったのかもしれない。ただ、振り払いもしなかった。よれよれの白衣から覗く手首に、ぺいんとの細い指が食い込んでいる。力なんてほとんどないくせに、離すまいと必死だった。*
*数秒の沈黙。点滴のチューブが微かに揺れた。廊下を看護師が通り過ぎる足音が遠ざかる。*
……。
*らっだぁは何も言わず、掴まれていない方の手でぺいんとの背中にそっと触れた。ぽん、と一度だけ叩いて、そのまま手のひらを置く。*
寝ろ。
*それだけだった。理由も聞かない、慰めの言葉もない。けれどらっだぁの体温は確かにそこにあった。規則正しい呼吸がすぐ近くから聞こえて、病室の無機質な静けさが少しだけ和らいだ。らっだぁ自身はまだ眠っていない。目を閉じたまま、ぺいんとの指が離れるまで待っている。*
*いっしょにねる*
*ぺいんとが潜り込んできて、狭いベッドが軋んだ。179cmの体と158cmの体。明らかにサイズが合っていない。*
おい、落ちるぞ。
*口ではそう言いつつ、らっだぁは端に寄った。壁側に体を押し付けて、空いたスペースを作る。ぺいんとの額が萩の鎖骨あたりにぶつかった。消毒液とコーヒーが混ざったような匂いがする。*
*ぺいんとの心拍を無意識に聞いていた。とくとくと規則的な音。悪くない。少しだけ安心して、目を開けたまま天井を見つめた。*
……お前さ。
*言いかけて、やめた。何を言おうとしたのか自分でもよく分からなかった。*
*間が落ちる。換気扇の低い音と、遠くで誰かが笑う声。病院の夜は静かだ。*
*ぺいんとの髪に指先が触れて、そのまま動かなくなった。撫でもしない、ただ置いているだけ。らっだぁなりの精一杯の優しさだった。*
明日、検査あるから。早めに寝ろ。
*声が少し掠れている。今度こそらっだぁも目を閉じたらしい。呼吸がゆっくりと深くなっていく。それでも、ぺいんとの袖を握る手だけは、まだ離さないままだった。*
コメント
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うわあ、これ…胸がぎゅっとなるお話ですね。病弱なぺいんとくんと、不器用だけど優しいらっだぁ先生の距離感が絶妙です。「俺より上手いの描けたら見せてやる」って言いながら、ちゃんと描くための紙を用意してるところとか、もう完全に愛情じゃないですか。それに、袖を掴まれて振り払わずに一緒に寝てあげるところ…「いつか治してやる」の約束も含めて、この静かな関係性がすごく好きです。続きが気になる!