クロネコさくら様からのリクエストです
微妙に北日要素あるけど許して…
夜の街を走るロケ車の窓に、きらめくネオンが流れていく。
韓国は後部座席に身を預けながら、その光の揺らぎをぼんやりと目で追った。
ふと脳裏に浮かぶのは、学生時代の記憶。
韓国がアイドルとして活動し始めた、懐かしい頃。
思い出に鮮明に映るのは、双子の弟の北朝鮮と親友の日本
――気づけばいつも一緒にいた三人だ。
ふざけ合って軽口を言っては、馬鹿みたいな喧嘩をして。
けれど腐れ縁は切れることなく、大人になった今も時々顔を合わせている。
そして、韓国がアイドルとして脚光を浴び、日本が会社員として働き始めて数年が過ぎた。
韓国は手元のパソコンを開き、北朝鮮から渡されたUSBを差し込む。
再生された映像に映るのは、深夜のオフィスで机に向かう日本の姿。
書類と画面に埋もれ、疲れ切った顔で作業を続けている。
瞼は重く、口元は力なく緩み、時折こめかみを押さえて小さく息を吐いた。
カメラは遠巻きに、そっと様子を見守るような角度。
映像を見つめる韓国の胸が、きゅっと締め付けられる。
日本の疲れ切った横顔が、妙に脆く見えた。
──こんな姿を、これ以上放っておけるはずがない。
あの頃からそうだった。
気づけばいつも、彼のことばかり目で追ってしまう。
『別にあいつのこと、そういう意味で好きなわけじゃない』
鼓動が跳ねる度、そう言い聞かせては、からかったり突き放したりしてきた。
けれど胸の奥に残る感情は、誤魔化すほどに鮮やかになっていた。
後日、日本を自宅に呼び出した韓国は、リビングでまっすぐ日本を見据えた。
「お前、そろそろ限界だろ」
「……そんなことは」
「死にそうな顔してよく言うよ」
隣で北朝鮮が腕を組み、低く頷く。
今度は、逃げ場を与えない声で告げた。
「今の仕事、辞めろ。僕の専属マネージャーになれ」
「…え?な、何言って…」
「日本。これは冗談じゃない。俺らは本気だぞ」
北朝鮮に答えを先回りされ、黙り込む日本。
追い打ちをかけるよう、言葉を続ける。
「僕の活動スケジュールを回せるのはお前ぐらいだ。几帳面で、裏方も嫌がらなくて……昔から息も合う」
「それに、今マネージャーやってるコイツは全く役立たないからな」
「は?俺だって兄貴の世話係なんて早く辞めてえわ」
いつもの兄弟喧嘩を繰り広げる前で、日本は顔を上げ、半ば呆れたように笑う。
「僕はただの会社員ですよ?アイドルのマネージャーなんて、僕にできるわけ…」
「できるさ。俺が保証する」
ピタリと喧嘩をやめた北朝鮮が口を挟む。
「マネージャーの仕事は俺が教える。そんなに難しい仕事じゃないし、安心しろ」
「……俺からも頼む。無理にとは言わない。だが…俺は、俺たちの元に来て欲しいと思っている」
「僕たちの元へ来れば、辛い思いなんてさせない。だからさ、僕らを選んで」
三つの瞳が、真摯に日本を見つめる。
自分を酷使しない職場。自分を気遣う気持ちが伝わる言葉。
なりより、大事な親友からの頼み。
もう日本には、断る理由が無くなっていた。
「……わかりました。やります」
覚悟を決めて二人を見つめ返す。
承諾の返事に、彼らの顔が綻んだ。
「ま、僕直々のスカウトを断るわけないよね」
「そう言ってくれると信じていた」
「ほら、雇用契約書だ。ここにサインしてくれ」
差し出された書面の署名印に、日本の名が記される。
こうして、日本は韓国の専属マネージャーになった。
あれから数年後。2人のサポートの甲斐あって、韓国はトップアイドルに登りつめた。
今日はそんな彼の定期配信日。広い自宅の一角で、北朝鮮がカメラを回し、韓国が画面の中央で微笑む。
