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買い物を終え、荷物も一度置いて新しい服にも着替えた。
そして今は――「目を逸らすな! 撃て!」
「ガルンヘルア!」
「グルウウウウウウ!」
……狩りに来ている。
正直足がすくむ。
でも、獣の皮を持って帰る必要があるらしい。
ガルンヘルアが使えるのをわかっていたから、俺は後方で支援。
場所は町から出て直ぐの草原。
他にも冒険者らしき人がいるけど、違う場所で狩っている。
町から近いこの場所に、よく出現するのがロブゥ……昨日、食べた奴だ。
「マシェリさん! 東にももう一匹います! うわ、こっちへ突進してる!」
俺の方へ突進してくるロブゥが一匹いた!
急いで走って西寄りに回避すると、直ぐにUターンして戻って来る。
四足歩行で体長は一メートル程。
突進されてぶつかったら、骨の一つや二つ折れてしまいそうだ。
Uターンしたロブゥの道を塞ぐようにガルンヘルアを放っていくと、ロブゥは
マシェリさんの方向へ走っていく。
的確に誘導出来た!
「いいぞ。はぁっ!」
そのままロブゥを一閃すると、どさりと倒れる。
これで二匹。あらかじめ借りておいた荷車に乗せる。
この荷車自体の貸し出しは無料だったが、返却時にちゃんと借りたお金分の代金が
取られる。
貸出場がそのまま解体場所になっていて、肉の料金から荷車貸し出し料金、解体
料金を差し引いたお金がその場でもらえる。
つまりその場でもらえるお金は雀の涙だ。
その代わり、皮が依頼品で、都まで運べばそれなりにお金となるらしい。
荷車をわざと壊したり、持ち逃げしたら犯罪者だ。
「よし。持って行こう。これで三つ依頼達成だ」
「マシェリさんならもっと難しい依頼も受けれるんじゃないですか?」
「言ったろ? 依頼は三つしか受けれないんだ。これが三つ目。一番ついでの依頼
だよ」
「そうでしたね……それじゃいよいよ、都に向かうんですね」
「ああ。エストマージ……戻ったら、宿で今後の話をしよう」
「都までは近いんですか? キュルルの件が……」
「心配ない。一日もあれば到着するから間に合うだろう。それに都の方が
都合がいいだろう?」
「そうですね。あまり長く宿にいてもお金が心配ですし……それは都に行って
も同じかな」
「いや。都には師匠がいてね。その件も含め、宿で話すよ」
この町とは早くもお別れか……でも、どうやって向かうんだろう?
師匠っていうのも気になるな。
――荷車を引いて町に着き、ロブゥを解体してもらう。
しばらくすると、担当者は、綺麗に洗浄された皮を二枚持って来た。
それ以外の渡された代金は、銀貨三枚だけ。
一匹で銀貨一枚と銅貨五枚って事!? 命懸けでそれだけ……。
いや、きっと皮が高いんだ! そうに違いない。
「マシェリさん。依頼の皮を渡すと幾らもらえるんですか?」
「革細工商会の見習いに頼まれた仕事だ。皮二枚で金貨一枚だな」
「何て割の悪い仕事を引き受けてるんですか! もっと多く……いや無理だ。
アイテムボックスとかあるわけないんだし……せめて重さを軽く
出来る、ラギ・アルデの力が使えれば……」
「まぁ、ついでの仕事なんだ。直ぐ終わったし、気にしなくていいよ。
今回の依頼は全部合わせても、赤字だと思うけど」
「赤字で冒険者やってたら、いつか破産しますよ!」
「よく知ってるな。確かに二回程破産したぞ」
「はぁ……お金の管理は僕がやった方が良さそうですね……」
「なぁに。いざとなったらフェスタで野宿すればいいさ」
「それはどうしようも無い時だけにしましょう! 女性が野宿なんて、襲われ
たらどうするんですか!」
「そうか? 襲って来るような奴は返り討ちにしてやるさ」
そういう問題じゃないと思うんだけど。
この世界の女性冒険者ってそんなに逞しいの?
でもマシェリさんはどう見ても強そうだから、相手が悪くなければ負けないのかな。
と思ってたら、キュルルが腹ペコのようだ。
「キュルルー……」
「キュルル、お腹空いたよね。急いで宿に戻りましょう」
――キュルルに催促され、急いで宿に戻る。
着替えてしまったので、残念そうな顔をしているリシュルに挨拶だけ
済ませて、部屋で餌を上げる。
ロブゥを退治するついでに、キュルルの餌補充も行ったので、しばらくは
持つと思う。
「先に今後の話を済ませよう。キュルルの発熱は四日後に来るかもしれない
のだろう? 明日、ここを発つとして、エストマージに到着すれば、残りは二日。
充分余裕はあるだろう」
「そうですね。宿代は先払い何ですか?」
「ああ。今日分までは払ってある。明日の朝、ラギ車に乗ってエストマージへ
向かうぞ」
「ラギ車?」
ラギって本当に便利なんだな。
前世で言う馬みたいなものかな?
いや、紙にもなるから山羊? うーん。それにしてはもっと逞しいし
大きかったな。
「そのラギ車で都まで一日掛かるんですね」
「ああ。乗車には片道で銀貨三枚」
「……往復で銀貨六枚!? 宿代は幾らだったんですか?」
「宿泊で銀貨二枚。食事で大体銀貨一枚から二枚だよ。何を食べて飲んでも
いいやつにしたから、一泊銀貨五枚だったんだ。どうだ、お得だろ?」
「全然お得じゃないです! 僕の分もそれにしたんですか?」
「ああ。昨日払っておいた」
「ああ……それも借金に書き足しておきます……」
「借金? そう言えば何か書いてたけど、それは何だ?」
「勝手とは思いましたけど、マシェリさんのお金管理がずさんだったの
で、ラギ皮紙に書いてるんです。僕が借りたお金も忘れず返せるよう、一
緒に」
「ファウ……凄いな。そんな真面目に細かくお金勘定する奴、見た事無いぞ」
「それは冒険者だけです! 商売人だったらちゃんと記帳してますよ!」
全く。お金はもめごとの種になりやすいからしっかりしないと。
昨日と今日分を合わせて金貨一枚の宿代借金を追加。
既に借金はキュルルの服と自分の服とラギ皮紙一枚分。
金貨二枚と銀貨三枚。
そして宿代が合計金貨一枚。
明日、ラギ車に乗るからさらに銀貨三枚増える。
併せて金貨三枚と銀貨六枚だ。
……旅立ち前にこんなにも借金が……。
いや、元々裸一貫で死ぬ寸前だったことを考えると、まだマシなのかな。
肝心のマシェリさんの所持金は金貨一枚とロブゥの肉引き取り金を合わせて銀貨十二枚。
明日六枚無くなるから……金貨一枚と銀貨六枚しかなくなる。
……急いで返さないといけないよね、これ。
何せ俺の借金の方がマシェリさんの所持金より多いわけだし。
「マシェリさん。都に着いたら僕に出来そうな仕事、直ぐ教えて欲しいんですけど」
「そうだな。師匠に相談してみようと思っている。君の今後も含めてだけど」
「お師匠さんていうのは、マシェリさんの冒険者としてのお師匠さんなんですか?」
「いや。トリシュタイン・ネビウス。彼は共に旅をした仲間であり、ラギ・アルデの
力の使い方をある程度教えてくれた、術士だよ」
「術士……?」