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それから一年というのは早くて
清右衛門は最高学年の六年生に 、
喜八郎はひとつ上がって三年生になった 。
六年生になった清右衛門は
委員会では特に変わりげもなく普段どうりに
超鬼畜な訓練を行っているものの
やはり最高学年ということもあり卒業に向けて
実習やらなにやらと委員会で休むこともあれば
何日間も学園に戻らないなんてザラだった 。
もちろん 、愛しの弟である喜八郎とも
会う時間が格段に落ちていった 。
喜八郎だってもう三年生でそろそろ城に関しての
座学の授業も始まった頃だろうか。
実習自体は四年生からだけれど 、
その授業に関してのお使いなどで外へ行くのは
三年生からなのだ 。だから清右衛門は この頃
少々神経質になっているのではないかと思う
でも 、一方喜八郎はどんどん成長していった
学園に入って特段に上達していく罠技術 。
それによって三年生で最も早く
「天才的トラパー」と呼ばれるようになった 。
感性のまま動き思うままに掘っていく 。
彼の専業特化は穴掘りだけれど 、他の罠だって
伊達なものばかりじゃない 。
見た目に関しても
ふんわりウェーブかかった髪は
一度も切らずに背中まで届き 、
日焼けを知らないような真っ白すぎる肌 。
その浮世離れする顔立ちでくのいちやにんたま達、
街へ出ればその人々までが虜になることなんて
日常茶飯事で平や田村は頭を抱えた 。
だが 、ひとつ喜八郎について分かったことは
とてつもない問題児野郎だって事_______
「こんっっのアホ八郎ーーー!!!!!」
とんでもない声量で喜八郎と思われる渾名で
呼ぶのはいつも彼の同室の滝夜叉丸で
今日は合同授業の日だったため 、
ちょうど出てきた喜八郎とともに門まで
行こうと誘えば 、珍しくいいよと返ってきた
いや 、珍しくもないな 。
普段はあの忌々しい平滝夜叉丸が
何故か割って入りわざわざ断ってくるのだから
楽しく話をしていれば 、ヤツは前記のように
耳が割れるほどの声量で廊下を逆走してきた
「…..三木 、たすけて」
『はは 、断る』
「えー」
呑気に間の伸びた声を響かせて喜八郎は
その怪獣の元へ歩み寄った 。
その瞬間 、ガシッと喜八郎の肩を両手で掴んだ
滝夜叉丸は肩を上下に揺らしやや興奮状態で言った
ほんっとうに 、コイツは
私を怒らせるのだけは上手いんだな
「この馬鹿野郎!!私が何度忠告したと!!」
「この男だけはよすんだ!!」
「滝いたいよー」
「真面目に聞きやがるんだ!!
何もされてないか?そもそも何故いつもいつも
お前は私の傍から離れる!?!?!!!
この容姿端麗成績優秀………..」
『コイツ 、殴っていいか』
「やっちゃえ三木」
「なにッ?!!」
『残念だな滝夜叉丸 、
喜八郎からのお願いだからな』
「ちょ 、待て三木ヱ門….うわぁッ!」
『日頃の恨みここで晴らさねばァ!!』
なんて 、言いながら廊下を走り追いかければ
随分と遠い場所からはおやまぁ。と一声が聞こえる
実習に行く前からボロボロの私たちをみて
先生は少々肩を落としたが 、辺りを見渡して
「綾部はまだ来てないのか?」とおっしゃった
「 「 あ 」 」
「キサマなんで喜八郎を置いていった!?」
『何を言うか!お前が逃げるからっ!!!』
「喜八郎はどこに行っているのだ!!
