テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
54
42
16,394
世界が滅ぶのは、案外静かな音なのかもしれない。
誰かがそう言っていた。
昔は火薬で戦っていたらしい。
けれど今は違う。
人々は誰もが魔法を使える。
火を灯す魔法。
傷を癒やす魔法。
空を飛ぶ魔法。
それらは人々の生活を豊かにした。
だが、文明が発達すればするほど、人はそれを兵器へと変えていく。
一人で都市を焼き払う魔法。
数千人の命を一瞬で奪う殲滅術式。
空間そのものを引き裂く禁術。
魔法は希望ではなく、殺すための道具になった。
そして――世界戦争が始まった。
終わりの見えない戦争。
国は勝つためなら何でもした。
大人だけでは足りない。
だから子どもたちを育てる。
「国のために命を捧げることは、最高の名誉だ」
そう教え込む学校が生まれた。
戦場へ送り出すためだけの学校。
卒業すれば即出征。
生き残ればまた次の戦場へ。
戦い続け、戦い続け、戦い続け――。
命が尽きるその日まで。
誰も卒業後の未来なんて語らない。
未来がある人間など、ほとんどいないから。
そんな学校に通う高校二年生。
LAN。
魔法は苦手。
成績は平凡。
戦争も嫌い。
けれど、この国ではそれを口にすることは許されない。
「戦場に行けるなんて羨ましい。」
「英雄になれる。」
「国のために死ねる。」
周りはそう笑う。
らんだけが、その笑顔を理解できなかった。
命は、そんなに軽いものなのだろうか。
今日も訓練場では誰かが倒れ、誰かが拍手を送る。
その光景に胸が苦しくなる自分は、この学校では落ちこぼれだった。
そんなある日。
一人の転校生がやってくる。
透き通るような水色の髪。
どこか儚げな笑顔。
そして、誰もが息を呑むほど圧倒的な魔法の才能。
彼の名前は――**こさめ。
初日の実技試験で、歴代最高記録を塗り替えた天才。
教師たちは歓喜し、生徒たちは憧れた。
「きっと英雄になる。」
「最前線でも生き残れる。」
「国の誇りだ。」
そんな声が飛び交う中、本人だけは困ったように笑っていた。
そして、その日の夜。
寮の部屋の扉が開く。
🦈「今日からよろしくね。ルームメイト。」
そう言って笑ったこさめに、
らんはまだ知らなかった。
この出会いが、自分の世界を変えることを。
命を捨てることが当たり前の世界で。
明日が来る保証なんて、どこにもない世界で。
終わりへ向かう世界で。
世界が終わる、その日まで。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!