テラーノベル
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レコーディング終わり、メンバーはそれぞれ帰って、元貴だけがひとり楽屋でスタッフと残っていた。
「ねぇ、大森くん。ちょっとこっち手伝ってくれない?」
馴れ馴れしく呼ばれて、手を止める。
(…ん?こんなスタッフ、いたっけ)
と思いつつ、律儀に近づいた瞬間。
背後から不自然に腰に手が回される。ピタッとくっつく体温。耳元にかかる息。
「人気出てきて、ほんとすごいね……でも、ちょっと天狗になってない?」
「っ、や……な、に……」
ふいに撫で上げられる腰、Tシャツの下に滑り込む指。びくっと身体が跳ねて、思わず机に手をつく。
「ほら……抵抗すんのも可愛いじゃん」
「っやめてください……っ、やだ、ほんとに、やだ……」
でも声は小さくて、力も入らない。疲れてた身体が動かない。
なのに、ジッパーの上から押し付けられた指に反応してしまって、
「……なんだよ、もうこんなに?」って鼻で笑われて──
涙が滲んで、でも誰にも助けを呼べなくて。
「っ……お願い、たすけて……」
ーーーー
「元貴、おはよ」
楽屋に入ってきた若井が、優しく笑いかける。
元貴はその笑顔を、直視できない。
「……うん、おはよ……」
どこかぼんやりしてて、笑顔もひきつってる。
「あれ、具合悪い?」
即気付かれた。
「大丈夫……寝不足なだけ」
誤魔化すしかない。
本当に、昨夜まともに眠れてない。ただえさえ不眠症であるけど。ベッドに入っても、あの声が耳に残って眠れなかった。
バッグの中には、そのスタッフから送られてきた「昨日のこと、他言無用な」と短いメッセージ。
既読にしても、通知を消しても、心の中からは消えない。
「大森くん、ちょっと手伝って」
その声を聞いただけで、背筋が凍る。
(……また、昨日みたいにされたらどうしよう)
周りに他の人もいるから、断れない。
笑顔を作って、「はい」って返事する。
連れて行かれたのは、楽屋の裏の部屋。扉が閉められ、照明は薄暗くて、誰の目も届かない。
「ちゃんと来てくれて偉いね、素直になったじゃん」
「っ……早く、作業だけ……」
作業なんて最初から目的じゃない。
押し倒されるように壁に背をつけられて、
すぐにズボンの前を撫でられる。拒否の声も届かない。
「今日もここ……触ったらどうなるかな?」
「や……っ、もう……やだ……っ」
「ほんとに?この前も、最後……可愛かったけどな」
指が器用に動き始める。
下着の中に滑り込んで、まだ硬くなりきってない場所をゆっくり撫でる。
元貴は必死で足を閉じようとするが、押さえつけられて逃げられない。
「ほら……もう反応してる。やっぱ身体は正直だね」
「っちが……ちがう、やめて、ほんとに……っ」
何度も訴える声。
「イっちゃえば楽になるよ」
その囁きと同時に、
擦る手の動きが早くなる。乳首もシャツ越しに摘ままれて、ビクッと身体が跳ねる。
「っや、やだ……っやだ……ッ」
恥ずかしい音が下着の中で鳴ってる。
もう濡れてる。止められない。
ーーー
「……んッ……っ、ぅあ……っ!!」
呼吸も言葉も崩れて、
腰を揺らして、逃げようとしながらも、
最後はひくっと身体を震わせて、
無理やり、イかされる。
涙がボロボロ流れて、足の力が抜ける。
そのまま地面にしゃがみ込んで、肩で息をする。
「はは、いい声出すじゃん。また連絡するね」
そう言って、何事もなかったように去っていくスタッフ。
元貴は、その場から動けないまま、
汚された感覚と、イってしまったという現実に、
自分を責めることしかできなかった。
誰にも見られないようにトイレに駆け込んだ元貴。
扉を閉めた瞬間、膝から崩れて、その場にしゃがみ込む。
スラックスの中、ぐしゃぐしゃに濡れて貼りつく下着。
指一本触れなくても、動くだけで分かるくらい、イった痕が広がってる。
「……っ、やだ……やだやだやだ……っ」
両手で口を塞ぎながら、声を殺して泣く。
「なんで……こんな……」
「気持ちよくなんて、なってない……」
数時間後、何事もなかったように現場に戻る元貴。
メイクを終えて、無理やり明るく振る舞うが、表情はどこか虚ろで。
その時──
「……なぁ、元貴」
優しくて、いつも通りの若井の声。
「さっき、すれ違ったとき……目、赤かったけど」
「……泣いてた?」
ビクリ、と肩が跳ねる。
(バレた?)
