この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
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目黒side
なぜ、こうなってしまったのだろうか。いつ、俺たちは道を踏み外してしまったのか。いつかの、彼のあの発言はどういう意味だったのか。そんなことは考える間もなく耳に飛び込んできたのは吐息混じりの君の声
『ねぇ、いって?』
あのときも、同じような言葉を言われた
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阿部side
いつからだろうか、彼が俺に対して何か特別な感情を抱いているのでは無いかと思うようになった。最初はほんの違和感から始まったものだったけれど、今となっては全てがその感情…所謂俺への恋心と言うものに繋がる鍵となっていた
「阿部ちゃん、今日一緒に帰れる?」
『ん?いいよ』
そんな状況でも、その彼の感情には気付かないフリをして一緒にいることを選んだ。でも、一線を越えては行けないからと線引きはしっかりとしていた。筈だった
「…告白のお断りの返事でさ」
『うん』
「俺は君にとってはいい人にはなれない、ってあるじゃん」
唐突に始まったそんな会話。話の筋が見えないと言うか、彼が何を伝えたいのかよくわからない話。今は恋人とかそういうのより仕事やメンバー、そしてファンのみんなを大事にしたい。俺には無縁な話だなんて思いながら口を開く
『あー、見せかけの優しさ発言。俺のためにはいい人になれないのかよ!ってツッコミたくなる断り文句ね』
「そう。それってさ、逆に言うと悪い人にはなって貰える可能性が残ってるのかな」
『んーあるんじゃない?都合のいい関係、ってやつ』
「ふぅん」
暫し沈黙が訪れる。要するに彼が何を言いたかったのかは、やっぱり俺にはわからなかった。突然そんな話を持ちかけてきたのは、きっと俺の事が好きだからなんだろうけど。もういっそ聞いて振った方が楽なのかな
『めめってさ、俺の事好きなの?』
「ん?え、なんで急に?」
『答えてくんないの?』
「いや、…だってさぁ、」
『言葉にしてくれなきゃわかんないよ』
言い淀む彼に若干の苛立ちを覚える。もうわかりきっていることなんだから、そんなにまでして隠さなくたっていいのに。彼の言動からもどうせいつかはバレるとわかっているんだし、もういいじゃん
『…ねぇ、言って?』
「…好き、だけど」
やっぱりそうだった。それが率直な感想だった。振ろうと思って聞いたのに彼自身の口から好意を告げられると、何故か嫌な気はしなかった。さて、この後俺はどうしようか
『そっか。…じゃあ俺とどうなりたいの?』
「どう、?難しいなぁ、なんだろう。特別が欲しいだけって言うか。俺は阿部ちゃんの特別になりたい、のかな」
『ふぅん、なるほどね』
どんな関係で、俺にどうなって欲しいのか。細かく言わないのも無理強いしてこないのも、めめらしいなと思った。それと同時に、この人のためにならいい人にでも悪い人にでもなってやれるかも。なんて考えが一瞬頭を過った
『俺ん家帰ろっか』
「…ん?」
『めめのために悪い人になったげる』
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寝室に着くや否や、有無を言わせず彼の肩を押してベッドに沈める。目線が交じり合うと、引き寄せられるようにどちらからともなく口付ける。数秒もすれば軽かったそれは段々と深いものに変わっていって、二人の境目が何処なのか自分達にもわからなくなるようだった
『…ふふ、かわい』
「っは…意外と強引だね」
『まあ、俺も男だし』
「それはそうか。…でも俺もさ」
声を上げるよりも先に彼の手が俺の腕を掴んだかと思うといつの間にやら俺は天を仰いでいた。彼の肩越しに見える窓の外は既に真っ暗。そこに浮かぶ、笑みを浮かべたときの口に似た形の月だけが俺たちを見ているようだった。
『…ぁは、人の事言えないじゃん』
「まあね。俺も男だから」
俺の腕は纏めて頭上で固定されてしまって、自由なんてものは殆ど無い。それでも逃げようとは微塵も思わなかった。ただ彼の噛みつくような口付けを受けて、それに応えるように甘く声を漏らすだけ。今はそれだけで良かった。それだけが、良かった
『ん…っふ、』
「…手、冷たかったらごめんね」
そんな言葉と共に忍び込んできた大きな彼の手は、俺の腹をじんわり暖めるようにゆっくり動く。さっきのキスとうってかわって、本質の優しさが消えきらないその行動から俺への気遣いと好意を感じる。なんだか少しだけ胸が痛かった。この関係が一番楽で、お互いの求めている形に一番近いんじゃ無いかと思っていたのに、それが途端に崩れた。正解がわからなくなってしまった
