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#にじさんじBL
yhj√
9,261
「なぁ叶、大丈夫か?」
「うんッ、大丈夫ッ、ふッ」
うそだ。全然大丈夫ではない。最近忙しかったから卵を産む暇がなく、3ヶ月分の卵でお腹は張っている。正直しんどい。
この体質で何より嫌なのが、産卵後はお腹の中が熱くなると言うこと。いちばん安心する人にそばにいて欲しいという本能なのだろうか。僕の場合は葛葉だった。でも、言えるはずがない。だって葛葉はあくまで相方だ。そんな目で見てはいけないし、見てもらえるはずがない。
そろそろ限界がくる。はやく家で産まないと…
「ごめッ。くずは、僕もう帰る」
「はっ!?ちょっ!」
最悪だ。3ヶ月分が一気に来る。体の火照りも溜まって行くだろう。
かれこれ30分は頑張っているが、いっこうに卵が出てくる気配がない。
「ハァッ、はぁっ…んぐぅーッ……はぁ」
ぬちっ、ぐちゅっ
「ふぅー…はぁ……すん…ぐすっ」
ぽろぽろ
「ひぐっ、ぐすっ…しんどいよぉ…くずはぁ、くずはぁ…たすけて…」
お腹はパンパンで苦しいし、いたいし、もうどうすればいいんだよ。
葛葉は叶と別れたあと、雲雀を除くだとかの3人に出会い、不破に誘われ、彼の家に来ていた。
カシュッ。ビールの缶をまたひとつ開けながら、不破は様子のおかしい葛葉に話しかける。
「にゃは、どうしたん、葛葉」
「えっ?何が?」
「あれー、もしかして自覚ない感じか」
「だから何がって」
煙草を片手に持っているローレンは、自覚がない葛葉に疑問をもっているようだ。
「さっきからずっと挙動不審だよ、お前」
「うわっ、びっくしたぁ」
後ろから声がして思わずふり返ると、そこには不破に頼まれ追加の酒や、アイスなどをコンビニで調達してきたイブラヒムがいた。
「俺が行く前から今もずっと。どうしたの?」
「いや別に何も…」
「なんか気になることでもあった?」
「いやっ、別に…」
「にゃはっ、その反応。なんかあるときって俺の経験が言うとるわ」
さすがはホストと言うべきなのだろうか。少しの声の跳ねに気づくのは、少し恐ろしい。
「ちょっとでも話してみたら気付きが得られるんじゃねーの?」
「まぁ、たしかに」
まんまと乗せられて、俺は今日の一部始終を話す
ことになった。
「なるほどねぇー…」
「体調悪そうだったし家行ったほうがいいのかな
と思いながらでも本人は大丈夫って言ってたしさぁー」
「すっげぇ早口w」
「行ったら?心配なんでしょ。叶さんのこと」
イブラヒムがポツリと呟く。不思議にも会話して
いた彼らの耳にもそれは、はっきりと届いた。
「それか電話して声聞いてみるとか」
「確かに…」
「はいはいはーい。行ってらっしゃーい」
「うわっ、ちょ」
ほろ酔いの不破に押され、葛葉はスマホ片手でトイレに追いやられた。
「はぁー…電話かけてみるかぁー」
正直行って勇気はあまりない。でもそれで叶が…といった最悪の想像をしてしまい、葛葉の指が携帯を滑る。
prrrrrrrr
prrrrrrrr
prrrrrrrr
「んんぅ…なにッ…」
あれから1時間程たった。いつまで経っても卵は出てこない。苦しい。苦しい。苦しい。朦朧としていた叶の意識は、電子音によって浮上した。
画面を見ると葛葉という文字。欲しくて欲しくて仕方がなかった彼の存在。助けて欲しいとは言えなかったのに、苦しさに負けて画面を押してしまった。
『叶ッ!大丈夫か?』
「ッ…。」
聞きたくて、聞きたくて、たまらなかった声。思わず涙が出てしまう。
「うう〜…ぐずっ…くずはぁー…会いたいぃ…」
『叶?今から家行くからな。待ってろ』
「ぅん…」
あぁ、切れてしまった。
せっかく声が聞けたのに。僕の家に来ると言っていた。確かにもしもの時のためにお互い合鍵は渡している。
ふと思った。何分後にくるんだろう。葛葉と電話していたこの数分間。とても長い時間に感じて、30分くらいのように感じて。でも現実はそうではなくて。
また永遠に葛葉を待たないと行けないんだろうか。いつ来るかも分からないのに、ほんとに来るのか分からないのに。また、ずっと待たないと行けないのだろうか。
僕はなんて最低な奴なんだろう。葛葉に会った時から、ずっと懐かしい感じがした。葛葉もなんでか分からないけど、僕の名前を知っていた。葛葉の笑い声がたまに、誰かも分からない面影と重なってさ。その度に申し訳ない気持ちになって、居心地が悪くなるんだ。
今回みたいに、期待させて来るのもずるい。最初に会ったとき、お互いの合鍵を一応持っておこうと言い出したとき、風邪をひいて看病してもらったときも。
考えていると、どうしても葛葉が僕のことを好きなんじゃないかって思えてきて。本当に馬鹿馬鹿しいと思うけど。そう考えてしまうんだ。
「ごめっ、俺帰る!」
俺のその声に3人が振り向く。
「おっ、電話したんやなぁ〜」
「1名様お帰りでーす!」
「叶さん体調悪そうだったんでしょ?スポドリとか買ってったら」
反応は様々で、みんな叶を心配している様子が見て取れる。
「イブっ、ありがと!スポドリとか買ってから行くことにするわ!」
「どいたまー」
「みんなも!ほんとにありがとう!んじゃまた」
「あいよー」
バタン!玄関の扉が大きく音を立てて閉まる。
「焦っとんなぁ〜」
「反対方面の電車乗ってそう」
「叶さんの真下の部屋に鍵刺そうとすんじゃね」
「たははっ、確かにw」
コメント
1件
うわあ、これは……切なくて、苦しくて、でもあったかい話ですね。叶の「大丈夫じゃない」のに強がる感じと、本能で葛葉を求めてしまうもどかしさがひしひし伝わってきました。特に「ずっと待たないといけないんだろうか」という諦めにも似た思考が、胸にグッときます。葛葉がみんなの後押しで動き出したところも、周りのキャラの温かさが感じられて好きです。続き、気になります……!