時刻は午前8時20分。空に浮かぶ雲を反射する青のホルクスワーゲンは、中央自動車道の西宮線を華麗に走っている。
戸部「今日は雲がちょっと多いなぁ。」
上野「もしかしたら、雨が降るかもね。」
長谷川「おい、音楽の音量下げろぉ。」
長谷川が目を覚ます。
車が発進してから、5分も経たずに寝てしまっていた。
上野「音量?ああ、ごめんごめん。」
戸部「この曲、startingの新曲だろ?」
上野「そうそう。今の自分にピッタリだ。」
長谷川「ああ、音量ありがとう・・・」
そして、すぐに眠りに着く。
上野「戸部、眠かったら寝て良いぞ。」
戸部「いや、あと2時間弱だろ?曲聴いとくよ。」
上野「ほんっと、その体力何処から・・・。」
戸部「運動は欠かさずやってるからな。」
他愛無い会話に、startingの歌詞が重なる。
この3人はまだ知らない。これから起こる、
残酷非道な殺人事件の結末を・・・・・
ここは、地球上に存在するもう1つの海、【空】。
そこに在るのは、雲、空気そして・・・
異端な機械、ヘリコプター。
そこに居るのは、運転手、カメラマン、そして・・・
探検家、野々宮泰造だ。
カメラマン「本日は、宜しくお願いします!」
野々宮「ええ、しかし、プロデューサーも考えた物だ。」
「ヘリコプターでアメリカに行くなんて。」
運転手「でも、結構給料出るんでしょー?」
野々宮「そうですね。フリーだったのに、プロデューサーまでついて・・・」
カメラマン「だって、凄いじゃないですか!」
野々宮「いやいや、それほどっ・・・!?」
急に、ヘリコプターが傾く。
野々宮「な、何が起こった!?」
運転手「あれ!?ハンドルが効かなっ・・・」
その瞬間、異端なる機械は、深々な緑の海に落ちていく。
野々宮「うわっ・・・パ、パラシュート!!」
ヘリコプターを出て、パラシュートを開く。
野々宮「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
ゆっくりと降下する野々宮に対し、
ヘリコプターは、ものすごい勢いで森に墜落していった。
午前10時23分、某新聞社にて・・・
田所「うーん・・・何かないかぁ・・・?」
ベテラン新聞記者、田所春馬は悩んでいた。
田所の働く某新聞社は、社長の不倫疑惑により不景気に突入しかけていた。
田所「別の不倫疑惑は・・・駄目だ、余計煽るだけだ・・・」
「今の不景気を直すには、クリーンな情報・・・!」
パソコンの検索画面に、【理想郷】と打ってみる。
そこに出て来たのは、綺麗な花畑、美しい森林、そして・・・
幸せそうな家族と大きな家の写真。
田所「現実の・・・理想郷・・・?」
住所を調べてみると。
田所「長野県O市の・・・なんだこの山奥!?」
調べると、富士山に次ぐほど大きな山、【長野死巻山】の山頂にあると判明。
山中は圏外、車道は1本道、野生動物の宝庫とも呼ばれている。
そんな中に建つ、現実世界の理想郷・・・
田所「これは使えるぞ・・・!」
後輩「どうしたんですか先輩?」
田所「ああ、ちょっと取材に行ってくる。」
後輩がパソコンを覗き込む。
後輩「え、ここに取材に行くんですか?断られたら・・・」
田所「ふん、その時はその時だ!」
荷物を持ち、勢いよく新聞社を出て行く。
後輩「はぁ・・・・ん?ここって・・・!?」
時刻は10時2分、高速道路を降り、コンビニで一服中・・・
上野「あと一本吸ったら、出発しよう。」
戸部「ええ、後3本・・・」
長谷川「文句言うなぁ。ああ、眠・・・」
戸部「まだ眠てえのか?」
長谷川「多分、従兄弟さん家行ってもすぐ寝るわ。」
上野「オッケー。よし、そろそろ行こうか。」
戸部「え、まだ吸い終わってねえんだけど・・・」
上野「車で吸えば良いだろ。」
戸部「じゃあ最初のあと一本は何だったんだよ・・・。」
長谷川「うるせえ、早く行くぞぉ。」
上野「はいはいw」
そうして3人は、青いホルクスワーゲンに乗り、コンビニを後にした。
戸部「後、どれくらいだ?」
上野「山に入って30分ぐらい掛かるから、後45分ぐらいかな。」
戸部「あの山って、富士山の次に大きいんだろ?」
上野「ああ。【長野死巻山】は、富士山の次に大きいよ。」
戸部「え、そこ住めんの?」
上野「あそこは確か、1990年から、天皇の従兄弟の、ええと・・・」
戸部「天皇の従兄弟?そいつらって・・・」
上野「村田家だね。」
戸部「そうそう!確か、28年前に一家全員が・・・あ、そこって!?」
上野「そう。今の上野家が住んでいる家は、元村田家の所有地だ。」
戸部「やっぱ!?バカ高いんじゃねえの?」
上野「いや、事故物件になったプラス、天皇の従兄弟となると、」
「厄介払いは早めに収めたかったらしい。」
戸部「なるほど。従兄弟が死んだとなると・・・そりゃ持っとくのは辛いか。」
上野「だから、そこにじいちゃん達が住んだ。」
戸部「へえ、祖父母の代から住んでるのか・・・。」
会話を交える青きホルクスは、一直線に道を走っていった。
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