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卒業ライバーさん出てきます!
雨の日は、1日中部屋にいる。
嫌いな訳じゃないけど、外に出る気分にもなれない。
画面越しに2人の声が聞こえる。次の配信の話。でも、聞こえるのは雨音だけ。
「浮奇?大丈夫?体調悪い?」
サニーがそっと聞いてくれる。
「あぁ、ごめん」
「1回寝てきたら?ここのところずっと忙しかったし」
アルバーンは水でも飲んでいるのだろうか。タンブラーに当たる氷の音がする。
「大丈夫、内容だいたい決まったし」
「じゃあ、お言葉に甘えて、ごめんね」
ふたりは気にしないでと言ってくれる。なんだか申し訳ない。2人は進んでいる、確実に前に。
1人だけずっと同じ場所に留まっている気がする。
雨の日は嫌じゃない。でも、嫌なことばかり考えてしまう。
(…寝よう)
体をベッドに預ける。彼の声が蘇る。
『大丈夫。大丈夫。きっと上手くいくよ』
微睡みの先には、彼がいた。
雨、彼はいつも雨の日に現れる。
雨は錆びるから嫌いだって言ってたのに…。
「浮奇」
あの頃と変わらない声で、笑顔で、名前を呼ぶ。
「ふーふーちゃん」
「やぁ、浮奇」
これは夢。分かっていた。ずっと覚めないで欲しかった。
「最近どうだい?浮奇、ちゃんとやれてるかい?」
「うん、そこそこね」
「それはよかった。でも、あんまり頑張りすぎないでね、心配だから」
彼は夢の中でもずっと優しい。あの頃と変わらない時間が流れる。
やがて、雨は止む。
「浮奇、そろそろ時間だ、じゃあね」
何も言えない。彼がどんどん透けていく。掴めない服だけがうっすら残る。虹のかかった空を睨む。それでも隣には君の残像が残る。
また、雨が降ってほしいと願ってしまう。
時は過ぎていった。
ただ、あの日から雨の日はどうも落ち着かない。
また、会えるんじゃないかと期待してしまう。
そして、そう思った日には必ず会えるから。
いつもより少し長く寝てしまう。
また、会いたいから。
「浮奇」
あぁ、いつもと同じ。変わらない。
「ふーふーちゃん」
変わらない時間。それはいつまでも続くものではない。それは、わかっている。ただ、今だけは何もかも忘れて、ただ2人でいたかった。もっと、そんな時間がほしかった。
いつも、気がつくと彼は消えている。ただあの声を耳に残して。
これは、記憶なのか未練なのか、何もわからない。でも、ひとときの幻想に過ぎないことは、分かっていた。
『大丈夫。大丈夫。きっと上手くいくよ。』
彼の言葉。お呪いのように繰り返した。
雨の日は、そう長く続かない。特に夏は晴れの日が増える。
イベントも増えて、忙しい日が増えた。
忘れた訳じゃない。でも、考えてる余裕がなかった。もし、雨が降ったらって。
『今日は星が綺麗なんだって』
画面の向こうで、アルバーンが言った。何気ないことだったけど、とても重要な気がした。だって、あと何回、空を見上げるか分かんないから。
夜も深い、午前2時。遅くまでの作業が終わって、窓を開けた。空を見た。月も星もすごく綺麗に映った。
ただ、眺めていると、雨が降ってきた。雨が入って来ないよう、窓を閉める。少し残念に思いながら、椅子に腰をかける。
「…浮奇」
慌てて振り向く。そこには誰も居ない部屋がある。
「ふーふーちゃん?」
今は夢の中じゃない。それなのに、彼はここにいる。
いや、姿はない。ただ、声だけが部屋に響く。
「浮奇、もう大丈夫。大丈夫。きっと上手くいくよ。」
「え…」
別れの合図な気がした。別れ際よく言ってくれたから。
「じゃあね、浮奇」
そっと抱きしめられた気がした。泣かない。ただ、もう一度窓を開けた。
蒸し暑い。でも、今はこれくらいでいい気がした。
discordの通知音がなる。
『浮奇!これ一緒にやらない?』
アルバーンからだった。
画面には新作のゲーム。以前彼とプレイしたゲーム。
彼のいたずらかと思って、少し笑いがこぼれた。
『うん、やろう』
雨は止まないけど、月も星も綺麗なままだ。
コメント
1件
うわあ……切ないですね。雨のたびに現れる“ふーふーちゃん”とのやりとり、どこか温かくて、でも夢だとわかっていて。「大丈夫、きっと上手くいくよ」って言葉が、おまじないみたいに繰り返されるのが胸に染みました。最後、姿はないのに声がして、抱きしめられた気がして、それでも雨が止まないまま月と星が綺麗だった――その景色がとても美しくて、涙が出そうでした。素敵な物語をありがとうございます。
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#闇ノシュウ
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