心臓がドクドク鳴って、言葉が出ない。
けど若井は、怒らず、責めず、ただ穏やかに見つめてる。
「……なんかあったんなら、俺に言って」
その瞬間、
胸の奥に閉じ込めてた何かが、ぶわっとあふれ出しそうになる。
「若井……おれ……」
言おうとした。言えば、助けてくれるかもしれない。
けど──
そのとき。
ポケットの中、スマホが震える。
画面を見ると、「非通知」からのメッセージ。
『今、何話そうとしてた? バレたら、終わりだよ?』
見られてる。
どこかで、誰かに。
喉がギュッと締めつけられて、言葉が出なくなる。
「……っ、なんでもない。ほんとに、大丈夫」
「……元貴?」
若井が眉を寄せるけど、もう目も合わせられない。
「ごめん……ちょっと、トイレ行ってくる」
笑顔を作って、その場を離れる。
背中を向けた瞬間、目から涙が溢れる。
(言えない……助けて、って言えない……)
その日の夜。
ベッドに入っても、瞼を閉じても、若井の声が頭に響く。
「なんかあったんなら、俺に言って」
言いたかった。
ほんとは、全部、あの瞬間に。
でも、言えなかった。
スマホが鳴ったからじゃない。
──「今のミセスが壊れてしまったら」
そうしてるうちに、また通知が光る。
今度は動画付きだった。
再生すると、ぐしゃぐしゃにイかされて、息も絶え絶えになってる自分の姿。
「こんな顔、人に見せていいの?」
「でも……言わなかったよね?偉い。今度、もっと気持ちよくしてあげるね」
胸がえぐれる。
吐きそうなのに、身体が勝手に熱くなる。
自分の喘ぎ声、震える腰、快感に縋る表情。
全部、画面の中の「大森元貴」。
「……しぬ……しにたい……」
涙がぽろぽろと落ちて、布団の中で肩を震わせる。
「元貴、今日さ、久しぶりに打ち上げ行かない?」
レコーディングの後、若井がいつものトーンで話しかけてくる。
元貴は、無理やり笑って答える。
「ううん、今日は……ちょっと、疲れたから」
目の下のクマ、唇の乾き、やつれた頬。
どれも若井には見えてるのに、元貴は「平気」の仮面を崩さない。
それでも、若井は詰め寄ってくる。
「……元貴、もう嘘つくなよ」
「なにが“ちょっと疲れた”だよ。最近、ずっとおかしいじゃん」
不意に腕を掴まれた。
「お願い、教えて。何があったの?誰かに……何かされたの?」
「やめて」
「え?」
「うるさい……やめて、若井、放っといてよ」
掴まれた手を振り払って、目を伏せる。
「元貴……」
「若井に、知られたくない……こんな俺、見られたくない……っ」
言葉にならない嗚咽が漏れる。
だけど、泣きながらでも、心の奥ではもう決めてる。
──誰にも言わない。言ったって、何も変わらない。
それに、
「感じちゃった自分」を知ってるのは自分自身とアイツだけで、その事実からは、一生逃げられない。
その夜、また動画が届く。
“声を出さずにイく姿”
“腰を震わせながら、快感に従ってしまう顔”
メッセージには、ひとことだけ。
『あの人には、見せられないよね?これさ、送ったらどうなっちゃうんだろうね』
その通りだった。
もう、若井には触れてほしくない。
この汚れた身体にも、心にも。
今日は機材搬入の手伝いを頼まれた。
また、あのスタッフだった。
「お疲れー、大森くん、こっちちょっと運ぶの手伝って」
「……はい」
もう、逆らえない。
声も視線も、すべてが鈍っている。
倉庫のシャッターが閉じられる。
空調のない場所、少し蒸し暑くて、肌に貼りつく空気。
「……脱ごっか」
「……え……」
「今日は“全部”見せてもらおうかな」
その声に、全身の血が逆流する。
「いや……やめて…やだ……っ」
声は震えてるのに、抵抗できない。
シャツをまくり上げられて、下着まで引き下ろされる。
「うわ、やっぱ綺麗だね……これ、動画じゃ伝わんないや」
カメラの赤いランプが、無慈悲に光る。
「今日ね、準備してきたんだ。おもちゃ」
差し出されたのは、小さなローターと、半透明のジェル。
「ねぇ、大森くん、これ、自分で入れて?」
「っ無理……できない……っやだ、ほんとに、やだ……っ」
「じゃあ……バラそっか?」
スマホの画面に映る、自分の泣き顔。
その一言で、
──完全に、心が折れる。
無言でジェルを指につけて、
震える手で、お尻に伸ばす。
「いい子だね、うん、ちゃんとできるよ」
ゆっくりと、異物が身体に入っていく。
冷たいジェルと、羞恥と、濡れた音。
後ろを埋めながら、乳首にもローターが貼られる。
「ねぇ……気持ちいい?カメラに、ちゃんと顔見せて」
腰が震える。
ローターの振動が直に伝わって、
思わず「あっ……ぅっ……」と声が漏れる。
イかされながら、自分でしてるふうに“演出”されていく元貴。
打ち上げのあと、少し様子を見ていた若井がそっと声をかける。
「……なぁ、最近ちょっと、元貴らしくないよ」
「え……」
「今日も、リハの時にずっとぼーっとしてた。俺のギター、聴こえてなかったろ」
心が一瞬だけ、震えそうになる。
でも──
(言えない。あんなこと、誰にも……)
「ごめん、考え事してただけ……」
若井の手がそっと、背中に触れる。
あったかくて、懐かしい手。
ほんの少しだけ、心が揺らいだ。
コメント
3件
なんだアイツ… いいスパイス投入してくれやがってますね✨ 若井さんが助けてくれるのかな…?楽しみです!
おとかちゃんの書く可哀想な元貴がほんと大好き……元貴受けもいいなぁ……モブレほんまに好き…… 若様〜!!助けてあげてぇ🥹
何この神作品大好き。 続き楽しみにしてます!! 応援してます!!!!