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今の私にはそうやって答えの出ないことを考え続けるしかできなかった。
────ピンポーン
家のインターホンが鳴った。
親が出てくれるだろうと放置をしていたが、それは二度と三度と繰り返された。
あぁ、みんな出掛けてるのか。
それに今気付いた。思わず顔をしかめたが、仕方なく部屋から出て扉を開ける。
そこには幼い少年が、子供用よりも遥かに大きく分厚い布団を持っていた。
「あ、お姉ちゃん、これ落ちてたよ。お姉ちゃんの?」
相当彼にとっては重いのだろう。辛そうな顔と手で布団を突き出す。
「ありがとう。私のだ…多分」
その手を優しく布団から離しながら、布団を受け取る。私のではないと思うが、母か父のものだろう。
布団を持ち、ありがとうと告げてから家に戻ろうとした時、少年がふと口を開けた。
「お姉ちゃん、なんだか僕のお姉ちゃんに似てるね」
良かったねと言いたくなるような笑顔をして私に言う。私はなんだかその笑顔が愛おしくなった。
しゃがみこんで少年に目線を合わせると、私は少年に「どういうところが似てるの?」と問いた。
「わかんない。わかんないけど、一緒にどこにでも着いてきてくれそうな感じがするなぁ」
ぼんやりとした調子でそう言う。そっか、と私も微笑んで彼の話を聞いていた。
「でも、僕のお姉ちゃんはね、お姉ちゃんの友達がほんとはダメなことをしててもちゃんと言えないんだ。」
今度は不満げに話す。純粋無垢なこの年齢なら、そう思うのも変ではないだろう。
「お姉ちゃんはちゃんと言える?」
少しその言葉に躊躇ってしまった。
もし、また友達ができたら。その子が何か人に嫌がらせをしたり、酷くは犯罪を犯したりしたら私はちゃんと言えるのだろうか。仮に指摘したら、また裏切られてしまうのでは、と。
「言えるよ」
でも口からでた言葉はそれだった。
「そっか。お姉ちゃんはちゃんとしてるんだね。ヒーローみたい!」
にこっと笑って、少年がそう私に言った。彼の姉は、私の思った弱さに勝てなかったのだろうか。
「ありがとう」
回りに合わせない、空気を読めないと言われても、ヒーローだと考えれば楽になったろうか。