注意
青桃さん
ぷ れ す とぅ び ぱろ
↑本当に要素がない。
桃さん「青ってさ、占いとか信じる?」
隣で宴の準備をしている青に声をかける。
来週、良いとこのお嬢さんやお偉いさんが集まる宴会的なものが開かれる。
今回はまじのお嬢様とどこかの御曹司様との婚約が決まったことによるお祝いパーティーだ。
そのパーティーには、青と俺と黒が招待された。
が、黒は子供組が暴れずに留守番することは不可能と考えた為、 子供組と留守番することにした。子供組の奴らは一緒に楽しんで来ればいいのに、なんて言っていたが。
まぁ、黒が心配するのも分からなくはない。それも、あいつらは一回窓を割ったという前科があるから。 あときの黒は怖かった。非常に。俺なんて飛び火喰らったからな。許さんぞ水色頭。
そのパーティーで、そのお嬢様と小さい頃から親しかった青が祝辞を述べることになったらしい。
青は意外に顔が広いから、よく知らないお偉いさんの名前が出てきては誰か分からなくなる。
青さん「占いか…。よくわからんけど信じんと思う」
桃さん「ん…まぁ、青はそうだよね」
根拠のない占いは信じない。青はそんな感じがする。
青さん「桃は?」
桃さん「えぇ、俺?うーん、どうだろうね」
正直よくわからない。信じるものもあれば信じないものもある。
桃さん「参考にすることはあるかも」
青さん「桃らしいな」
青が笑いながら言う。 眼鏡越しに目が合う。
さっきの真剣そうにパソコンを見つめているあの目とは違う、優しい目。
桃さん「なにそれ、笑 てかそれは順調?」
青がパソコンをしばき始めてから3時間ほど経過したが、まだパソコンを閉じる気配はない。
青さん「まぁ、ぼちぼちって感じ。難しいんだよね、色々と。」
桃さん「ふーん。そのお嬢様って、どんな子なの?やっぱ大金持ちのお嬢様って感じ?」
ソファから降り、青と飲むコーヒーを用意しながら言った。 青は砂糖ましましがいいんだっけ。
青さん「どんな子…ねぇ。元気で活発な子だったよ。 気が強くて、めっちゃ怖い近所のお兄さんにも難なく声かけてたな… お嬢様っていうイメージは全然なかったかも。 」
桃さん「そうなんだ。御曹司様との婚約は前から聞いてたの?」
青さん「ううん、全然聞いてなかった。だからこの前聞いた時はまじでびっくりした。 あの子は結婚とかできるようなタイプだとは思ってなかったから。」
なつかし、なんて言いながら思い出に浸る青。 青が昔のことをこんなに詳しく言ってくれるのは珍しい為、つい沢山質問してしまう。 そんなにその子に思い入れがあるのかな。話している青の顔はとても楽しそうだ。
桃さん「はい、これコーヒー。作業頑張って。」
青さん「ん、ありがと。本当助かる…」
少しばかり気恥ずかしくなった俺は青に、えへへなんて笑って見せる。 すると青はいひひ、といたずらっぽく笑って言う。
青さん「桃も頑張ってな。主催者さん達となんかあるんやろ?」
桃さん「おえぇ…、会議ぃ、!行ってくる…」
青さん「随分嫌そうやな。苦手な人でもいるん?」
桃さん「『ポーカーフェイスの演技派さ』」
貼り付けた笑顔で言う。普通の人なら分からないかもしれないが、青なら一発でお見通しだ。
青さん「それを約2時間か…キツいな、笑」
桃さん「口角どっか行きそうになるね。とんだパーティーだよ」
青さん「それはご苦労様やね。無理しない程度に頑張れよ」
桃さん「頑張ってくる」
重い足を引きずりながら自室に戻る。会議といってもリモートなので外に出なくて済む。
桃さん「…ふぅ。」
桃さん「××部所属の桃です。遅れてしまい申し訳ないです。では、会議を始めましょう」
やっ会議が終わった。 円滑な進行によって1時間ちょっとで終わったといえど、会議は会議だ。
どっと疲れが溜まっていくのを感じる。 一緒に会議した 他の方々もこんな感じなのだろうか。 地獄じゃん。良かったね、今日の会議の進行が俺で。短く終わったろ。へっ。 そういえば青の調子はどうだろうか。 そろそろ書き終えて黒にでもチェックしてもらっているだろうか。 行ってみるか。
桃さん「青、どう?進んでる?」
青さん「あ、桃やん。会議もう終わったん?流石やな。」
桃さん「まぁね。青は?」
青さん「俺?大体は終わったかな」
桃さん「そ。じゃあさ、息抜きにこれやってみない?」
そう言って差し出したのは数枚のカード。
青さん「なんやっけそれ。占うやつやんな?」
