私は一般的に言う「不細工」という部類なのだろう。
目は一重で糸のように細く、鼻だって大きくて低い。たらこ唇に二重アゴ…小さい頃からずっと顔面コンプレックスだった。
この顔のお陰で虐められた事もあれば同情される事もあった。周りの美女達は揃って私の顔を見れば苦笑いをする。そんな周りに対し、常に嫌気がさしていた。
今日もいつも通り授業を受けようと教室に入る。ドアを開けると、クスクス笑う男子達に、辞めなよ~とかほざきながらもニヤニヤしている女子達だった。まぁ、知っていたが。
そんな中、モデルと言われても疑いの目を持たれないような学年一の美少女が声をかけてきた。
「あなた、綺麗な目をしてるのね」
正直、嫌味かと顔をしかめた。
慣れていた。常に言われていたから。
『なに、?嫌味?」
「嫌味なんかじゃないの。本当に、ただあなたの目が、羨ましい。」
意味がわからない。美少女が不細工に綺麗なんて言葉、言うわけが無い。幼い頃から綺麗な顔を鏡越しに見てきた人達には分からないんだろう、この感情は。
『あのさ、ふざけてんなら辞めてくれない?正直、あんたみたいな美少女に綺麗なんて言われても腑に落ちないの。』
「腑に落ちなくてもいい。私はあなたの目が綺麗と思っただけ。貴方が納得しようがしまいが私は思ったんだから。」
うざい。なんなんだこの女は。
私を何も理解していないくせに。黙ってほしい。消えてくれ……
そんな思いを一日中募らせていたせいで、授業は終わり、気づいたら家の玄関に立っていた。
その事に気づいた瞬間、私は洗面台へと走って向かった。鏡と向かい合い、薄い目をこれでもかと言うくらい手で広げた。
勿論、少し茶色味のある目に黒い瞳孔が浮かんでいるだけだった。
嫌になった。あいつが綺麗なんてのはただの嫌味で、本当はそこら辺の人と変わらない目なんだ。何期待してたんだろう、バカバカしい。
嫌悪感に耐えれなくなって私はキッチンから持ってきた包丁を鏡越しの自分に強く突き刺した。丁寧に、両目を狙って。
鏡にヒビが出来、飛んできた破片で手を怪我して赤黒い液体と鏡の自分が混じりあった。
何回も、何回も突き刺して。
鏡は割れて原型が無くなるくらい夢中で刺し続けた。
鏡の世界の私はとっくに居なくなっていて、現実世界の私は汗と涙が混じったモノを流していた。
怪我なんて痛くも何ともないのに、目からは塊が流れ出してくる。
「あなたの目、綺麗ね」
憎たらしいアイツの声が頭に響いた。
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