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やばいですほんと、やばいくらい泣きました笑 本気で感動したしハピエンの方でもちょっと泣いちゃいました笑本気で好きですありがとうございます😊
ぱっと目が覚めた。俺は死んだはずではなかったのか、何故身体が動く、意識がある。ここは夢の世界か?少し考えて気づいた。きっとここは天国だ。俺は不思議な死者の世界で電車で色々な場所を巡り昇天したんだった。この世界は何も無い場所で思い描いていた天国とは程遠い場所だ。辺りを見渡していると頭の中から話しかけられた。
(目覚めましたか?よく眠れたようですね)
声を発せず直接頭から語りかけられた。誰だ、と低い声で警戒する。
(ふふっ…そんなに怒らないでください。私は貴方に提案をしたいのですよ)
「提案?今から天国行きか地獄行きかの話か?そんなの地獄に決まってるだろ」
(何故そんなに悲観的なのですか?)
何故って、そんなの最愛の弟を自分の手で殺めてしまったからだろ。それ以外にも嵯牙の構成員として数え切れない悪行をしてきた。そんな俺が天国に行っていい訳がない。
(確かに貴方は許され難いことをしました。ですが、それと同じくらい報われませんでしたね。貴方は弟さんの為に一生尽くして生きていたというのにあまりにも残酷な運命でした。そこで私は天国の使いとして、貴方にひとつ希望を与えます。)
「希望?」
見えもしない存在に眉に皺を寄せ疑う。本当のことを早く言って欲しい。どうせ嘘だ。こんな話信じる方が難しい。
(そうです。今からまたやり直し、弟さんと素敵な人生を歩めたら貴方を天国に連れていきましょう。逆にまた同じように悲惨な運命を辿ったら問答無用で地獄行きです。)
「待ってくれ、やり直すってなんだ?また一から人生を生きろってことか?」
(いいえ、貴方と弟さんが奇跡的に死んでいなく、嵯牙が無くなった世界線です。本当は2人とも死んでいるのですが神の力で世界を動かししたんですよ。)
ゆっくり穏やかに喋り、語気が柔らかいのでイラついてる俺が馬鹿みたいに感じた。つまり、現世に戻り俺の手でシャークんを幸せにすればいいのか?しかし神の力とはふわふわしてる割にご都合能力で力技だ。
(そうです。貴方の手で幸せにするのです。ただし条件があります。“100日以内で達成出来ないと貴方は死にます“)
「は?そんなすぐにできるわけないだろ!」
思わず声を荒らげてしまった。ただふざけてる。100日なんてすぐに過ぎてしまう。それに仮に戻ったとしても100日しかシャークんと居れないなんて少ないだろ。
(貴方の可哀想な生い立ちと悪行をいい具合に合わせるとこれで限界です。ですが、100日以内で幸せに出来たら一生弟さんと暮らせますよ?出来なかった場合は地獄に行きますが…)
「…それは嘘では無いんだな?」
(はい。神に誓って本当だと言えます。)
深呼吸をして自分を落ち着かせる。冷静に考えたら弟にも会えて、上手く行けばこのまま暮らせるのは悪いことでは無い。あの時の二の舞にならないように慎重に行けば思い描いていた未来が現実になるかもしれない。それならやらない選択肢以外ない。
(…答えは出ましたね?)
「あぁ、もう一度やり直させてくれ。」
(いい返事です。しっかり全うしてきてくださいね。それとちゃんとこの世を楽しむんですよ?)
そう神は言うと、突然眠気が襲ってきて意識が遠のく。自分はもう生きて良い人間じゃないと思っていたが救いがあるもんなんだな、と感心した。神は本当にいたんだ。微かな意識の中で身体が粒子になって消えていくような気持ちがした。
ぱっと飛び起きると、そこは見慣れた自宅の天井、布団に家具の数々。あぁ、本当に戻ってきたのか。遥か遠い未来って訳でもない変わらない現世だ。ひとつ多い布団を除いて。恐る恐る布団を捲ると、神秘的なオーラを纏っている様ひ輝いて見える人が居た。最愛な人。一生賭けて護る筈なのに最悪な運命を歩んでしまった人。
思いがけずに視界がぼやけてしまったのですぐさま右手で顔を覆う。本当に生きてる。呼吸をし、すやすやと寝息をたてながら幸せそうな顔をして寝ている。それだけでもう十分くらい来たかいがあった。
ぱちんっ!と頬を叩き、フッー、と息を吐いて立ち上がる。顔を洗う為に水がめへ向かい、着替える。俺が幸せにしなければ、護ってあげなければ。
サングラスをかけて寝室に戻ると、寝起きで目が開けられなく、背中を丸めながら頭をかいてる愛おしい姿がそこにあった。思わず膝から崩れ落ちてしまった。動いてる、生きてるそれだけで涙が出そうになってしまってる。
シャークんはそれにビクッ!として身体がピンとなった。
「誰?あとここどこ?」