『んね、めめ』
「ん?」
『もっと触って』
わからない感情を抱えて、それを知らないまま甘えた声で彼を求める言葉を紡いだ。彼に触れられたところから火照る身体は、俺のものでは無いと錯覚してしまいそうになる。その感覚に目を瞑るように、余った方の彼の手に自身の指を絡めると握り返してくれた。その頃には、この健気な彼を汚してしまうことに背徳感さえ覚え てしまっていた
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目黒side
彼の唇の隙間から絶え間なく溢れる甘い声は俺だけしか知らないもの。その事実から芽生える独占欲を行動に変えて、彼の胸元に紅い花弁をいくつも散らした。彼に描いた俺の印は数日もすれば消えてしまうんだろう。まあそうなればまた付ければいいか、なんて
『ふぅ、…ぁ、♡ん、?…ねぇ、これ、』
「ん?あぁ、つけちゃった」
『つけちゃった、じゃないのよ、笑』
「ごめんごめん笑」
見えたらどうすんの、とかなんとか言いながらも嬉しそうにその印を撫でる彼の心境は、如何なるものなのか。きっとその笑みは恋情からではないんだろうけど嫌がられていないのであれば別に何でもいい
『はぁ…っ、めめぇ?』
「なに?」
『もう終わり?』
強請るような目線を送りながら片足を俺の腰に回して引き寄せる彼はあのMVを撮っていた時よりも数段色っぽく見えた。瞬きもしないで俺を見詰めるその瞳には、喉元まで上り詰めた情欲を必死に抑える獣の姿が映っていた。へぇ、俺ってこんな顔出来たんだ
『…?!ぅ”、っあ、?♡きゅ… に、動かな、ぁ…♡』
「質問の返事、してるだけだけど」
意地悪く微笑んで律動を早めていくのに比例して彼の声も上ずっていく。自分の声を聞きたくないのか強く噛み締められている唇を親指で優しく撫でると、力が抜けたのか隙間が出来てそこから抜ける息が指をふわりと包んだ
『ふぁ……っん、…めめ、きす、』
「キスして欲しいの?」
『ん。してくんないの?』
唇の上にあった手をそのまま頬を包む形に変えて、触れるだけの口付けを落とす。唇同士が触れる直前に彼の長い睫毛が伏せられているのが見えた。逃がすまいとでも言うように、彼の腕が俺の首の後ろに回される
「…っは…ぁ、やば、」
『…ふふ、めめこれ弱いよね。キスもこっちも両方ってなるとやっぱ違う?』
「…んや、阿部ちゃんが可愛くて、」
『え、そういう、?』
当然の事ながら彼の行動一つ一つから得られる快楽は十分大きい。だけど慕情のせいでその刺激が何倍にも膨れ上がって体内に蓄積していっているのを、自覚するより先に彼に気付かれてしまっていたみたいだ
『俺の事好きなんだもんねー』
「…そうだねぇ」
本来は恋人になってからしたかった行為に、メンバーと言う関係のまま手を出してしまった。それでも俺は彼が欲しい、どうしても手に入れたい。彼の心も身体も未来も、何もかもを永遠に奪い去ってしまいたい。相変わらず身体では俺を求め続ける彼を視界に入れる。俺の手によって汚れてしまった彼はとても美しかった
『何、余計なこと考えてんの』
「阿部ちゃんの事しか考えてないよ」
きゅ、とまた中が締まる。俺が彼の全てを欲しているように、彼も俺から何かを搾取しようとしているんだろうか。小さく声を漏らすと彼は嬉しそうに目を細め、その艶やかな唇は俺の耳に影を落とした
『ちゃんと、俺で感じてる?…目の前に居るのは俺だって、わかってる?』
結局その言葉の真意はわからない。この言葉だけじゃなくて、彼の何もかもが俺にはわからない。だけどそれを彼に伝える必要はないし、俺がわからなければいけないと言う義務もない。だからこのままでいい。よく理解もせぬまま、彼の問いかけに頷いた
『んは、良かったぁ、』
その笑顔が愛おしくて、改めて守りたいと思った。一度でもこんなことをしてしまえばそれは叶わないに等しい話なのに。考えても仕方がない事ばかりで頭が埋め尽くされる前に、いつの間にか止まっていた腰を再度動かし始める。そうすると無駄なことを全て忘れられて良かった。不意に、彼の声が耳に入る
『ねぇ、イッて?』
ART/Ryohei Abe , Ren Meguro
from snowman
コメント
10件
やばい…ARTだ…🤦🏻♀️🤦🏻♀️🤦🏻♀️🖤💚
ほんとに最高です。 お互いがちょっと戦略かで、上回ろうとするとことか(?)
ちょうどART聞いてる時に読ませていただきました、本当に最高です...😭😭✨