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注意 らむてる 飴村乱数×愛心流月

月が綺麗ですねの意味はきっとみんな知っている。雨止みませんねの意味は詳しい人なら知っている。肌寒いですねの意味も。きっと詳しい人なら、まっすぐ言うのが苦手な人は知っているだろう。

雨が降る中ただその音に耳をすませ乱数はただ1人の女性を抱きしめていた。

温かくまるで子供のように体温が高い、揺れる手入れのされた青い髪は何よりも深く愛しく感じるものだった。乱数は知っている今抱きしめている誰よりも愛しい人が真っ直ぐな言葉を伝えるのが気恥ずかしく苦手でいつも遠回しで花言葉など些細なことで気づかせようとしてくれる相手だと。基本誰にでも敬称付け気品のある行為をする。それでも自分にだけは少しだけ甘えてくれて恥ずかしがる素振りを見せてくれることも。

強く、そしてどこか弱い抱きしめ方。触れようとすればそれは脆くすぐに壊れてしまいそうな震える腕をしていた。

(また細くなってる……)

食べていないのか前よりも痩せている気がした。長袖で隠していても分かるくらいにはだ。乱数は抱き締めればサイズはどれくらいか分かるくらいすごいデザイナーだ。抱きしめられた時点でもう分かっていただろう。顔色が悪く震えている彼女を見ていたたまれなくなった。

「寒いの?」

「いいえ」

泣きそうな震える声。流月はいつもそうだ。俯いていて乱数がどう思っているかを勝手に考えて思い込む。良くないくせだと教えても彼女は優しいからきっとどこかで遠慮をして離れようとする。その度に乱数は手首をつかみ引っ張ってすくいあげる。大丈夫だと知らせてあげる。その度に泣く流月はただの子供だった。

「飴村さん」

「なーに」

しゃがみこんでしまった流月に乱数は合わせてしゃがんでまた上から腕をかぶせ抱きしめてあげる。力が無くなったからなのか流月は乱数に抱きしめ返すことはしなかった。

ただただ冷たい雨の中感じる流月の温度は温かく乱数は抱きしめることしかできないことを申し訳なく思っていたことが温かさで和らいだ。同時に伝えたくなったのだ。雨宿りもせず共に濡れている彼女へ、「愛してる」と。だけど伝えても欲しかった。どれだけ流月が乱数を愛しているのか1番知っているのは乱数だった。流月は思った以上に乱数を好いてだからこそ離れようとする。

「飴村さん」

「うん、ここにいるよ」

背中をさすり服が汚れてしまうことも考えず、地面へ膝を落とした。君が満足するまでここにいるよという意味を込めて背中をずっとさすった。

「飴村さん、肌寒いですね」

肌寒いですねの意味は抱きしめて。

「そうだね」

そう言いながら抱きしめた。

「っ!」

流月の綺麗な目から涙がずっとこぼれ落ちる。乱数の胸に顔を押し当て更にシャツを握りしめている。乱数はいいよというように頭を撫でた。すると嗚咽が聞こえてきて、さらに頭を撫でてあげた。愛おしく壊れ物を扱うかのように、優しく愛をこめて。

大好き

伝えたかったんだ。その一言を。すると流月は口を開き乱数の名前を呼んだ。

「飴村さん」

「なーに」

「雨、止みませんね」

もう少し貴方のそばにいたい。

「いいよ、ずっと一緒にいてあげる」

少しと言わずこれからも一緒にいて欲しい。きっと2人の思いは同じだった。

抱きしめて、力強く、もしかしたら流月の骨が折れてしまうかもしれないくらい。

その後は屋根がある場所へと場所を移した。きっと風邪をひくだろう。

どれくらいか経ったあと、流月は乱数の肩に頭をストンと置いていた。心地よかった。雨でびしょびしょで服が肌に引っ付いて少しだけ気持ち悪いのに。不思議だった。それを急にやめて立ち上がった。それに驚いた乱数は流月の名前を呼んだ。

雨は止んでいた。

時間は夜で夜空が綺麗だ。満月がちょうどよく見える。

「雨、止みましたよ」

はにかんだ笑顔だった。それだけずっと繊細に覚えている。

「月が綺麗だね」

「それは……」

流月は俯き黙ってしまった。どうしたのと聞こうとした時、流月は言葉を発した。

「裏側が見えないからですね」

泣きながら笑っていた。乱数はその意味を知っていた。返し方ななんとも流月らしかった。

「私はあなたが思っているほど綺麗じゃない」そう伝えたかったのだろう。安心して欲しかったのか言葉より先に手が動いていた。ゆらゆらと流月に近づき抱きしめた。

先ほどとは打って変わって冷たかった。冷えていた。

「見えてるよ、僕からは」

「……そうなんでしょうね」

「綺麗だよ、流月がそう思ってなくても」

抱きしめて、その後にキスを落とした。満月の下で雨で濡れてさえいなければさらにロマンチックだろう。でもそんなことは関係なかった。

「お家に帰ろう」

流月は少し驚きを隠せず固まっていたがその後にしょうがないですねと言って手を繋いでくれた。

「明日は晴れますか」

月が綺麗ですねと同じ意味だと乱数走っていた。

「うん」

笑って返した。彼女がまた不安にならないために。

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