まさか 、穴掘りに行ってないよな??」
『あー 、それは面倒だな 。』
なんて思いながらも内心は心配していたため
もう少ししても来ないなら探しに行こう 。
そう思っていれば 、「おーーい!!」とコイツと
負けないくらいの声量で
こちらへ猛進してくる奴がいた 。
「….ん?あれは 、、、」
そう言った瞬間 、先程まで遠くにいた人影は
目の前まで近づいていた 。
「いけいけどんどーーん!!!!」
「お届け物に来た!!!」
確かこの人は 、五年ろ組七松小平___
「七松小平太先輩!!!それに喜八郎も!!」
『….滝夜叉丸貴様…..』
「なっ 、なんだ!?なぜ急に怒る!?!」
彼の尻に蹴りを入れ 、その七松先輩と向き合った
『喜八郎をどうもありがとうございます 。』
「おう!….ところで 、滝夜叉丸は平気なのか?」
『えぇ 、どうせすぐ起きます』
「どうせとはなんだ三木ヱ門!!」
『言って通りでしょう?』
「なはは!!お前らは仲がいいな!」
「 「 仲良くないです!!! 」 」
「 「 なッ真似をするな!! 」 」
「アハハ!!なんだ喜八郎 、
心配する必要なんてなかったな!!」
「おやまぁ 、そのようですね」
『…..心配??』
「ああ!さっき喜八郎がむぐっ….!」
「せんぱーい 、内緒って約束ですよ〜」
「おーそうだった!!すまんな!ふたりとも!!」
「…….気になる 。」
『…..だな 。』
その後は 、中在家先輩がやって来て
喜八郎の頭をひとつ撫でては
七松先輩の首根っこを掴んで連れ帰ってくれた
授業内容は 、来年の実習に向けてのお使いだった
それは 、化粧道具を買ってくる 。
というお使い
四年生でまず最初に行うのは 、
女装して町へ出かけ 、町人にお団子を奢って貰う
という内容の実習で 、
なぜこの私が女装せねばならんのだと思う 。
でも 、これは忍びの身としては
必要不可欠な実習らしい 。
だからそのためにはまず 、
男と悟られないように化粧をすること 。
だから 、今から化粧について知恵を持ち
実際に化粧の練習をするというのが
三年生までの授業内容だ 。
だから 、そのために今日私たちは町へ行って
化粧道具を買わねばならなかったのだが 、
喜八郎はすぐ居なくなるわ 、滝夜叉丸は
お世辞で言った店の人の言葉を真に受けて
自慢話を始めるわで頭痛が止まらなかった
お目当てのものを買ったことで 、
帰ろうとなった頃 、喜八郎がひとりの男に
言い寄られてしまったのだ 。
「ふふ…きみ 、可愛いね 。
本当に男の子なのかな?俺に証明してよ」
なんて言いやがった 。
喜八郎は気付いているのか分からないが
私達は理解ができた 。
つまりは喜八郎の陰部が見たいだけ 。
ご丁寧に腕まで掴んじゃって 、
喜八郎が顔を歪ませてるじゃないか 。
『すいません 、お兄さんも疑っちゃいますよね
でも本当に男なんですよ〜〜笑』
「なので 、“ 証明 ” とやらはできませんが 、
どうぞご贔屓のほどお願いします〜」
私は喜八郎の手を引き 、
滝夜叉丸は男の肩や腕を掴み話すよう促した 。
そうすれば男はチッと舌打ちをして
どこかへ行ってしまった 。
「…..ありがと三木 、滝夜叉丸」
そう素直に感謝をもらうものの
その可愛らしく上目遣いをしてみせるその姿に
自然と頬が緩んでいくのがわかる
「……お前 、何笑ってるんだ。気色悪いな」
『は??ふざけんなこのアホ夜叉丸!!』
そう言ってまた喧嘩がはじまり仲裁する喜八郎を
挟んでその日は無事に学園に帰れたのだった 。
今回の授業の課題は難なく達成 。
だが 、この喜八郎なんぱ事件は絶っっったいに
喜八郎のお兄様である桜木先輩には
知らせてはならないと滝夜叉丸と約束した 。
そうしたはずなのだが__________
『おい 、なに言ってくれてんだよ滝夜叉丸!?』
「い 、いやぁ….この私の勇敢すぎるあの行動と
心を鷲掴みするあのお言葉を是非とも先輩に
お教えしたくて気付いたら喋ってしまった☆」
「いい加減にしやがれこのバカヤローー!!!」
そう言って 、長屋のど真ん中でヤツに
愛しのサチコを向けた 。
「なんだ 、楽しそうじゃあないか」
「田村 、滝夜叉丸」