コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
期末テストが近づき、学校中が少しそわそわしている時期。
放課後、図書室の一角で拓実と純喜が勉強会を開いていた。
「なあ、拓実。ここ、答え間違ってるで?」
純喜が拓実のノートを指差しながら言う。
「え、なんで?これ合っとるやろ?」
「いや、公式の使い方が逆やん。ほら、こうして……」
さらさらと問題を解く純喜の手元を見ながら、拓実は不満げな顔をする。
「なんで純喜くん、そんな簡単そうにできんねん。俺、数学ホンマ苦手やねんけど」
「苦手やから、一緒に勉強してるんやろ?」
純喜は微笑みながら、ペンを置いて拓実を見つめた。
「でも、拓実って赤点は取らへんよな?」
「そりゃ、ギリギリで踏ん張ってるからな。けど、純喜くんみたいに余裕で満点とか無理やし……」
「大丈夫やって。俺が教えたら、絶対もっと点数上がるから」
拓実が純喜の説明を聞きながら問題を解いていくが、途中で眉間にシワを寄せる。
「……もう無理や。頭こんがらがる」
「ええ~、まだ一問やん!」
「せやけど、こんなん日常で使わへんやろ!」
拓実がふてくされるように机に突っ伏すと、純喜は呆れたように笑いながら彼の頭を軽くぽんぽんと叩いた。
「それなら、俺が拓実にわかりやすい例えして教えたるわ。ほら、この問題、犬の散歩の話に置き換えたらどう?」
「犬の散歩?」
純喜がノートに簡単な図を書きながら説明を始めると、拓実は意外にも納得した表情を見せた。
「おお、なんか分かってきたかも……!」
「せやろ?拓実は考え方さえ掴めば、ちゃんとできるんやから」
そんな風に褒められると、拓実は少し嬉しそうに顔を上げた。
しばらく勉強を続けたあと、純喜がふいに声をかける。
「なあ、ちょっと休憩せえへん?ずっと机に向かっとったら疲れるやろ」
「賛成。俺、甘いもんでも食べんと持たへん」
純喜は持ってきていたお菓子の袋を開けて、拓実に差し出す。
「ほら、これ拓実好きやろ?」
「あ、俺が好きなやつやん!なんで知っとるん?」
「そら、拓実のことは全部わかってるもん」
さらっと言う純喜に、拓実は恥ずかしそうに目をそらした。
「……そんなん言われても嬉しないし」
「ええ~、絶対嬉しそうやん」
「うるさいな!早よ次の問題出して!」
そう言いながらも、拓実の耳が赤くなっているのを見て、純喜は小さく笑った。
最後の問題を解き終わるころには、拓実もかなりコツを掴んでいた。
「ほら、純喜くん!これ合っとるやろ?」
「……おお!すごいやん!完璧や!」
純喜が嬉しそうに拓実のノートを見せながら褒めると、拓実は少し照れくさそうに笑った。
「まあ、純喜くんの教え方が良かったんやろな」
「お、やっと素直に認めたな」
ふと、純喜が拓実の顔をじっと見つめる。
「な、何やねん?」
「いや、頑張った拓実の顔、めっちゃええ顔してるなって思って」
「はあ!? 何言うてんねん!」
拓実が慌ててノートで純喜を軽く叩くと、純喜は笑い声を上げながら頭を押さえた。