私の名前は橋宮琴音。月兎学園に通う中学1年生だよ。実は今日、転校生が来るんだって!
クラス中転校生の話で盛り上がってるの。芽衣もずっと
「女の子かな?男の子かな?男子だったらイケメン来てほしい!」
って言ってて、私は苦笑いをしながら
「そだね…。」
と返事を返す。まぁ興味はないから流してるけど…。
♪ーー♫ーーーー♬
チャイムがなってみんなの話声はなくなり、先生が教卓の前に立った。
「今日は転校生が来る。入ってきて良いぞ。」
静かに扉が開くと、みんな騒がしくなった。
紫がかった黒髪に、茶色の瞳。息を飲むほどかっこいい彼はお人形みたいに顔が整っている。
私は思わず
「…かっこいい」
と言っちゃった!
慌てて手で口を覆ったけど幸いみんなには聞こえてなかった。
先生が黒板に字を書いているのに気づいた。黒板には『月宮雫』と書いてあった。
「じゃあ月宮さん。自己紹介をしてください。」
先生が言うと彼は口を開いて
「月宮雫です。わからないことは教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。」
雫はペコリと頭を下げた。拍手と歓声が飛び交うなか先生が悩みながら
「席は…。丁度琴音の隣があいてるな。雫、面倒見が良い奴だからわからないことがあったら琴音に聞くと良い。」
「はい。わかりました。」
…え?
ちょちょちょ、ちょっと待って!聞き間違えだよね。聞き間違…。
どうやら本当のようだ。雫は席に座ると愛想なく
「よろしく。」
と言う。
近くで見ると本当に整っている顔立ちだなぁ…。
まぁ私は恋愛禁止だから無縁だな…。
私はあることがきっかけで恋愛禁止なんだ。
実は親友で信頼している芽衣にも言えない秘密があって…。
♪ーー♫ーーーー♬
チャイムが鳴り、一瞬で教室が騒がしくなった。
そんな中、芽衣は目を輝かせてこちらに向かってきた。
「そーいえば見た?これ。」
と言って芽衣はスマホを見せてきた。
私は思わず動揺した。
「あー…。最近人気らしいね…。」
「そうそう!私の推しは…。」
芽衣がスマホをスライドして見せたのは…。
「絶対的センターの寿琴乃(ことぶきことの)ちゃん!」
薄ピンクの髪の毛で目は黒色のアイドル。
ガタッ
「トイレ行ってくるね!」
そう言って急いで現場から離れた。
誰にも言えない秘密。それは私がアイドルだってこと。
琴乃って言うニックネームで活動していて責任重大のセンターをやってるの。
今の私は黒髪だけど、実はカツラ。
だから多分正体はバレないと思う。
「何してんだよ。」
「ひゃあっ!」
後ろには雫が立っていた。
「何かわからないの?」
彼は首を横に振った。
「ちょっと来て。」
手を引っ張られて人がいない場所に連れてこられた。
「ど、どうしたの?」
そう言ったら急に髪の毛を引っ張ってきた!
カツラだから痛くはないけどこのままじゃ正体が…!
抵抗しようとしてももう遅く、カツラが取れちゃった…!
「やっぱり…。お前寿琴乃だろ?」
その言葉を聞いた瞬間背筋が凍ったように冷たくなった。
「なんでわかったの?」
なんで正体が…!
《1話終了》