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【Side】江入アン
まずい。最っ高にまずい。
あたしとギルと、平次が居るからまだマシだけど。
でも、この状況、最悪だ。
「全員、連絡の取れるものを床に置くんだ!!」
携帯を床に置くと、黒服の男が回収しに来る。
やばい。連絡手段を取られた。
でも、これで記録には残らない。
今、この場にレオも、シャルルもマキもいない。
この場にいて、動けるのって。
でも、どうしよう。
こんな大人数がいる中で、あたし達は動けない。
どうしよう。どうしよう。
ジジッ
耳につけたエメラルド色のピアスからノイズが聞こえる。
― 落ち着くんや、ナノちゃん ―
隣りにいる、ギルの声。
今のギルの声は、人を落ち着かせる時の声だ。
そうだ。落ち着いて。
あたしは今、最適な行動をする。
ブーブーブー
着信音が鳴り響く。
誰のかはわからないけど、ナイスタイミングだ。
「誰だ!! この携帯の持ち主は!!」
待って、あれ、あたしの携帯だ。
「それ、あたしの……」
「スピーカーモードにして、電話に出るんだ。変なこと言ったら、お前の脳みそが飛ぶと思え」
そう言って、黒服はあたしに拳銃を向ける。
電話の相手は……レオだ。
レオなら、助けを求められる。
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【Side】セオ
「えっと、セオ君……そんなところで立ってなくても……」
毛利探偵事務所の壁にもたれかかり、携帯を触るセオ。
なぜセオがこの場にいるかというと――
「お父さんの事件解決が見たいって、なんか、瑛祐君みたいだね」
「瑛祐?」
そう言って、また目を閉じる。
今度は、一分ほど経ってもまだ目を開かない。
でも、すぐに目を開いて言う。
「誰だ? それ」
「前、クラスにいた男の子よ。その子も、セオ君と同じようにお父さんのファンだったんだよ」
セオは、蘭のお父さんである毛利探偵の推理を生で見たいという理由で、この場にいるのだ。
「セオ君って、今日は予定とかないの?」
するとセオはしばらく考えたあと、誰かに電話をかけた。
「――あ、アンか? 午後、そっちに行こうと思うんだが」
― えーっと、うん、大丈夫 ―
トントントン ツーツーツー トントントン
電話の向こうから、張り詰めた空気と、アンの元気そうな声が聞こえる。
「なぁ、アン。なんか、変な音しないか?」
― た、多分、外でなんかやってるからだと思う ―
トントントン ツーツーツー トントントン ―
「……わかった。また後でかけ直す」
― え!! ちょっと待って、セオ!! ―
ピッ
そう言って、アンの言葉も聞かずに、セオは電話を切った。
「……SOSのモールス信号か」
大阪で、アンがレオと呼んだ相手は。
藍色の髪にサファイアのような瞳の。
セオのことだった。