「あぁ、ごめんね。驚かせたね。俺はきんときさ。あなたの兄だよ。あとここは俺の家で、」
「…!きんときねぇ…それでどうしてここに俺が居るの?」
「え!?…っーと、どうしてって、シャークんだって家ないでしょ?だからここで一緒に暮らそうかなって。ほら、俺ら兄弟だし?」
一瞬、ギッと殺し屋の目になっていた気がするが警戒してると思うことにした。確かに急に兄と言われたら警戒しても仕方ない。
「ふーん…ちょっと外出てくる」
飛び上がって横切った時、殺気を感じた。昔から殺気を感じて逃げて来た為、長年培ってきた勘が働いた。まぁ、そう上手くいかないよな。シャークんは俺が殺したことを覚えているのだろうか。それだったら尚更最悪だろう。
サングラスをあげ、外へと出る。まずは情報を集めなければならない。過去を引きずってはいけない。今俺が愛していけばいいだろ。昔お気に入りだった茶屋へ向かう。
「おっちゃん、元気か?」
「おぉ!きんとき!お前こそ無事だったのか!」
行きつけの店も潰れてなく安堵した。ご主人も生きてるしそんなに経ってる訳ではないのか。
「あぁ何とかな。だが長いこと寝ていたから最近あったことも今が何月何日なのかもわからないんだ。」
「それは大変だ!俺が全部教えてやるよ。それでいつ頃から記憶が無いんだ?」
おっちゃんは、事細かく教えてくれた。
今は俺が死んでから半年経ち、シャークんが死んだことで組織の反感を買い、怪しいことをした人、敵対組織、そして鼻についた人は問答無用で無差別に殺したそう。その抗争と言っていいか分からない戦いの中で上のものは殆ど死んだか、夜逃げし、行くあてのない者たちは盗みや闇市などでひっそり生きているようだ。今街は犯罪、虎ノ粉と色々問題が前より悪化し、それを政府が隠そうとしてピリピリしている様だ。どうやらこの街は終わりが近いと。
「…まぁ、ざっくりと言えばこんな感じか。お前も生きてるって知られたら命を狙われるかもしれないから、逃げるなら今のうちだぜ。」
「あぁ、ありがとな。ここの茶と団子は変わらず美味しいな。また来るよ。」
「おう、聞きたいことあればいつでも話しに来いよ。」
話し上手のおっちゃんと話していたら夜の気配が血のような残照に染まる。ここは以前も異様な空気を放っていたが、より一層呼吸をしにくいくらい空気が重く、緊張感がする。早足で暗い道を通り、ネオン街へと向かう。ここは前と変わらず明るく、まるで闇などないというように陽気な声がする。華やかな装飾と涎が出てきそうな香辛料やタレの匂い。ふと目に入った肉まんの屋台に寄っていく。
「肉まんひと…いや2つで」
「はいよ!」
蒸籠を開け蒸気と素敵な香りと共に肉まんが袋へ詰める。もしもの為に1つ追加する。恐らく食べてきていると思うがその時はもう1個食べればいいだけだ。
「お待ち!」
「ありがと、硬貨2枚で足りるか?」
「おう、きぃつけな!」
手を頭の高さまで挙げ振り、肉まんを1つ頬張り家路に向かった。家への道を月が導いている。空気はまだ冬の気配を残しつつ、春独特の生温い風が頬を掠った。家は真っ暗でまだシャークんは帰っていないようだ。戸を引き、灯籠にライターで火をつけ、灯りをともす。
お気に入りの椅子に腰かけたらどっと一日の疲れが湧いてでた。現世に戻ってきたこと、現状の整理とこれからのこと…考えれば考える程疲れてくる。思わずため息が溢れてしまう。意識が遠のいていこうとした時、ザザっ、と戸が引かれ飛び起きた。
おかえり、そうかけた言葉が、空へ消えた。聞こえない筈はないが、俺のことを無視して寝室へと消えた。
少しだけ反応を求めた自分が馬鹿らしい。とりあえず寝て明日また考えることにしようと、起き上がり伸びをして、寝室へと歩いた。サングラスを外し、寝巻きへ着替えて布団を敷いた。昨日と違い、少し遠くで寝息をたてている。
それを見ただけで不思議と心が落ち着く。この後の不安も2人なら、あなたとなら乗り越えれると根拠のない理由が肌寒い身体を温めた。
(残り99日です)
はっと目が覚めた。神は忘れないようにご親切でやっているのか、はたまた急かしいるのか分からないが、起きる前に目覚まし様に夢に出てくるようだ。朝から調子が狂うと、イライラしながら頭を掻きながら、洗顔をしに行った。
ご飯を食べたくても食材がないから今日は家事をしよう。それにシャークんにご飯を作ってあげたいから。洗濯物を籠いっぱいに集め、庭でに出た。いくら使ってなかったとはいえ、流石に半年も放置していると菌も元気に発生しているだろう。そこまで服の数はないが揉み洗いは疲弊する。ジャブジャブ服を洗っていたら、戸が引かれ、シャークんが出てきた。
「おはよう、どこか行くの?ごめんねご飯なくて」
当然のように返ってこない返事。足早にどこかへ消えてしまった。
