テラーノベル
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⚠注意⚠
死ネタあり
なんでも許せる人のみ
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警察無線の声が、どこか遠くから 響いてくるようだった。
「異臭の元はこの建物だと思われます」
「確認急いで」
その言葉に、いるまは、
やっと身体を起こした。
「ああ……もう、だめかもな」
笑う声は、かすれていた。
玄関に近づけば、
誰かが階段をのぼる音がする。
けれど、それよりもなによりも――
なつのためにやらなきゃいけないことが
ある。
「……なつ、おまえのこと、
誰にも見せたくないんだ」
そう言って、窓を塞ぎ始めた。
空気の流れを止めるためじゃない。
誰にも、なつの最期の姿を
見せたくなかった。
部屋の中央に、なつの遺体を横たえ直す。
もはや顔はほとんどわからない。
それでも、いるまは頬にキスをした。
「……大丈夫、俺が焼いてやるから。
ぜんぶ、俺が責任持つから」
押入れから、キャンプ用のガスボンベと
小型バーナーを引っ張り出した。
ずっと前、なつと後メンバーだったやつとキャンプした時の残りだ。
火元に灯油と古布をセットし、
ガスの口を開ける。
あとは点火するだけ。
玄関のドアが**ドンッ“!**と叩かれる音。
「警察です!開けてください!」
でも、いるまの耳には届いていない。
「お前の全部、俺が焼く。
骨も、灰も、匂いも、思い出も――
俺の中に閉じ込める。 これでいいよな?」
震える手で、
ライターをカチリと鳴らした。
青白い炎が、古布に移り、
じわじわと広がっていく。
その光の中、なつの身体が、
ゆっくりと、静かに、色を変え始めた――
いるまは笑った。
目元は涙で濡れていたけれど、
口元は穏やかだった。
火は、もう床を這って広がっている。
やがているまにも火が行き渡り
燃え落ちる。
けれど彼は慌てなかった。
なつの隣に、すっと寝転ぶ。
腕を伸ばして、その焦げ始めた頬に触れた。
「こんなに、愛してたんだ。
だから、俺も……」
「なつとお揃い……だな。
やっと、同じになる」
なつの焼けている髪を撫でる。
焦げた匂いさえ、懐かしかった。
「もうすぐ……会えるな」
天井が崩れ始める音と、
遠くで叫ぶ警察の声と、
肌を焼く熱と、
なつの幻が、微笑んで手を伸ばしてくる。
「なつ……ただいま」
腕を伸ばして、その幻に触れようとした
瞬間――
全てが、白く、溶けた。
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最後までこの物語を見守ってくださり
有難うございます。
結局なんでなつはいるまを生かしたのか
なんで2人で心中しようなんて
言い出したのか。
でもあの世でたぶん2人は幸せに
再会してると 思います。
次の物語に期待してください。
コメント
2件
一気読みさせていただきました! なんか…こう…あの…言葉が出てこない゛ぃ゛ でも、神ってるってことだけは分かりました!