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修道院の朝は、いつも同じ音で始まる。
鐘の音。祈り。静寂。
俺にとって、それは疑う余地のない日常だった。
考える必要も、迷う必要もない。決められた通りに生きていけば、それでいい。
そのはずだった。
ボス 本日、領主家へ向かう者を一人
朝の務めの後、淡々と告げられる。
名を呼ばれたのは、まさかの俺だった。
ボス お前に任せる
短い言葉。理由も説明もない。
けれど、断る理由もまた存在しない。
🦍 承知しました
それだけ答える。
領主家への訪問は、特別なことではない。
祈りを捧げ、形式通りの言葉を交わし、問題がなければ帰る。それだけの役目。
ただの、日常の延長。そう思っていた。
外套を羽織り、門を出る。
修道院の敷地を一歩出た瞬間、空気が少しだけ変わる。
人の気配。遠くの話し声。
閉じられた世界から、少しだけ外へ出る感覚。
俺は目を伏せたまま、歩く。
余計なものを見ないように。
余計なことを考えないように。
道中、すれ違った農夫たちが軽く頭を下げる。
それに小さく返すだけで、言葉は交わさない。
修道士は、世界と距離を取る存在だ。
深入りしない。
深入りさせない。
やがて、視界の先に大きな屋敷が見えてくる。
石壁に囲まれた、立派な建物。
修道院とは違う、整えられた豊かさ。
足を止めることはない。
そのまま門へ向かう。
🦍 修道院より参りました
門番に告げると、すぐに中へ通される。
案内された部屋で、静かに待つ。
窓から差し込む光が、やけに明るい。
修道院のそれよりも、どこか柔らかい。
その違いに、ほんのわずかに意識が向く。
🦍 (…)
すぐに目を閉じる。
考える必要はない。
廊下の向こうで、足音がした。
軽くもなく、重くもない、一定のリズム。
誰かがこちらへ向かっている。
それだけのこと。それだけの、はずなのに。
扉の前で、足音が止まる。ほんの一拍の静寂。
そのあと、扉が開いた。
ボスって書かれてますけど、修道士のリーダーみたいな人っていう認識でOKです。