洗濯を終え、次は掃除、その次は買い出しと太陽が起きていない時間に起きたはずだが、すっかり帰りの支度をしているようだ。
釜に火をつけ米を炊き、豆と野菜で和えたものと、高かったが肉の煮物を作った。師匠に感謝だなと1口味見をして思った。
だが、夜が更けた21時になっても来なかった。一緒に食べたかった2人分のご飯も冷めてしまい、仕方ないから1人で食べ、シャワーも浴びて寝るだけになってしまった。明日はどうしよう。俺が所属していた政府はもう壊滅状態になっていると聞いたが、やはりどうなっているのか確認したい。ついでに師匠に挨拶でもしようかと決め、深い眠りに包み込まれた。
街が静かに眠っている真夜中、食卓の方からの物音で目が覚めた。どうやら今帰ってきたらしい。灯籠に火をつけ、光に慣れない瞼をしぱしぱさせながら食卓に向かって、
「今帰ってきたの…?危ないから早めに帰ってきなさい」
「……ッチ、知ったような口聞きやがって」
そう吐き捨てると、冷めたご飯を掻き込み、寝室に向かった。残された副菜と米粒が残っているお茶碗を見て、酷く悲しくてやるせない思いが心にのしかかってくる。ちゃんと教育を受けられなかった、教えてくれる人がいなかったのかと。残飯を捨て、食器を洗う。いつもより水が冷たく感じるのは気温のせいなのだろうか。
政府の基地、基俺が報告していた場所に向かうと、そこは焼け野原になっていた。場所を間違えたかと思うほど辺りが何も無かった。嫌な予感がした。もし師匠も亡くなっていたら、師匠の家が跡形もなく無くなっていた。そんな予感をした自分が馬鹿らしく思えるくらい見知った建物を見つけられた。胸を撫で下ろし、戸の前で深呼吸をした。まずはなんて話そう、お元気でしたか、あそこは何があったのですか……ぐるぐる頭を回転させていたら、戸の奥から
「誰だそこにつったてる奴は。何の用だ。」
聞き馴染みの声がした。無意識の内に「きんときです!ぉ、お元気でしたか!」と口から零れ落ちた。
「嘘つけ、あいつは半年前に死んだはずだ。強盗なら帰ってくれ」
「違います!本当です!この声を聞いた事あるでしょう!」
「嘘だ、あいつはもう居ない」
「本当なので入ります!」
強引に戸を引くと、師匠は涙をツーと頬を通り泣いていた。
「本当になぜ生きとる…私はお前に幸せになって欲しくて…だがもう帰ってこないんだと……」
「心配させてすみません、ついさっき起きたもんで。師匠には心配かけてばかりですね」
ふっと笑い、師匠の元へ近づいた。
師匠は本当に恩に着る人だ。
師匠は俺が小さい時から今までこの世界を教えてくれた人だ。弟が拉致され、父は取り返すため探しに行ってから帰ってこず、母は家族が居なくなった悲しみを悪く使われ、俺が5歳の時には見るも無残な姿で横たわっていた。それを見た俺は最初こそ泣きじゃくっていたが、突然吹っ切れて、盗みで何とか耐え忍んでいた。
それがバレて捕まった時、師匠は俺を拾った。俺は師匠からこの世界の全てを教わった。弱く優しい人が死んでいき、強く非情な人が生きていく、そんな世界だと。馬鹿は前者になるからと字の読み書き、相手の心を読む力、その他家事や生活能力など沢山のことを教えてもらい、政府の潜入捜査官という役まで就任することが出来た。
「俺、3日前に起きたので街がどうなっているか分からないんですよ。嵯牙が無くなり、政府も潰れそうなのは聞いたんですが、あそこの基地が無くなったのは何故ですか?」
「それは、嵯牙との抗争の末だな。お前が嵯牙の偉い人を殺しただろ?あれから嵯牙がどんどん落ちぶれて、3人も上が殺されちまったようだ。それから嵯牙全体で戦争みたいなことが起きてな、街の住人や政府を巻き込むことが起きて、あそこはそれの被害を1番受けたとこだ。誰かにあそこが政府の基地だとバレて燃やされてしまったんだ。だからあそこ一帯焼け野原なんだ。」
「それで嵯牙は負け、無くなった。その生き残りが元嵯牙のアジトの奥の裏道にたむろしているんだ。そこには絶対行くんじゃないぞ。」
「…まぁ良くいえばお前のお陰で嵯牙が無くなり、悪く言えばお前のせいで政府は惨めな姿になっているな。今は虎ノ粉が中毒性があり、中毒症状の被害を受けた方からの攻撃もあって本当に大変そうだよ。まぁ全部自業自得だけどな。」
「ははっ!お前バレたらどこの組織にも狙われるから逃げた方がいいぞ。」
そう豪快に笑う師匠はいつものように振る舞うようだが、瞳は悲しいのかはたまた同情の様にも感じ取れる目をしていた。
その後、過去の話や美味しい店などたわいも無い話などの思い出話を膨らませた。
「そろそろ帰ります。元気そうでなりよりです。師匠は此処を逃げないのですか?」
「俺はこの腐った街しか知らねぇから出ていくなんて出来ねぇ。ここで骨を埋めるのさ。」