俺の手のカードをまじまじと見つめる青。 透き通るその瞳は吸い込まれそうなぐらい神秘的で、 どこか妖艶でもあった。
桃さん「そう。タロット占いってやつだね」
青さん「確か、沢山やり方があるんやっけ?」
桃さん「うん。ワンカードスプレッドとかツーカードスプレッドとかいろいろあるね。」
やり方や禁止事項はさらっと確認しただけな為、少し曖昧な応答になる。 それにしても、どこでやり方が二種類あることを覚えたのやら。
桃さん「取り敢えずやってみよ、俺も初めてだしあんまり上手くいかないと思うけど。 」
青さん「そうやな。まずは何するん?」
一応やり方が載っている紙を横に置いて行う。 最初は、カードを机に置いてシャッフルする。 次に、カードをカットする。 らしいが意外にもカットの仕方が難しかった為、そこは青と一緒にやった。
桃さん「いよいよ占い本番だね」
青と隣り合うように並んで座る。
座り方については説明書になかったのでなんでもいいだろう。
桃さん「ええと、何か気になることとか将来のこととかなんかある?」
青さん「じゃあ…この前赤が本気で結婚とかについて悩んでたから、そういう縁の兆しとか」
おちゃらけた調子で言って見せる青。 赤の縁談なんて興味はないくせに。 むしろ青の頭にちらついたのはあの水色頭だろう。 少し前、青は水色頭に赤について相談を受けたそう。 珍しく真面目な水色頭に青も驚いたそうだ。
桃さん「なにそれ、うける。一応占ってみますか」
一番初めに視界に入ったカードを選んでめくる。 決して上下がおかしくならないように。 どうやら、カードの向きにも意味があるらしいのだ。
青さん「お前、もう少し慎重に選ばんの?大切な弟の縁談やん。」
桃さん「やかましいわ」
言われるとは思った。
粗雑と言ってもいいほどの作業具合に青はぎょっとしたのだろう。
“自ら占いに誘っておいて、いざ占うとなるとそんな無秩序な手順になるのか。”
と。
眼鏡を外していて見カードに描かれている絵が見えなかったのか、
青がぐい、と顔を机に近づける。 眼鏡の青は先程堪能し終えたばかりだから、眼鏡をかけていない青にはどこか新鮮さを感じる。
青さん「誰やこの女性」
神妙な顔をしながらいう青に笑みをこぼし、スマホの中の解説に目を移す。
桃さん「ええと、『女帝』だって」
青さん「女帝?意味とか分かったりする?」
桃さん「こちらからみてこのカードは正位置…ってことは、 『困難』、『苔むす』、『不明瞭』だってさ。」
青さん「まじで?悪天候すぎるて。」
桃さん「先行きがね、不安しかないね。」
青さん「最悪じゃん。」
赤には到底教えられないような残酷な占い結果に失笑しながらも 応援したるか、とでも言いたげな顔をする青。
青さん「うちの最年少に恋愛は無理、っと。」
桃さん「あの水色頭に教えてやりたいね。大事な大事な赤の困難を覆してやれって。」
青さん「叫ぶかもな。笑」
桃さん「じゃあ、次占いますか。」
青さん「なんかある?」
桃さん「…俺とお前の関係性。」
真剣な声色で言う。 俺は最近、気になっていたことがあった。 それは、俺と青の関係についてだ。
俺たちは“恋人”とやらの一歩手前の関係である。 俺にとってそんな中途半端な関係、もうやめたい。
ぶっちゃけ俺は青が好きだ。 それは前々から自負していたし、告白もした。
しかし青曰く、“自分の気持ちがはっきりしていない今では俺を幸せにすることはできない。”
らしいが、諦めきれなかった俺は言った。
「俺はお前に一生添い遂げる覚悟で言っている。少し時間をあけてもう一度答えを聞きたい。」
実に往生際の悪いセリフだ。 それほど青に燃えていたのだろう。
青は承認してくれた。
自分から言ったことだけど、やはり中途半端は嫌いだ。 苦手、ではなく“嫌い”。 俺は青の答えを聞きたい。それも好きか嫌いかの。 消極的でいい。極端な話でいい。 だから、お願いだからはっきりしてくれ。
青さん「そ。めくってみるよ。」
俺の真剣な問いかけに戸惑ったのかいつにもまして単調な反応をする青。 この青の細くて綺麗な指がカードに触れ、めくれようとする瞬間にはドキドキする。 まじまじとカードを見つめていると、青がこちらをちらりとみて言う。
青さん「そんなに見られると緊張するんやけど。」
桃さん「早くめくってよ。それより…なんでもない。」
それ以上のことを言おうとして、やめた。
“それより、俺はお前の答えを聞きたい。”
青さん「今めくるよ。」
めくって出たのは正常位の『世界』のカード。
