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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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<凌太>


コーヒーのカセットをセットしてボタンを押すと、すぐに香りが立ち上がる。

いつものルーティンだが、今日はこれにかなりボリュームのあるサンドイッチが追加された。


昨日、オムライスで使った食材の残りを使ってサンドイッチを作って置いていったのだ。

食パンにマヨネーズで和えた卵とレタス、みじん切りの玉ねぎに薄くスライスしたにんじんが挟んである。

実に健康的ではあるが食べにくいので、昨日購入したパン切りナイフで二つに切った。


サンドイッチを頬張りながら一気に生活感が出たキッチンを見る。


悪くない


一緒に買い物をして

一緒に食事を作って

一緒に笑う


「自分が憧れる理想の家族」


きっとこういう事なんだろう。

そして、1番大切なのは好きな人と一緒だということ。



リビングに移動するとタブレットで電子版の新聞をチェックしてから、書類に目を通していく。


「ちっ」

タブレットに意識が行っていた為、スマホの着信に素直に応じてしまいつい舌うちをしてしまった。


『親に向かって何よ』


「親らしい事をしてもらったことは無いですがね。何か用ですか?」


『たまには家に帰ってきてよ。愛人の子がふてぶてしくて本当に頭にくる』


「あなたが倉片に戻ればいいんじゃないですか」


『何で私が。出て行くのは私生児の方でしょ』


「要件は?くだらない話が続くなら切るけど」


『真子さんとはどうなってるの?彼女なら甲斐にピッタリよ』


ふざけたことばかり言う。

「ピッタリとは没落寸前のお茶屋に甲斐が施しをする第二の倉片ってことですかね?実にくだらない。もう切ります」


『ちょ』


面倒になり途中で切った。


自分の息子の幸せを願わない母親か。

子供の頃は、そういうものだと思っていたが、今なら分かる。おふくろは何かに取り憑かれているとしか思えない。



すぐにまた着信が入ったから電源を落とした。


来週の土曜日に瞳と約束をしたから、タブレットでどこがいいか検索をした。




1週間が始まる。


仕事に忙殺されながらもどうしても気になる事があり甲斐Egに電話をかける。


事務の女性がワンコールで電話に出たため三島亮二を呼び出してもらった。


『に・・・専務、何かありましたか?』


一瞬兄さんと呼ぼうとしたのか中途半ばな受け答えになっている。

そもそもほとんど接触もないのによく俺を“兄さん”と呼べるのか、あのおふくろがふてぶてしいと言うくらいだから肝が据わっているのか、何も考えていないのか、ある意味羨ましくもある。


「飛び込みの営業をかけていると聞いたから、どれくらいの成果があるのか聞いてみたいと思って」


『あっ、もしかして松本さんですか?あれはたまたま近くに顧客がいたので、ダメもとであの辺りに営業かけてみたんです。でも、世間は狭いですよね』


「確かに世間は狭いな。(本当にそれが偶然なら)それで、飛び込みで受注は?」


『僕はまだまだだと痛感しました』


「そうか、それなら精進してくれ」

そう伝えて受話器を置いた。


母親から聞いた話では亮二は一度しかあの家に行ってないし、母親一人と話をしている。

それなら、松本ふみ子との接点は?

どう考えても、亮二と松本ふみ子は“偶然”で会ったわけじゃない。


一度、会って話をした方がいいのかもしれない。



金曜日の夜

商談だと言いながら目の前には複雑なカットのフルーツ盛りが置かれ、隣には露出が多めのドレスを身に纏った女性がカランと音を立てて水割りを作っている。


取引先の部長は俺に話をしながら隣に座る女性の膝をさすっていて、その部下という男は場を盛り上げようと色々と喋っているがスベりつづけている。


うんざりしているとポケットに入れてあるスマホが震え、見てみると瞳からのラインだった。

トイレに行くと席を立ってメッセージを見て息が止まるかと思った。



[今日の夕方、凌太の婚約者という沼田真子さんが会社に来ました]



急用ができた事を告げて秘書に連絡をした。


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