ステージではクールに歌い踊る彼も、配信ではラフなパーカー姿でソファにゆったり腰かけ、ファンに笑顔を向けていた。
「今日は来てくれてありがと〜みんな元気?」
《今日も顔が国宝》
《その服ゆるゆるなの可愛すぎ》
《普段の完璧でかっこいいのも好きだけど、配信モードの韓国大好き》
コメントが流れるたび、韓国は軽く手を振り、ファンネームを呼びながら時折目線を下げる。
彼の腕の中には――ものすごく不服そうな顔をした日本。
「日本も配信出てよ」
「嫌です」
こんな会話があったのが、少し前の話。
結局、韓国の腕力には敵わず、こうしてがっちり抱きしめられている。
当の日本は、ぶすくれながら「時間、押してますよ」と小声で促した。
何故マネージャーである日本が配信に参加しているのか。
それは、日本が過去にうっかり韓国の配信に映り込み、ファンを爆発的に増やした前科があるからだ。
配信部屋にノックもせずに入ってきた日本へ、「ちょ、入ってくんなって言ったじゃん!せめてノックぐらいしろ!」と思春期の息子のようキレる韓国。
それに対して「いいでしょ別に。誰も僕のことなんて気にしてませんよ」と淡々と返す日本。
“神回”として名高いその出来事は今でも語り継がれるほどで、日本は今や韓国のファン層からも“マネさん”と呼ばれ、親しまれている。
そして、二人の絡み目当てで配信を観る視聴者も多い。
これは金になると確信した北朝鮮の強い推しにより、時々日本も出演することになったのだ。
ついでに、この一件で韓国は何かに吹っ切れたらしく、日本への態度がガラリと変わった。
この時の韓国の心境は彼しか知らない。
韓国が日本を抱いたまま、腕を伸ばして一枚の紙を手に取る。
「見てこれ。今日のスケジュール、日本が作ってくれたやつ。超きっちりまとめてるし、隅っこに猫ちゃん描いてあるの。可愛くない?」
「いや、そんなものは見せなくていいですから」
「いいじゃん。僕の大事な人のこと、もっと自慢したい」
《急な爆弾発言やめろw》
《マネさん可愛い!》
《韓国またイチャつきモードw》
下手すればスキャンダルになるような発言を、視聴者は笑って流す。
韓国がマネージャー好きすぎるのは今や定番のネタだ。
本日の配信の企画は質問コーナー。
事前に募集していた質問をまとめた紙をみて、韓国はふっと笑う。
「僕と日本についての質問ばっかりじゃんwそんなに気になるの?」
「じゃあ、未公開の情報もいっぱい教えちゃおうかな」
あざとくウインクしてみせる韓国に、《ファンサktkr》《wktk》とコメント欄も期待で盛り上がり始めた。
「えっとまずは…”韓国さんがつけてるネックレスって大事なものなんですか?いつも同じものをつけてるので気になりました”…か」
「そうだよ。これは僕の宝物なんだ」
日本を抱く腕を解き、身を乗り出す韓国。
服の下に隠したネックレスを取り出して、カメラの前に持っていく。
手をバックに映された、チェーンに通されたシルバーのリング。
その傷の形をなぞるよう、親指がそっと凹みを撫でた。
「数年前、大事な人とお揃いで買ったんだ。その日から肌身離さずつけてたら、ちょっとボロくなっちゃった」
「でもそれが逆に味を出してていいんだよね」
マイクに語られる柔らかな独白は、心の温度が表されている。
甘い温もりに、溶けてしまいそうな心地になったのは、視聴者だけではない。
韓国に遮られ、画面から姿を消した日本。
シャツの上から何かを掬い上げるよう、胸元を掴んでいる。
そして、誰にも気づかれぬように、ほんの少しだけ口元を緩めた。
