「しょっぴー、しょっぴー」って言わなくなった。目で追うこともしなくなった。何より、渡辺が寂しさの限界にきていた。クリスマス・イブの夜。皆んなとは別に向井は部屋を取った。
2人で泣き、小さなケーキを食べ、向井は渡辺の写真を撮る。 幸せだった。寂しさが薄れた。
約束の1カ月後の1月5日には、大好きな海に行く。 まだ、向井がちょっと不安定。
声に反応してしまう。慌てて知らん顔する。
渡辺は、目黒のそばで笑うようになった。寂しさが減ったからだろう。写真を撮ったことは言った。
その写真見せてと言われている。
渡辺も、出来上がりを楽しみに待っている。
秘密の恋だけど、全く話をしないわけじゃない。向井が渡辺の写真を撮るのは有名。何度も撮っている。コンテストにも出している。
だから、写真の話はする。
向井ーしょっぴー、写真出来たで?
渡辺ーキャンドルの?
向井ーん、パネルにした。
渡辺ー見せて?
向井ーんっと、はい。
渡辺ーへぇ、これ俺?
佐久間ーどれどれ?
阿部ー綺麗。
佐久間ーん、翔太じゃないみたい。
渡辺ー綺麗で、俺じゃないって失礼だな。
深澤ーでもさ、ナベに見えない。
目黒ーいい写真だね。
渡辺ーん。
中性的であり、でも、ちゃんと男性と分かる。だけど綺麗なのだ。
いつもの皆んなが知ってる顔じゃない。ちょっとだけ口元に微笑みを浮かべている。紗のストールが渡辺を覆い隠すようであり、顔がはっきり分からない。だから、渡辺に見えないのだ。
深澤ーナベ、お前、綺麗だったんだな。
渡辺ー失礼な。
深澤ーうそうそ、でも、いつもの綺麗さと違うわ。
渡辺ー何だそれ。
佐久間ー綺麗だけど、いつもの翔太じゃない感じ。
深澤ーそう!ナベがいつもと違う。
寂しさから、少し解放されて嬉しい時の顔。
目黒や阿部にしか違いは分からないだろう。