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さかな
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夜の移動車。
仕事終わりの空気がまだ残っていて、 誰も最初はあまり喋らなかった。
エンジン音と、流れる街灯。
佐野は窓側の席でスマホを見ていたけど、 だんだん瞬きが増えていく。
「……眠」
小さくつぶやく。
「寝たら?」 前の席から塩﨑が振り返る。
「いや、起きとく…」
そう言いながら、
三秒後にはもう目が閉じかけ ている。
吉田が笑う。
「身体は正直ですね」
佐野は反論しようとして、 途中で言葉が止まった。
こくん。
頭が前に落ちる。
「……あ」
次の瞬間、 車が少し揺れて。
佐野の肩が隣に倒れた。
——曽野の方へ。
曽野、固まる。
「……え、ちょ」
うとうとしたまま、 軽く寄りかかっている。
後ろから山中が小声で。
「起こす?」
「起こさんでええやろ」
即答
吉田がにやっとする。
「優しいじゃん」
「いや普通やろ」
そう言いながら、 そっと肩の角度を調整する。
揺れても頭がぶつからないように。
佐野の呼吸がゆっくりになる。
寝息まではいかない、 境目の静けさ。
塩﨑が小さく笑った。
「今日ずっと頑張ってたもんな」
誰も否定しない。
街灯が顔を照らして、 まつ毛の影が落ちる。
吉田がぼそっと。
「……かわい」
言いかけて止まる。
「今なんて?」 山中が聞く。
「いや別に」
でも視線は外さない。
佐野が少し動く。
「……ん…」
寝ぼけたまま、 無意識に曽野の袖を軽く掴む。
車内、静止。
曽野の耳が一瞬で赤くなる。
吉田が笑いをこらえる。
「離したら起きるやろ」
「……それは困る」
ぽろっと本音が出る。
一瞬、沈黙 。
山中が窓の外を見ながら言う。
「こういう時だけ甘えんのずるいよな」
誰も返さない。
でも否定する空気もなかった。
佐野は気づいていない。
車内の空気が、少しやわらいだことに。
少しして、 信号で車が止まる。
静かな赤信号 。
曽野が小さくつぶやく。
「……もうちょい、このままでええか」
誰にも向けてない声 。
でも誰も反対しなかった。
車はまたゆっくり走り出す。
佐野は目を覚まさないまま、 安心した顔で眠りかけていた。
車がゆっくり止まる。
「……着いたで」
運転手の声で、空気が少し動いた。
けど。
佐野はまだ寝ている。
曽野の肩に寄りかかったまま。
吉田が小声で言う。
「起こす?」
曽野、少し迷う。
「……もうちょい」
「甘やかしすぎ」
笑いながらも声は小さい。
赤信号の光が消えて、 車内灯がふっと点く。
その明るさで――
佐野のまぶたが動いた。
「……ん……?」
ゆっくり目が開く。
状況を理解していない顔。
ぼんやり視線を動かして、 真正面にあるものを見る。
近い。
近すぎる。
曽野の顔。
「……え?」
数秒、停止。
そして同時に理解する。
自分が寄りかかっていること。
距離、十数センチ。
「うわっ!?」
勢いよく離れようとして、 シートに頭をぶつける。
「いっ…!」
「大丈夫!?」 山中がすぐ手を伸ばす。
「だ、だいじょぶ…」
耳が真っ赤。
佐野、完全覚醒。
「ごめん!!寝てた!?俺!?」
吉田が笑いを堪えながら。
「結構な時間な」
「まじか……最悪……」
顔を覆う佐野。
その横で曽野は窓の外を見ている。
やけに静か。
塩﨑がニヤッとする。
「肩違和感あったやろ?」
曽野、間髪入れず。 「別に」
即答すぎる。
吉田がすかさず。
「ずっと動かんかったけどな」
「揺れたら起きるやろ」
「優し」
「別に」
佐野は状況を想像して、 さらに赤くなる。
「ほんとごめん…」
小さく言うと。
曽野がちらっとだけ見る。
「……謝ることちゃうやろ」
少し照れてる。
その空気に気づいて、 吉田がわざと明るく言う。
「ほら降りるよ〜」
全員が動き出す。
でも車を降りる瞬間、 佐野が小さくつぶやいた。
「……なんか安心してたわ」
誰に向けたわけでもない言葉。
一瞬、全員の動きが止まる。
聞こえたのは、 ちゃんと聞いてほしい人たちだけ。
曽野が先にドアを開ける。
「ほら、行くよ」
でも耳が少し赤いままだった。
夜風が入ってきて、 さっきまでの距離だけが 妙に意識に残る。
——誰も口にしないけど。
もう少しだけ、 あの時間が続けばよかったと 思っていた。
終始文おかしいですಠ﹏ಠ
温かい目で見てください(今更)
いいねありがとうございます‼️