柔らかで、優しくて、愛に溢れた穏やかな微笑み。
――それは、カメラの前の韓国と瓜二つ。
まるで同じ想いが、同じ場所に宿っているかのようだった。
「…こんなもんかな。じゃあ次…”韓国さんの思う、マネさんの好きなところ3つ言ってください”だってw沢山あり過ぎて絞れないなぁ…」
カメラから離れ、ソファに戻る。
今度は日本に抱きつくことなく、彼の隣に腰掛けた。
「まず、全体的に小さいとこでしょ。次にちょろいとこ。あと、すぐ顔真っ赤にするとこにクソ真面目なとこ、スポーツ下手くそなとこ…」
「ちょ!?3つ超えてるし、それ全部悪口ですよね!!?」
《照れてるw》
《この二人やっぱ夫婦》
羞恥で逃げようとする日本を捕まえ「はいはい逃げないの〜」と引き戻す韓国。
その後も、日本は隙を見て逃げ出そうとするが、ノールックで伸びる手に捕まって、韓国の隣に座らされる。
攻防を繰り広げながら淡々と質問に答えていくシュールな光景に、視聴者は笑っている。
……しかし、北朝鮮だけは違った。
静かにカメラを回しながら、呆れた表情で二人のやり取りを見ている。
……兄貴の日本への執着、昔から変わんねぇな
思い出すのは、学生時代の出来事。
今とは違い、思春期らしくツンデレだったアイツは、日本に反抗的な態度を取りながらも、その裏で日本を狙う者を排除していた。
大人になってからも、俺に偵察を頼んで、常に日本を見守って…
日本はこの事を知らない。
知られたらきっと、逃げ出してしまうから。
…元の辛い生活に戻ろうとするから。
アイツも俺も、もう二度と日本に苦しんで欲しくない。
心配だから、大切だから。手元に置いて守ってやりたい。その為なら、アイツに加担してもいい。
そう思ってしまう俺は、アイツのことを笑えない。
例えそこに恋愛感情がないとしても。
……まあ、今がまだ可愛い方だと、じきに分かるだろうが。
開始から二時間。締めの宣伝が終わって、バイバ〜イと手を振る韓国。
そこで無事に配信を終え――るはずだった。
北朝鮮が終了ボタンを押す。……が、鳴るはずの終了音が聞こえない。
口端を歪ませた彼はモニターとパソコンを持って、そのまま別室に行ってしまった。
静かな撮影部屋に残る二人。韓国は日本の背中にもたれかかって緩く腕を腹にまわす。
「ふぅ……あ、日本〜来週の日曜と月曜、予定空けといて。お出かけデートしよ」
「なっ……!デートは家の中だけって言ってるでしょ!てか、週刊誌に取られて困るのあなたなんですからね!」
何の気なしに口にした言葉へ、顔を真っ赤にして振り返る日本。
「え〜もうホテルも予約しちゃったし〜僕は関係バレても困ることないもーん」
けど……!と抗う日本の両頬へ、するりと指が触れる。
「……ね、日本。僕のお願い聞いてくれるよね」
声は甘く囁くのに、込められたニュアンスは真逆だった。
――断れるわけないでしょ
そんな、支配的で生意気な圧。
眼前に広がる美しい笑顔も、自信に満ち溢れていて、挑発的だ。
日本の胸の奥で、反発と甘さがせめぎ合う。
「……わかってるくせに。ほんと、ずるい」
頬を染めて視線を逸らす日本。
その響きは、反発よりも、降参に近い。
韓国は、勝ち誇るように口角を上げた。
「やっぱり僕に逆らえないんだ。昔からそうだもんね」
「っ……!」
「素直じゃないとこも好きだけどさ。最後は僕に折れる日本が、一番可愛い」
背後から抱く腕に力を込め、彼はさらに距離を詰める。
日本は必死に冷静を装うが、胸の鼓動が全部バラしていた。
――まるで、どちらが主導権を握っているのかを誇示するかのように。
その一部始終が――まだ配信されていた。