「そうですか、多分最後だと思いますが話できて良かったです。では」
「おう!弟と元気に暮らせよ!」
そう皺だらけの顔でくしゃっと笑う顔で見送った。そして沢山の本と米、お金もくれた。もうこんなに使い切れねぇと大量に持たせるその姿はお節介が変わっていなくどこか安心した。
家に帰り、ご飯を作り1人で食べる。昨日と同じように遅くに帰ってくると思い、今日は寝ないで本を読んで待つことにした。少しでもシャークんと喋っておきたい、一緒に過ごしたいから。
昨日と同じ真夜中にシャークんは帰ってきた。
おかえり、と声をかけると心底嫌そうな顔をした。ご飯あるよ、と言うと食うと一言だけ帰ってきた。
「昨日の冷めて美味しくなったよね?昨日のは冷めても美味しいから。どこでそんなに遊んでるの。治安悪いし早めに帰って…」
「何でそんな家族みたいなことすんだよ。それにどこで俺を拾った、何で俺に優しくする」
「何でって、家族だからだよ」
「嘘つけ」
「嘘じゃない、その右手の蒙古斑は俺と同じ場所にあるんだよ」
「!?何でこれを知ってる!」
「だって兄弟、俺たち双子だから」
ダン!と机を叩き、ギロッと俺を睨みつけるその目は常人なら腰を抜かすほど恐ろしい目をしていた。
「俺はお前を家族だと思ってない。俺に血の繋がった人はいない、そしてお前を殺す」
そう言うと俺の頭を狙うように足を振り上げた。すかさず避けるが、つげは腹に拳を打たれそうになる。それも受け止め横に流し、背中にまわって抑えた。じたばた大きく動くので床に突っ伏させ、身体が固まるツボを押して。立てないようにした。
「本当は乱暴したくないけどこれしか知らないんだよ、ごめんね」
「てめぇ…絶対に殺してやる」
噛み付くような目で俺を見るが、なるべく下に見られないよう目を細め鼻先を僅かに上げる見下す様な態度で頭を撫でた。ふわふわで愛しいなとか関係ない事を考えていると知ったらきっと更に憎しみが連なるだろう。
「俺はシャークんを幸せにしたいんだ。さて、明日はどんなご飯がいい?朝ごはんもいる?」
「………………肉……食べたい……朝もくれ」
そう小さな声で呟いたのを聞くと、少し驚いたような顔からすぐに笑顔で
「了解、ご飯余り食うなら食べて食べないなら寝な」
と言い、沈み込むように寝た。
それから、どう心境が変化したのか分からないが日が暮れてから帰るようになり、少しだけ会話が出来るようになった。どこ行ったの、何してたの、ご飯美味しい、とか端的な会話だが、返事が返ってくることが嬉しく、ウザがられない程度に話掛けるようになった。
「なんで急に無視しなくなったの」
子供のように掻き込みながらご飯を食べるのを見つめながら独り言のように呟いた。聞こえていないと思っていたが、水を一杯飲んで口を開いた。
「お前が俺より強かったから。俺は強い奴が好きだからな。それに隙を見つけないと殺せないから」
「そんなこと本人に言っていいの?」
「いい、ハンデってやつだ」
「そっか、楽しみにしてる」
そう言って立ち上がり、食べ終わった食器を片付ける。いつもより足取りが軽やかになった。
嗚呼、なんて素敵な日々なんだろう。会話をし、衣食住を共にできるのを常に夢見ていた。嬉しくて宙に浮いてるようだ。
ただ、本当に命を狙ってるみたいで、湯上り、トイレ、食事中と隙を見せないように常に気を察知しながらいるのは少々疲れる。ある夜、寝ている時に短刀で刺される数cm手前で止めた時は流石に危機感を覚えた。
「刃物なんて持ってたんだ。寝てる時は卑怯じゃない?」
「はっ、じゃあ一緒に暮らさなければいいじゃないか」
「それは死んでもやだね」
「飽きたわ、寝る。お前やっぱつえーな、一緒にいて飽きないわ」
そう言って布団に入り、1分も経たずに寝た。俺も気が抜けていつもより長く寝てしまった。
外の人の声で目が覚めた。空は1番元気に輝いていた。久しぶりに長時間睡眠ができ、嬉しいような時間を無駄にしたような気がする。とりあえずご飯を食べ、少し家事をやった後、大量に積まれていた本を読むことにした。
「それおもろいの?」
突然話しかけられて身体がはねた。気づけば外は周りの景色が赤っぽくなっていた。夢中で読んでいたら長い時間経っているから読書は注意した方がいい。
「あぁ、ごめんご飯まだ作ってなかったね」
「いい、俺外で食べたから。んな事より茶でもいるか?汲んできてやるよ」
「えっ…いいの?」
「あぁ、それよりなんで本なんか読むの?」
「馬鹿は搾取されるんだ。馬鹿だから下に見られ、話の裏にも気づけない。知識があれば色んなことが見えるようになる。人の考えていること、それに読み書きが出来るだけでも皆手のひらを返したように態度が変わる。そんな滑稽な弱者にならないためかな。」
