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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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バッグは少し重かった。

行き道は複雑で、

『ここを左だったっけ?』

だんだん怪しくなってくる。

進んで行くほど周りに人気がなくなってくる。

でも自分が人狼である以上、訊くことも難しいだろう。

そして、

『ここからはどういけば良いんだ?』

迷ってしまった。

『こっちだろうか。』

とりあえず進んでみる。

???

見覚えのある建物が見える。

どうやら前に通った道に戻ってきたようだ。

次はあっちに行ってみよう。

しかし、そこは行き止まりだった。

『・・・』

次は、あそこで曲がってみようか。

曲がった先、そこは薄暗い道だった。

少し怖い。

すぐ近くの物陰からカラスが飛び立った。

『!?』

戻りたい。

本当にこっちであっているのだろうか。

太陽は建物で隠れいる。

今何時だろう。

もうそろそろ17時になるくらいかな。

だけど人の姿すら見えない。

もし、会えなかったらどうしよう。

そんなことを考えていると、

「ーーー』

何かが聞こえた。

今のは人の声か?

「ーーー!』

今のは間違いなく人の声だ。

でも、普通では無さそうだった。

近くの路地裏の方から声が聞こえた。

僕は少し怖いが路地裏に入る。

近くのゴミ箱に身を隠し、様子を見てみる。

『おい!テメェ、いい加減にしろ!』

『びびってねーで早くしろよ!』

『逃げられると思うなよザコが!』

物騒だ。

3人ほどの男性が怒鳴っている。

すると、

『お願いします。許してください…』

と、女性の小さく、怯えた声が聞こえた。

ガコン!

という音がする。

こちらに空き缶が転がってきた。

『いつまでもいつまでも同じこと言ってんじゃねーよ!さっさと金をよこせって言ってんだよ!』

バン!

と次は鉄を叩くような大きな音が聞こえた。

身体がビクッと震えた。

女性は先ほどよりも小さな声で何かを言っていたが男性が舌打ちをし、被せるように、

『チッ、痛い目見ねーとわからないようだな。』

と冷たい声で言った。

男が女性に手を出そうとしているようだ。

これ以上はまずい。

僕はバッグを物陰に置き、ポケットからいつでも銃を出せるよう手を入れ、男達のいる方に歩く。

そこには柄の悪そうな男3人が、怯えている女性1人を囲むように立っていた。

『君たち、何をしている。』

少し震えた声で言った。

すぐに男3人が振り返り、僕を睨みつける。

『あぁ?誰だテメェ!』

と真ん中の男が僕に怒鳴る。

うぅ、怖い。

だが止めなければ。

『そちらの女性が怯えていますが、なにを…』

『だからぁ!誰だって訊いてんだよ!』

と、僕の言葉に被せて言った。

『・・・』

怖くて身体が震えている。

殺されるかもしれない。

でも、銃を向けることはなるべくしたくない。

どうすればいい?どうすればあの女性を助けられる?どうすれば…

『訊いてんだからさっさと答えろや‼︎』

その時後悔した。

今の僕はやっと普通に歩けるくらいになっただけで誰かを救えるほど力はない。

銃を使って人を傷つけることはなるべくしたくない。

ーなら今の僕はただ余計なことをしているだけなのでは?ー

『銅.甘』

名前を言った。

『は?』

返ってきた言葉は一言だけだった。

そして真ん中に立つ男がこちらに歩いてくる。 この人が3人の中のボスなんだろう。

何をされるのだろうか。

怖いのに、逃げたいのに動けず、ただそこに立つことしかできない。

男の顔を見る。

と、

『なぜ、』

男は目を見開き、

『なぜ、お前がここにいんだよ!』

と、男が後ずさった。

一体何が起きているのかわからなかった。

後ろを振り返ってみても誰もいない。

『クソッ、お前ら逃げるぞ!』

ボスであろう男がそう言って2人を連れて逃げていく。

後ろにいた男2人は不思議そうな顔をしていた。

でも助かったみたいだ。良かった。

安心する。

女性の方を見る。

かなり怪我をしているようだった。

『大丈夫ですか?』

そう訊きながら近づくと、女性も目を見開き、よりいっそう怯えた。

『もう大丈夫ですよ。』

と、優しく声をかけたつもりだったが、

女性は走って逃げてしまった。

『・・・』

思い出した。

『僕が人狼だから?』

誰もいない場所に向けて訊いてみる。

もちろん誰も答えない。

これが人狼の宿命なのかもしれない。

僕は物陰に置いたバッグを持って、路地裏を出る。

太陽はほぼ沈んでいるが、琥珀色に輝いている。空はオレンジ、ピンク、そして青紫色に彩られており、ところどころにある雲も綺麗だった。

でももう17時を過ぎているだろう。

なのにまだ迷っている。

『くっ、』

悲しみだけがそこにある。

嫌なのに、友達かのようにいつまでもそこにあり、まとわりつく。

でも、諦めたくない。

僕は走った。

重い身体。重いバッグ。

息が切れる。ふらふらする。

足がもつれ耐えられず倒れるがすぐに立ち上がり、どこへ行けばいいのか、訳もわからず壁に手をつけながらも必死に走ろうとする。

長い間、色々探しまわりながら走る。

正面は行き止まりだったので、道が続いている方へ曲がる。

何かとすれ違ったが止まれない。

もう何をしているのかも分からなくなってきた。

一体どこにある、

『甘ちゃん?』

⁉︎

名前を呼ばれた気がする。

僕は足を止めた。

そして振り返る。

そこに髪の長い女性の姿が見える。

薄暗い中、街灯に照らされた女性、その髪は銅色、目は琥珀色に輝いていた。

『こは、く…さん……』

息を切らしながら探している女性の名前を言った。

女性……少女は口に手を抑えて目を大きくする。

やがてその目から雫が溢れていく。

でも少女は笑顔を向けている。

『甘ちゃん…なんだよね?』

僕は頷き、あの可愛らしい手紙をポケットから取り出した。

『君が…』

僕がそう言いかけた時、少女はこちらに走り、手を僕の背に回し、抱きしめてきた。

『あうぅ』

変な声が出た。

でも探していた人を見つけることができた。

『ずっと会いたかった!ずっと待ってたよ!』

嬉しそうで、笑顔を見せていた。

少し恥ずかしかったが冷静になって、

『長い間、心配かけてごめんなさい。』

と頭を下げる。

そして頭を戻すと、琥珀さんは優しい笑顔を向けていた。

『謝らないで、甘ちゃんはちゃんと会いに来てくれた。それだけで琥珀は嬉しいから、ね?』

とても優しい子だった。

僕も泣きそうになる。

でも、こう言ってくれたのなら、

『琥珀さん、ただいま。』

琥珀さんは目を閉じてにっこりと笑いながら、

『おかえりなさい、甘ちゃん!』

この子との思い出を早く取り戻さないといけないな。

『暗くなってきたし、ここで話すのもなんだし、あとはお家で話そ。こっちだよ。』

と、手を引っ張り、案内される。

住宅地から少しずつ離れ、田んぼ道をしばらく歩く。

歩いている時、琥珀さんと手を繋いでいた。

僕より小さな手。

でも、とても暖かい。

出会った所からもそれなりに歩いた。

『体調は大丈夫?痛いところはない?』

と、所々で琥珀さんは僕に声をかけて心配してくれる。

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