コメント
4件
徒花の意味は咲いてすぐ散る花、または外見はよくても中身は空っぽという意味。 リリメリアは結婚式とかによく使われてる花ですね。 ループ系大好きなんで続き楽しみに待ってます
[take:1]
「」
──────────────────────────────
僕の世界は、この日からずっとループしているらしい。
元は何も無くて、平和で普通な日々で、「ある1日を繰り返す」ことなんて夢にも思っていなかったんだ。
だけど、ある1日で変わってしまった。
まあ…それが今日なんだけれど。
今日も、目の前を君が歩いている。
こちらに綺麗な顔を向けては、会話の受け答えにキャハハと無邪気に笑っている。
これから起きること、自分自身の運命も、何も知らないような笑顔。
そんな顔に、また心を揺らされる。
憐れみ、悲しみ、そして少しの罪悪感。──
──君はこれから”死ぬ”んだ。
そして、それこそがこの繰り返しの要因。
僕は、何十回、何百回、何千回、何万回と、今日に君が死ぬところを見てきた。
ある時は無差別殺人の被害に遭ったり、ある時は信号無視の車に撥ねられたり、ある時は劣化で崩れ落ちた街灯の下敷きになったり。
そして君が死ぬ度、僕は昨日の夜21時に戻って、今日の日をやり直すのだ。
まるで本の中のありきたりな物語みたいな現実だ。
始めの頃はこのループを利用して、君が死ぬ未来をなんとか変えてやろうと思った。
でも、それはどうしても無理らしい。─
一番始めに君が死んだ理由は、「居眠り運転のトラックに轢かれて」だった。
だから2周目の僕は、そのトラックと巡り合わないようにと、君にコンビニに寄ろうって提案したんだ。
でもそうすると、立ち寄ったコンビニに数人の強盗がやってきて、君は見せしめに殺された。
ならばもう一度やり直して、そのコンビニも避けて行こう、と。
その次はショッピングモールの三階でたまたま背中からもたれ掛かった柵が崩れて頭から落ちて、
その次は歩道の地面が崩落して──。
。そうして僕は思い知った。
君が死ぬこと自体、この繰り返しの「ルール」で、変えることは絶対に出来ないのだと。
僕が一緒に歩かなくても君は死んで、家でただくつろいでいても、どうせ君は死ぬ。
そういう”さだめ”なのだと。
ループから抜け出すなんてとうに諦めて、ただ君と一緒にいる時間だけ楽しんでいればいい。
いつしか僕はそう考えるようになった。──
ふと、そんな思考から我に還る。
「ねぇイト、あれ美味しそう!」
君が僕の名前を呼んで、目の前ではしゃぐ。
君…[シラン]が指を指す方向には、街の洋菓子店のクリスマスケーキの看板があった。
「ケーキはさっき食べたでしょ、買わないからね」
「ああ!あたしの発言を先読みしてる!」
「シランはすーぐ『買って』とか言いすぎなの。慎め。」
「慎めってなに慎めって!言うだけなら良いでしょー!──」
しらは冗談っぽく頬を膨らましてそう言い、駆け足で横断歩道の方に歩いていく。
「ちょっと、道そっちじゃないよー」
また、嫌な予感がした。
「あ、そうなの────」
そう言い、君がこちらに振り返りかけた途端。
君は突然の痛みに恐怖する暇も無く。
──鈍い音をブレーキ音をたてたトラックが、横から君を撥ね飛ばした。
「──きゃあぁあ─ぁあぁ──!!!!」
まるで冬の静寂を掻き消したような、何度目かの声。
さっきまでの平穏が全て嘘だったかのような、耳を劈くようなひどい断末魔。
途端に飛び出す赤い赤い血、染まっていく丈の長い上着、驚きと恐怖が入り混じった君の表情。
僕はそれをただ呆然と眺めていた。
何度繰り返しても、悲しくて嫌になる。
トラックに轢かれて死ぬのは…いったいこれで何度目なんだろう?
、…そんなこと考えていると、段々と意識が遠のいていく。
これで、また昨日に戻る。
ずっとこれの繰り返しだ、と、ぼんやりと考えながら、静かに眠りに落ちていく。──
──目を覚ました。
いつものベッドの上。
壁掛け時計の短針は10の数字を指していた。
窓の外を見ると、何処からか虚しさが沸き上がってくるような真っ黒だった。
ああ、風呂上がりで急に眠くなったから、19時くらいに眠ったんだった。
。…そうだ、いいことを思い付いた。
そう思って、ズボンのポケットに入れた携帯を取り出す。
そのままロックを解除して、メールを開く。
メールの宛先は、勿論シランへ。
[12月22日20時3分]、昨日の夜で止まったくだらない会話が目に入る。
それらを気にもせずに、慣れた手つきのフリック入力で文字を綴った。
『明日さ、やっぱりもっと遠いところまで行かない?』
明日…12月24日はクリスマスイブの日。
せっかくのクリスマスイヴだから、住んでるところの、出来るだけ栄えた辺りまでまで出かけようって約束してたんだ。
送る文に誤字が無いか確認して、メールの送信ボタンを押す。
…。
流石にすぐに既読は付かないよね。
そもそも、シランはもう寝てる時間だ。
シランって何故か真面目に早寝早起きを徹底してるんだよな。いっつも6時半起きだし。
19時から寝たせいでもう眠気が無いから、今日は0時くらいに寝て明日返信を確認しよう。
そうと決まれば、眠くなるまでどう時間を潰すかなぁ。
別にやりたいことも無いからな。
…ボールペンでも分解するか。これは初めての試みだ。
使ってないボールペンなんてあったかな…───
──────────────────────────