そんなことを言っているが色んなことが見えると人生はつまらなくなる。程よく馬鹿でいるのが人生楽に生きるコツなんだと最近になって理解した。
「それとシャークんを守る為…かな?」
「?」
「もう二度と1人にさせないように〜…なんて」
そう少しカッコつけて言い、注がれたお茶を呑もうと手を伸ばすと、すぐにお茶を取り上げて、
「このお茶、茶葉の量間違えたから新しいの作る」
「何でよ、そんなの気にしないよ」
「いいから、シャワー浴びてこい」
そう言って俺を立ち上がらせ、シャークんは調理場に消えていった。今日は特に考えていることが分からなかった。なにか気に触ることを言ったかと不安になりながら身を清めた。
帰ってくると本を険しい顔をして読んでいた。本当に読める文字が少ないようで、
「あな、…み、……かして、?」
と読める文字だけ呟いていた。横に座って、読み聞かせると、理解が出来ていないよう顔で見つめてくるので、
「これは天国について話しているんだ。”桃源郷”と言われる場所に辿り着いて幸せに生きる話だ。」
本当は桃源郷を目指して行き、信じて向かっていた場所は思い描いた場所じゃなく絶望し、悲惨な死を遂げる話なんだけど。 何で嘘をついたんだろう。
この話は何度も読み返したくなるくらい好きな話だ。どこが好きと言われたら考えてしまうが、言葉には表せられない良さがある。
「もう夜遅いから寝よっか。」
懐中時計は10を指している。明日は今日出来なかった代わりに、買い出しに行ったり大掃除をする予定だから早めに寝とこうと思った。シャークんも瞼が重そうにしていたので丁度いいと思う。シャークんが新しくいれてくれたお茶を一気にグビっと飲み干し、灯籠の火を消そうとしたその時、
「なぁお前、俺の事抱かない?」
突然の事に頭が理解できなかった。身体が数秒程固まり、頭が混乱して言葉が出なかった。抱くというのはつまり交合うという意味であっているのか?何故急にどういうことだ。混乱している俺とは対象的に冷静にあっちから口を開けた。
「お前俺の事好きだからそういうこともしたいんかなーって。俺そういうの慣れてるから大丈夫。」
「何が大丈夫だよ!それ本気で言ってるの!?確かにシャークんのことは好きだけどそういうのじゃないから!それに自分の身体を大事にしなさい!もう寝るよ!」
自分でもびっくりするくらい大きな声で怒鳴り、灯籠の火を消してすぐさま布団に入った。シャークんはあまりの速さに硬直していた。
ここまで心臓が落ち着かないのはいつぶりなのか。シャークんがそういうことを知っていて、尚且つある程度経験がありそうなのが心にくる。それに何故急にそんなことを言い出したのか。心に苦痛が針のように刺さったまま。眠りについた。
「本気だったし、断ることあるんだ」
その言葉はきんときには届かずに消えていった。
次の日、する予定だったことは終わり、外は暗くなりシャークんの帰りを待つだけになった。
禍々しいほどの赤い色で空と雲を焦がす。どこか不気味だが、思わず見入ってしまうくらい美しくもあった。この嫌な気配が嘘だったら良かったのだが、それは悲しくも的中してしまった。
夜になっても帰ってこなかった。以前までそうだったから杞憂だと言われたらそうかもしれないが、ここ1週間はこの時間には一緒にご飯を食べゆっくりしているから、頭が嫌な想像ばかりしてしまう。杞憂でもいい、後で怒られてもいいから探しに行こうと決め、サングラスをかけ直し、
「まさかまたお前を使うことになるとはな」
そう言って大事に保管しておいた相棒の拳銃を取り出した。埃をはらって、弾をいれる。見つめると自然に口角が上がる。頼れる相棒でもあるしこいつにトラウマもあるが、今は自分を励ましてくれる存在だ。しっかり握りしめ家を飛び出した。
いつもどこに行っているのか教えてくれないが予想はついている。前師匠が教えてくれた嵯牙のアジトがあった路地だろう。治安が最悪だと言っていたが、シャークんからしたら知っている仲間も居るかもしれないし長居するのも理解できる。悲しいがあれが家族と言うくらいには信頼しているようみたいだから。
周辺に着いたら、屋根に登って上から探すことにした。探すのにも狙撃するにも上からの方が安全だ。出来るだけ忍び足で捜しまわっていると、集団の声が聞こえた。そこに駆け寄ると8人ほどの男性集団が何かを囲って遊んでいるようだ。大柄な男が1人を暴行し、周りは抑えたり冷やかしている。予想は的中しているみたいで虐められているのは見覚えのある我が弟だった。
怒りで向かって行かないよう、心を落ち着かせるよう、深呼吸をし、エイムを大柄な男の左胸に合わせる。大丈夫、俺の腕は誰にも負けない。今度は守る番だ。そう案じて心を落ち着かせ、引き金を引いた。
バンッ!
