『痛みを負った心には愛の癒しを』〜愛情は特効薬〜
最後の薬 幸せな時間を一生
夜。私が寝ている時。
『すぅ、すぅ……。』
スルッ………。。カツーン……!
薬指に填めていた…金色の指輪が落ちた。
そして、翌朝目を覚ますと――。
元の世界の。悪魔の棲む家に戻っていた。
『ァ、嫌、なんで…っ!?』
『今までどこに居たんだよ。あ?』
『なんで、私、屋敷に…っ。』
『あ?何おかしなこと言ってんだよ。』
『指輪、指輪は…っ?』
(嘘、まさか、寝てる時に外れて…。)
『これから沢山可愛がってやるからな?』
『いや、いやぁぁ!!』
髪を引っ張られて部屋へと閉じ込められる。
一方その頃――。
翌朝。
『…指輪…主様指から外れた…?』
『つまり、強制的に元の世界に返されたってことですか?』
『前兆が当たるとはね…。』
『こちらに戻す方法はないのか?』
『こちらに指輪がある以上は…っ。』
『…エルヴィラ。』
『え、ボスキさん? 』
『魔女族のエルヴィラなら…何とかできるんじゃないですか?』
『ですが……保証は何も…』
『主様を救う為です。もう…。傷つけないと、守ると約束しました。だから、出来ることはやるべきですよ。』
『ボスキくんの言う通りだよ、ベリアン。今すぐアグノームに行こう。』
『分かりました。エルヴィラ様の元へ参りましょう…!』
あれからこちらでは…1週間の月日が流れた。
私は従順に飼い慣らされた。
『……。』
(あいつは…。今家にいないんだ。
パチンコでも打ちにいったかな。)
『部屋の鍵…。』
ガチャ。
(開いてる…。閉め忘れたんだ。)
『指輪…あっちに忘れてきちゃったんだ。
っ…会いたい。みんなに、会いたいよ。』
『助けて…っ。』
関所の村 アグノーム
『なるほど。悪魔執事の主をこちらに呼び戻して欲しい。と。』
『あぁ。エルヴィラ、頼む。何とか出来ないか?』
『…出来ます。』
『ほんとか!?』
『まずはその金色の指輪…そして、呼び出す者の一部を私に下さい。』
『主様の一部……。』
『髪の毛や私物でも構いません。』
『あ、それなら……。』
私は主様のハンカチを出す。
『部屋に置いてあったハンカチ。何か使えると思って持ってきたんだ。』
『ありがとうございます。そして次に貴方方執事の18名の強い祈りが必要です。』
私は魔法陣を描きながらそう告げる。
『祈り…。』
『祈るはどんな魔法よりも強力なのです。』
私は魔法陣の真ん中に指輪とハンカチを置いた。
『さぁ。祈りを。』
(主様。貴方と最初に出会った時から決めていたのです。私が守りたいと。こちらに戻ってきたら、また私の紅茶を飲んで欲しい。そして、笑って欲しいです。)
(主様。俺の作った料理を沢山食べて欲しいんです。もっと、沢山。これから先ずっと。俺に主様の好物を沢山作らせて欲しいんです。)
(主様。また一緒にご飯を食べたい。
俺の作った木彫りもプレゼントしたい。
一緒に馬に乗ってどこかへ出かけたいんだ。
また俺に…笑顔を見せてくれ。)
(主様。俺とまた一緒にお菓子を食べて笑い合いたいんです。俺にまた貴方を守らせて欲しい。どんなものからも。俺が守りたいんです。)
(主様。頼りない俺ですが、主様の力になりたいんです。もっと、貴方と過ごしたい。これから先も、ずっと。)
(主様。あんたは俺がこの手で守りたいと誓った相手だ。俺の前から居なくなるな。
戻ってきたらまた沢山話そう。だから戻ってきてくれ。)
(主様。貴方の痛みは俺がよく分かってるつもりっす。だから、渡したくないんす。他の誰にも、主様のことを。また会いたいっすよ。)
(主様。あなたの心の傷を癒します癒せるのは医者である私の役目です。あなたの事を護らせてください。)
(主様。私は貴方のことをお慕いしています。
傍にいて欲しい大事な人です。貴方がいないと屋敷は灯が消えたように寂しいのです。もちろん私も…。)
(主様。僕を1人にしたら嫌です。寂しいんです。僕はもっと主様と一緒にいたいんです…!)
(主様。貴方の奏でる音色が忘れられない。また一緒に楽器を弾きたい。2人で一緒に楽器を奏でよう。だから戻ってきておくれ。)
(主様。貴方は私と同じで…ほっとけない人です。1人にしたら…危ういような…。私はもうあなたを1人にさせませんよ。)
(主様。俺の作った服で笑顔になって欲しいんです。貴方の笑顔が俺は好きですから。)
(主様。俺にもっと教えて欲しい。主様のこと。会ったばかりなのにさよならなんて嫌なんだ。もっと…笑顔を見せてくれよ。)
(主様。戻ってきたら一緒にあんまんを食べましょう。私がお茶も点てます。私の好きな物をあなたにも知って欲しいです。)
(主様。俺は貴方の表情は読み取れないかもしれません。でも、心の傷だけは癒してあげたいんです。俺の笑顔で。)
(主様。俺と一緒にまたピザを食べて欲しいな。カクテルもまた作ってあげる。戻ってきたら沢山甘やかしてあげるから。)
(我の絵を綺麗と言ってくれたお前と……また絵を描きたい。戻ってきたら我とまた絵を描こう。)
『魔法陣よ、我は汝を召喚する。ここに迷える者の魂を導きたまえ…。』
一方その頃――。
『光…?』
ドアを開けると暖かい光が私を包んでいた。
『これは…?』
(暖かい…まるでみんなのような…。)
私はその光に触れた。
ガシッ!
『!』
『捕まえたっすよ!主様!もう、傷つけさせないっす!俺が、主様を守るっすから!』
『僕もです!主様を一人ぼっちにはさせません!ずっとそばに居ます!』
『貴方を傷つけるものは私が全部壊してあげます。帰りましょう、主様。』
『これから先もずっと俺が貴方を癒します。俺に貴方を守らせてください!』
『っ……。うん、うん…っ!』
私はその手を強く掴んだ。
時空が歪んだようにその光に引き込まれる。
『アモンのやつ急に飛び出しやがって…』
『ラムリもですよ。全く、驚かせますね。』
『ラト急に魔法陣に飛び込むなんて…』
『テディちゃんも、大胆なことするねぇ。』
魔法陣が再び光る。
『…!』
『あれが悪魔執事の主様なのですね。』
『はい。』
『なんと綺麗な方……。』
『う…っ。戻って、来れた…?』
『主様!』
みんなに抱き締められる。
『みんな…。ごめんね、急にいなくなって。』
『主様。こういう時はごめんねより別の言葉が聞きたいな〜。』
『え?あぁ…。みんな、ただいま!』
私は最高の笑顔を向けた。
『おかえり\おかえりなさい。\っす。
主様――!!』
彼女にとって執事は最高の特効薬。
これから彼女がもっと幸せになりますように♡
めでたしめでたし…♡♡







