テラーノベル
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「んぐっ!? ごほっ、ゴホゴホッ!!」
ごめんごめん、大丈夫かい?とクラウス様が差し出してくれた水を飲んで、なんとか口の中のものを胃に流し込む。ふ、噴き出したりしなくて良かったぁ……。
「ク、クラウス様、いきなりなんてこと言い出すんですか……」
「ごめんね、まさかそんな驚くとは思ってなくて。……それで、どうかな? ソフィア」
「……クラウス様と恋愛、ですか? それはつまり……こっ…………恋人になれ、と?」
私の言葉を聞いて、クラウス様は余裕たっぷりに微笑む。
「まさか、そこまでは言わないよ。……僕は両親も祖父母たちも、みな政略結婚でね。でも両親はしっかりと愛情を育んで、僕を含めて三人の子宝に恵まれた。僕も多分、将来は色々な要因から政略結婚することになるだろう。だから自由に過ごせる今のうちに、恋愛について知っておくのも、悪くないかなと思ってね」
「そ、その相手が私で、いいんですか……?」
今みたいな状況になる前、ソフィアと殿下はそれほど親しかったんだろうか。
「君は幼馴染だし、君の家は王家とも深い関係だ。僕と君が親密になっても、誰にも迷惑はかからないと思うよ? 君には、まだ婚約者もいなかったはずだし」
流石に食事の手が止まってしまう。顔がどんどん熱くなって、赤くなっているのが分かる。彼の顔を見れない。
こんな反応をしたら、照れているって丸分かりだ。でも紅潮していく顔をなんとかする術を、私は知らなかった。
「恋人になって、僕のことを好きになってほしい、とまでは言わない。ただ少しの間、恋人らしく振る舞って、エリザベスに、僕らの姿を見てもらう――ってことで、どうかな?」
彼の言葉を自分の中で少し考えて、彼の鋭い指摘に気が付く。
「……どうして、友達がエリザベスって分かったんですか?」
「今の君がそこまで親身になるのは、彼女くらいかなって。簡単な推測だよ」
口元に微笑みを携えて、クラウス様がウインクする。う~ん。今そんなことされたら、私には効果抜群です……。
クラクラする頭をなんとか持ち上げて、クラウス様を見て、私は自分を落ち着けようとしたけれど――ダメ。全然無理だった。どうして、殿下はこんな提案をしてくれるんだろう……。
私が知らなかっただけで、ソフィアとクラウス様が恋愛関係に発展するルートが、実は存在した――なんてことは、万が一にも有り得ない。
だってアイつかは、本当に擦り切れるくらいプレイしたし。攻略情報も隅々まで見た。見逃して、未プレイのルートがあるなんてことは有り得ない。
クラウス様はどことなく、今までよりも楽しそうに微笑んで私を見つめている……。
……いいのかな? こんな棚ぼた的な展開を受け入れて、殿下との甘い?日々を受け入れてしまって。
私は悩みに悩んでいると、クラウス様は笑顔を引っ込めて苦笑を見せた。
「……急に変なこと言って、ごめん。君の気持ちまで、しっかりと考えてなかった。今の君には昔の記憶もないわけだし……まだよく知らない男と、仲良くするだなんて。馴れ馴れしくて……嫌、だったよね……ごめんね」
見る見るうちに、表情がジワジワと、沈んでいく。苦笑が、深まっていく。
何やってるの、私。殿下にこんな顔、させちゃダメでしょ。
「そんなわけないじゃないですかっ!! 殿下のことは大好きですよ!!」
クラウス様の沈んだ表情を早くなんとかしたくて、大きな声でそんなことを言ってしまう。
すぐに恥ずかしくなって、一応周囲を確認してみるけれど、こちらに注目する生徒はまばらだった。私の声は、お昼時の騒がしさにかき消されたみたい。
当の殿下はというと、緊張のほどけた表情で私のことを見つめていた。
「良かった……変なこと言って、君に嫌われちゃったかと」
「……この先何があっても、殿下のことを嫌いになることは絶対にないです」
「あはは。嬉しいけど……僕はいつの間に、そんなに好かれちゃったのかな?」
多分転生して初めて見る、照れたようなくすぐったそうな顔の彼に、私は秘めた思いを語りかけた。
「だって……優しくて、ずっと気にかけてくれて。紳士で。優雅で、キラキラしてて……。私には、好きになる要素しかないですよ」
「……ありがとう。いいね。すごく、心地いい……。純粋で、真っ直ぐな好意を向けてもらえて、嬉しいよ。……今近くにいる子たちに、同じ言葉をかけられても、きっと、こうはならない」
恥ずかしそうに手元に視線を落として、クラウス様はゆっくりと噛みしめるように口にする。彼はそのまま、何か言いかけたように軽く口を開いたけれど、すぐにまたそれを閉じた。
「そこまで言ってくれるなら……二人でエリザベスのために頑張ってみるってことで、いいのかな?」
「はい。これからしばらく、よろしくお願いします」
ああ……。私は彼のためなら何でもできるし、どんなことでも許せてしまうなぁ……と私は噛みしめるしかなかった。
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呼んでくれた方、ありがとうございます!! 今見たらランキング8位入ってました、 まさかそこまで行くとは思ってなかったので嬉しいです…! この先は最低週1話くらいのペースで投稿します。 ペース上げられそうなら上げていきますので、お待ちください~
#死に戻り