大きな銃声が辺りに響き渡り、周りが静かになる。血を流して倒れたのに気づいた人から次々に、
バンッ、バンッ!
と撃ち殺していった。辺りは笑い声から叫び声に変わった。銃に弾を詰め、逃げようとしたやつを下敷きに下に降り、下敷きなった奴の頭を撃ってあげ、最後の1人に穏やかな顔で問い詰めた。
「ここで何してたの?」
相手は震えて腰が抜けてしまったようだ。惨めにズボンの色を濃くさせた。これが俺の嫌いな弱者。複数だと強く出て1人だと何も出来なく命乞いしかできず、ビクビク震えて何も出来なくなる。
「ぃ、命だけは……命だかはお許しください……」
「質問に答えろよ。何をしてたかって」
目線を合わせ、壁に押し付け胸ぐら掴んで脅してみた。顔を真っ青にし唇が止まることなく震えている姿はなんとも無様で吹き出してしまいそうになる。
「何したか教えてくれたらお前は逃げていいよ」
「ぁ、あ…の……俺らのグループで、ちょっと虐めてました……」
「何で?」
「ぇ、ぁ……あいつが俺らのリーダーを怒らせ…たからっ、あいつがぶつかってきたから…!」
そう言って呆然としているボロボロのシャークんを指を差した。突然辺りが血溜まりになって理解ができていないようだ。嗚呼、可哀想に。シャークんが素面でやっても勝てないからって卑怯な手段でやったのであろう跡の、どこから取ってきた木材の破片と少し大きな石には血がついていた。
「分かった、もう帰れ」
そう言うと雑魚は一目散に逃げた。それをじっくり狙って捕え、引き金を引くとばたんと倒れて、まるで噴霧器で吹き飛ばしたような血しぶきがシャークんの方に飛び散ったので、それをかからないように手で受け止め、
「帰ろっか!」
そう曇りなき笑顔で手を取って、走り出した。
まだ混乱しているシャークんを引き、全速力で小路を走っていく。
「あれ、いいの?」
「いいの!あそこ殺しが日常茶飯事だし、警察も捜査なんかしないよ!でも銃は怒られるかもしれないから早く逃げろ!」
「なんだよそれ、あははっ!」
呆れながらも一面に満悦の表情が彼の顔に浮かぶ。初めて笑顔が見れてもっと大きな声で笑ってみせた。2人の姿はまるで子供のように無邪気だった。
「あー久しぶりにこんな全速力で走った」
「お前少しは止まれよ…」
家に着いた瞬間、2人して床で倒れ込むほど息切れていた。だが、嫌な感情は一切なく、額を流れる汗が鬱陶しく思わなかった。肩で息をしながら彼を見るとこっちを見ていて、数秒見つめ合い、ふふっと笑い、大きな声でアッハッハ!と笑いあった。
「汗すごいから水浴びてくるね」
「俺も」
シャークんも来ると思わなくて、目が見開く。何だよ、と言うから自分がおかしいのかと錯覚してしまう。本当に一緒に入るつもりで1人では狭く感じない洗面所が圧迫感を感じる。あまり身体を見ないように目を逸らして服を脱ぐ。反対にシャークんは俺の身体をじっくり見て全然脱いでいない。流石にそこまで見られると照れてしまう。だらしない体では無いはずだからそこまで焦る必要ないと思いながらぬるま湯を浴びた。
「俺たちって双子なんだっけ」
「そ、そうだよ。シャークんの右手にはある蒙古斑が俺の左手にあるんだ。ほら、模様もそっくりだね。」
手を揃えてやると、本当に似ている。よくシャークんを見ていると、身長もほぼ変わらないし、骨格も変わらないのか目つきが違くても他のパーツが自分の顔と同じだ。
「シャークんは母さん似でふわふわの髪とか目が吊っている。逆に俺は父さん似で髪がまっすぐで目もシャークんほど吊りあがっていないんだ。」
「へー、ずっと適当な嘘言って優しくしてる思ってた」
「そんなこと言うわけないよ。それにシャークん以外に優しくしないよ。」
「意外とそうなのかもな。お前って」
浴槽の中で横に並んで話していた。やっと今日、本物の兄弟になれたような気がして気を抜くと涙が零れ落ちてきてしまいそうなる。ずっとこの時を過ごしていたい。
「ねぇ、本当に俺の事抱かない?」
「だからからかわないで。そういうことはあんまり言わない方がいいの。それにそういうことは好きな人とやるもんだよ」
「本気だよ。何でそこまで嫌がるのさ。俺がこう言うとみんな喜んでやってたぞ」
「は!?色んな人とヤッたの!?」
「なんでお前童貞ってやつか?しょうがない奴だなー」
