テラーノベル
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ぶつかったって遠慮は無用だ
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山中 Side .
バスが動き出してしばらく。
騒がしかった車内も、だんだん静かになっていく。
「……眠い」
ぽつりと漏らすと、隣からすぐ返事。
「寝れば?」
「寝れない」
「なんで」
「……なんとなく」
本当は、隣が気になってるだけ。
そのままぼーっと外を見ていたら、ふっと肩に重みがかかる。
「え」
見ると、はやちゃんが完全に寝てる。
「ちょ……はやちゃん」
小声で呼んでも、反応なし。
「……自由すぎ」
でも起こすのも違う気がして、そのままにする。
しばらくして、今度は後ろから声。
「うわ、またくっついてる」
「最後までそれかよ」
振り返らなくてもわかる。
「静かにして」
小声で言うと、くすくす笑われる。
「彼氏守ってんの?」
「違う」
否定しながらも、肩はそのまま。
むしろ少しだけ、安定するように寄せる。
「優しー」
「はいはいごちそうさま」
また好き勝手言われる。
でも今は、それどころじゃない。
寝てる顔、無防備すぎる。
「……ほんとに」
小さく呟く。
「こういうときだけ静か」
そのまましばらくして――
「……柔太朗?」
不意に、寝ぼけた声。
「起きた?」
「んー……」
半分寝たまま、少しだけこっちに寄る。
「何してんの」
「何もしてない」
「ふーん……あったかい」
そのまままた目を閉じる。
「ちょっと」
「このままいさせて」
「……」
結局、何も言えない。
そのまま時間がゆっくり過ぎていく。
窓の外の景色が変わっていく中で、
肩に感じる重みと温度だけが、やけに残った。
「柔太朗」
また、うとうとした声。
「なに」
「帰っても、隣な」
少しだけ笑う。
「……うん」
小さく答える。
バスの揺れに合わせて、距離は変わらないまま。
修学旅行は終わるのに、
この関係だけは、たぶんここからもずっと続いていく。
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