《え、え…今なんて!?》
《お前ら…付き合ってたのか…?(動揺)》
《マネさんガチで彼氏説》
《韓日推しワイ、生きてて良かった》
《これが尊死ってやつか》
《おいスタッフwカメラ切り忘れてんぞw》
《今のセリフ保存した。結婚式で流す》
《世界よ見ろ!これが公式カプだ!!》
瞬間的に盛り上がるコメント欄。
視聴者の熱狂は他SNSにも飛び火し、各所で燃え上がる。
明らかに異様なネット騒ぎに気づいた北朝鮮が、別室から叫んだ。
「おい!!カメラまだ動いてんぞ!!今すぐ止めろ!!」
その一言で、二人は瞬時に置かれた状況を理解する。
日本は顔の熱がサッと引き、全身が凍りつく。
一方の韓国は……涼しい顔で笑って、動こうともしない。むしろ、喜びが表情に溢れ出ている。
「いい機会じゃん。これでやっと、堂々と隣にいられる」
もっと見せつけちゃお、とカメラを近づけ、キスを落とす。
唇に触れる感覚に、日本は考えることをやめた。
――翌日。
SNSのトップトレンドには“韓日配信事故”の文字。
パソコンのメールには、会見の依頼が殺到している。
「各方面に、どう説明すれば……」
確実に訪れる質問攻めを想像して、キリキリと痛む胃を押さえ机に突っ伏す日本。
対して韓国は、スムージー片手に満足げに笑っていた。
「これで安心でしょ?」
「安心じゃなくて寿命が縮むんですよ!!」
日本の肩越しに覗き込む北朝鮮が、にやりと笑ってスマホを見せた。
「こうなっちまったら仕方ないだろ。ほら、ほとんどのファンがお前らを祝福してるぞ。会見で見せる用の結婚指輪でも買ってこい」
うう…と嘆く日本の頭を慰めるよう撫でる。
「大丈夫だ。日本のことは俺がサポートしてやる。アイツに嫌気がさしたらいつでも俺の所に来いよ」
韓国を揶揄うための冗談。なのに、赤い眼差しはやけに真剣で。
その意味することに韓国はすぐ気づき、日本を抱き寄せて声を荒らげた。
「はぁ?お前の所になんか行かせねえよバーカ!!」
独占欲丸出しの抱擁と暴言に、日本は思わず吹き出し、笑顔を浮かべる。
「はい。頼りにしてます」
「日本!?僕の目の前で浮気すんな!!」
ギャーギャーと騒ぎ、笑い声に包まれる場はまるで、学生時代の昼休みのよう。
屈託のない笑みを浮かべる日本をみて、韓国と北朝鮮は、優しく微笑む
ま、こうなるのは分かってたんだけど
この時、2人の笑みに隠された何かに、日本は気づくことが出来なかった。
韓国と日本の薬指には二つのリングが嵌っている。
年月を感じるものと、真新しいもの。
積み重ねた愛と、始まる新たな関係。
先日、数多のフラッシュを浴びたそれらは、二人の愛を爛々と彩っていた。
この作品はいかがでしたか?
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コメント
8件
リクエスト書いてくれてありがとー!! 冷めない興奮と下がらない口角を抑えてたから、感謝を言うの遅れちゃった💦 もう韓日も北日もあるなんてお得すぎるよ… 独占欲強めで全面に愛を出してる韓国が良すぎる!!😢 やっぱりアイドル活動で培った自信とか動じなさが活かされてる感じがする
この男子校に居そうな三国大好きです💘 今までツンデレ韓日しか見てきませんでしたが甘々も可愛くて新しい扉が開けました… 尊い作品をありがとうございます✨️
や、やはり貴方は神です…!こんなに文章力がある人が神でないわけがありません! リクエストよろしいでしょうか…? よろしければ国連×日本が見たいです!国連が特権みたいなのを使って2人きりになる、行きすぎた過保護見たいな…?