「違う!」
「そう慌てんなよw俺がリードしてやるから。俺がお前に挿れやってもいいよ。」
もしかしたら、悪い大人に騙せれて性処理させられたのか?そうだとしたらますますあの組織は滅ぼされて当然だ。しかもあの感じじゃ頻繁にやってそうだし、しかも男同士も普通だったのかもしれない。これしか人の喜ばせ方、愛の伝え方を知らないのかもしれない。いやシャークんがやってきたのは愛ではないか。しかし、俺も抱いたことあるのは情報欲しさに嵯牙がお気に入りの女とのだから、俺が愛を語るのは可笑しいかもしれない。だが、
「シャークん、セックスはね、愛し合った人通しでやるもので、誰これ構わずやるもんじゃないの!もっと自分を大事に…」
「うるせぇ、こうしたら男は勃ち上がんだよ」
そう言って俺のモノをいやらしい手つきで上下に扱う。すかさず俺は起き上がって浴槽を出た。だがシャークんは不満げな態度をしたので、
「分かった、本当に1回だけやってあげるから。シャークんは孔解しといて」
そう吐き捨て、風呂場を後にする。静かになった部屋で自分の意とは反対に半勃ちになったモノを見てへたっとしゃがみ込んだ。後先考えずヤルと言ってしまい、頭を抱える。もし下手くそと思われたら、気持ちよくないと思われたら。それよりも兄なのに断り切れなかったことに問題がある。自分には強い意志があると思ったが、シャークんの前ではそれが無意味となってしまう。しっかりした兄ではいなければ、と冷静を装い、肌着を着てズボンを履いてシャークんを待った。しっかり断ろう。兄として。
だけど念の為万が一にもやる流れになってしまった時ように挿れやすくする、ぬるぬるの潤滑油を作っておく。これは昔女を抱く為に必要だと師匠に教わり、使ったものだ。師匠は夜のことも教えてくれた。それを必死に思い出して待っていた。
シャークんはいつものふわふわの髪じゃなく湿った真っ直ぐの髪に全裸で来た。三つ編みを解いた姿が新鮮で頬を赤らめた。
「髪、触ってもいい?」
「じゃあ梳かして」
そう言って櫛を俺に渡した。手入れの行き届いた綺麗な髪を梳かしていると、母さんを思い出した。ずっと見ていたからよくやらせてもらってた。俺は長い髪を梳かしているのを見るのが好きなのかもしれない。
「綺麗だね。」
「この髪好き?」
「うん。シャークん髪伸ばしているの意外だった。」
「この方がみんな喜ぶんだよ。邪魔で切りたい時あったけど今はもう俺も結構気に入ってるかも」
数十秒経ち、髪を梳かしている櫛を青い右手が止める。思いがけず見つめ合う形になった。直感でまずい、と感じとり待ってと言おうと口開いた瞬間、シャークんが唇を塞いだ。
まずは甘い唇同士が触れ合うバードキス。シャークんの唇が柔らかくずっと触れていたいと思ってしまう。シャークんの方から離した時、物足りなさを感じてしまった。その時の少し蕩けて物足りなそうな顔がかわいすぎて、自分からまた近づいた。待って、と言われ、反射的に離れてごめん、と謝った。何がいけなかったとまず思ってしまった。そしてすぐに辞めなければと思い出し、呼びかけようとしたら、
「サングラス邪魔、うんやっぱ目見てやりたい♡」
それを言われた瞬間理性がパチンッと切れ、もう耐えられなってしまった。今度は俺からシャークんの唇めがけて飛びかかり、押し倒す形になった。
「あんまり兄を煽るなよ」
そう言って、深く口付ける。唇と唇を絡め合い、いやらしい水音が寝室に響き渡る。舌をシャークんの口内を蹂躙し、歯列をなぞってまた絡める。シャークんが絡め合う度肩がビクッと跳ねた。シャークんは最初目をつぶっていたが、段々開いて、乱れた前髪の隙間から翡翠色の目が熱で溶けていく。
「は…、ンん…む♡」
「シャークん好きだよ。」
そう何度もへへっと微笑む顔で好き好き言われたら、シャークんは照れてだが、口付けるをやめなかった。シャークんはやはり慣れているようでキスが下手ではなく、俺が上顎や喉奥に近いとこを吸ったり舐めたりするとこ、応えるようにやり返してくる。背筋に電気が流れるように痺れる。
俺から唇を離すと、物足りないかのように舌が寂しそうに彷徨う。俺の下から唾液が伝い落ち、ツーと伸びて透明な糸となり、ある程度の長さになると途切れ、シャークんの口周りを汚した。