青さん「意味は?」
桃さん「意味…は、『出国』、『御恩』、『旅』、そして、」
桃さん「『約束された成功』だってさ。」
青さん「約束、?」
意味がわからない。約束?そんなことしていない。 ではなぜ心当たりがあるように胸が痛むのか。 まるで、嘘がバレた子供のように。
桃さん「この前試しに1人で同じ質問で占った時、出たのは正常位の『吊るし人』だったよ。」
青さん「意味は」
桃さん「『自己犠牲』、『自己放棄』。 俺とは正反対の言葉達。 占いなんて絶対信じてやらないと思ったよ。」
青さん「自己犠牲の旅って、すっげぇ単語やな。」
桃さん「不吉。絶対叶わないじゃん。」
拗ねたように頬を膨らすと、その輪郭をなぞるように撫でる青。
青さん「何が?」
桃さん「俺の恋。」
事実、この恋が叶うことは無いに等しいだろう。 こいつ次第だが。
こちらを向く青の瞳はいつものように優しいものではなくて、真剣でどこか寂しげだった。
青さん「俺、好きな人できちゃった。」
心に穴が空いたような感覚。 ぐさっと突き刺さる様な、押しつぶされる様な。そんな感じ。
桃さん「それが青の答えとして受け取っていい?」
青がこくんと頷くのを確認して、俺からの答えを出す。
桃さん「じゃあ、この関係ももう終わりだね。 俺は、青のことが好き。それ以上でも以下でも無い。でもお前に想っている人がいるならば俺は諦める。これが俺の答え。」
涙を堪えながら精一杯に話す。今青と目を合わせてしまうと感情が溢れてしまいそうだ。 色々な感情が。
青さん「70点。」
俺が「は?」と声を漏らすより先に青が話し出した。
青さん「桃、俺はまだ誰が好きかなんて言ってない。ただ、俺には好きな人がいるって言っただけ。だからこの関係はいい方向に終わっていくって言う可能性もある。けど桃は少しでも可能性が無かったら諦めるやろ?“恋”と言う分野に関しては。」
青の言うことがあまり理解できない。頭が回らない。
桃さん「…それって、期待してもいいってこと?」
ほんのわずかな可能性なんてとっくに無くなったと思った。 いや、最初からないと思っていた。
青さん「期待、というか約束して欲しいんやけど。」
生暖かいものが頬を伝っていくのを感じる。 それを優しく包み込む様に青の手が拭う。
青さん「俺はお前に一生添い遂げる覚悟がある。俺と付き合ってくれないか」
どこか聞き馴染みのあるフレーズだ。口調も話す時の癖もそれに近い。
桃さん「お前さ、遠回しすぎるんだよ。考えすぎた俺が馬鹿みたいじゃん。」
青さん「実際、お前は馬鹿だよ。馬鹿ストイックで真面目すぎ馬鹿。」
笑いながら言う青の顔が癪で仕方ない。ましてや馬鹿なんて言葉を何度も使うのも気が触れる。
桃さん「馬鹿馬鹿言い過ぎ。流石に刺さるわ。」
青さん「…で?最終的なお前の答えは?」
桃さん「決まってんだろ。“もちろんです、俺も一生涯添い遂げます”」
癪だ。 ふん、と頬を膨らせ恋人相手に腹パンを下す。お、イケメンは痛がる姿も美しい。
青さん「…ご満悦やな。大切な彼氏殴って満足か。」
桃さん「DV彼氏っていういうことなんだ。勉強になるな。」
青さん「人体実験か?大層なもんやな。」
いい経験でしょ、と言い残してカードを片付けようと机に向かう。青はまだ痛がっている。俺そんな力強くないのにな。力加減って難しい。
青さん「お風呂一緒入って見せてやろうか。あざはないだろうけど。」
桃さん「えっち。」
青さん「頭沸いとんのか。脳内ピンク。」
カードを片付けながら話すのはそれこそ頭が沸きそうだ。カードの絵や説明書の長い文が目を眩ませる。広げすぎたカードは集めるだけで一苦労だ。苦労、と言いつつも冷めない顔の熱を誤魔化すのには丁度いい作業。
桃さん「一生涯添い遂げますって、アニメみたいだね。」
アニメの様なことではないがそれに近い。幸せってやつだ。
青さん「DVアニメ?だいぶあだるてぃーだね。」
もう一発やろうかと言わんばかりに拳を掲げるとその腕を掴んでちゅ、と口付ける青。
青さん「でもさ、あだるてぃーだったらこっちの方良くない?」
口付けを終えた後、青は俺の腰にそっと手を添える。触り方がやらしい。 付き合ったその日にヤる馬鹿がどこにいるだろうか。本当、脳内ピンクはどっちだか。
コメント
5件
うわ、うわ!✨️終わり方めっちゃ好きです!! ひば様小説家向いてませんか!?!?言葉が本当にお綺麗で....😭 設定?とかも毎回凝ってますし!! ほんと大好きです😭