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最初から、違和感はあった。
それに気づいた瞬間、胸の奥がひやりとした。
視線を下げたまま、ゆっくりと家に入る。
家の中は静かだ。
環境音も、機械音も、正常。
なのに、身体だけが警戒している。
呼吸が浅く、汗が止まらない。
廊下を進む。 床が、きしむ。
一歩。
……もう一歩。
自分の足音より、ほんの一拍遅れている。
立ち止まる。 音も、止まる。
振り返らない。
確認しない。
それが一番安全だと、知っている。
二階。
ドアの位置、家具の影、全部覚えているはずなのに、
視界の端で何かが揺れる。
見ない。 見たら、終わる。
汗が背中を伝って、腰まで落ちる。
心臓の音がうるさくて、他の音が聞こえない。
機材を確認する。
EMF、反応なし。
温度、正常。
証拠は出ない。
でも、確信だけがある。
――近い。
距離が近づいている感覚。
背中に、空気の重さを感じる。
触れていないのに、圧だけがある。
ここにいる。 すぐ後ろ。
それでも、振り返らない。
やらなければならないことは、まだ残っている。
スピリットボックスを、ゆっくり持ち上げる。
手が震えて、ノイズが大きくなる。
質問は、最小限。
無線越しの沈黙が、異様に長い。
ザー……
ザー……
ノイズが、途切れた。
空気が、冷える。
耳元で、 すぐそこで、声がした。
「せんせー」
優しくて、懐かしい声。
呼ばれた瞬間、
首筋に鳥肌が走る。
振り返る。
視界いっぱいに、
にっこり笑った緑色が、あった。