「…………シャークん」
蕩けた声で名前を呼ぶ。起き上がって見つめ合う。シャークんの顔が蕩けていて、凄く色っぽい。これは経験豊富だなと何故か今そう感心してしまう。シャークんが俺に1歩近づく。思わず、待って!と肩を抑える。
「やっぱここでやめにしよう。この一線を越えたらまずいよ。」
頭をフル回転させ、最後に絞り出した。ここでやめたらまだ間に合う。それにシャークんが食べてしまいほどかわいいから優しく出来る気がしない。ヤルなら最初は蝶よ花よに優しくしたいが、こんなにも積極的で俺好みだと自分がもたない。
そんな俺の態度にムスッと嫌そうな顔して、俺の胸に耳を当て鼓動を感じてこう言う。
「こんなにドキドキしてるのに辞めれんの?それに此処も勃ち上がって破裂しそうだよ?本当にいいのか?」
ほのかに紅く染まった顔で自分がこの後どうなるか考えていない、自分は余裕そうで得意げに俺を挑発した。気づいたら服を脱がせて貰って、最終防衛ラインの下着も脱がされてると大きく固く勃ち上がったソレが顕になった。
「こんな大きくして辞めようとするなんて無理だろ♡お前の俺よりデカくてずっと欲しかったんだよ♡」
「出来るだけ優しくする…」
「はっ、無理すんな。そこで寝てても気持ちよくさせてやるよ♡」
脇に置いてあった潤滑油をシャークんが自身の孔に垂らす。風呂場でしっかり解していたようですぐに三本の指を容易くくわえた。ぐちょ♡といやらしい音を立てる姿は、更に俺の興奮材料になる。
「っあ、…ぁあ…ー〜♡♡」
「はあぁーー…なか、あっっつ♡」
シャークんは俺の上に跨り、馬乗りになった。ぬぽぽ♡と俺の大きなモノが入っていった。まだ先端だけしか挿れなく、半分もいってない地点で腰をゆっくり上下に動かし、自分だけ気持ちいいとこに当ててるみたいだ。ぱくぱくと口を開け酸素を取り込むことしか出来なくなっている。
「シャークん、早く動いて」
「ご、ごめん♡」
呼びかけると、我に返ったように速く動き始めた。本領発揮ときたようだ。先程まで瞳孔をかっぴらいて、自分だけ気持ちよくなっていたのに対し、俺を上から見下ろし、得意げな顔で搾り取ろうとしてくる。ずっと腰を掴んで、一気に突き上げたい衝動を我慢してたので、急に速く動かれるとすぐに達しそうだ。早漏と思われたくない為、必死に我慢する。
「ー〜、っあ♡全部はいった♡♡ふはっwおまえのデカすぎ♡俺イキかけたよ♡」
息を整えながら、そう言った彼は、しっかり根元まで咥えてくれて、正しく絶景である。ただ、急に動きが止まったもんで今すぐ動いてもらいたい。焦れったく、フッーー、フゥーーーーとぎりぎり歯をきしませ耐えている。
「早く動いて欲しい?じゃあ俺からの攻撃に1分耐えれたら次は好きにしていいよ♡」
手を輪っかにしてわざとらしく上下に動かす。上等だ。やってやるよと意気込み、シャークんはぎりぎりまで腰を上げ抜けない数cmの所まであげるとスタート♡!、と言うのと同時に一気に腰を下ろした。
危なく開始1秒でイクところだった。だが俺には絶対にイケない理由がある。中に出さないこと。中に出したらそれが当たり前だと認識してしまうだろうから、これに勝つ必要がある。断じて好きにしていいに釣られた訳ではない。
華奢ながらも角張っている男らしい腰をがっちり掴んで、ぐいっと俺の方に引っ張り向き合う形になる。それに少し戸惑ったようで攻撃が止まる。力強く抱き締めると行き場を失った手が困惑しながら俺の背後にまわると、淀んだ牛乳色の素肌の首元目掛けて、がぶっと歯を立てて噛み付いた。あぁ♡!と艶かしい声が漏れた。意図していない声に咄嗟に口を覆うとする手を掴んで、
「声聞かせて」
と耳元で囁きナカでシャークんの弱点を見つけ出し、ぐりぐり責めていく。ビクビク震えながら逃げようとする身体を覆いかぶさって押さえつける。首元をジュッ♡といやらしい音を立てて吸い上げると、真紅の華が咲いた。たまらずつま先がピンと伸び、シャークんが自身のモノで腹を白く汚した。
シャークんがイッたのを確認してモノを抜き出した。まだ足りないと言わんばかりに主張しているソレがうざたらっしく思った。とりあえず汗で汚れた布団を取り替えなければと立ち上がろうとした時、腕を思いっきり引かれ、布団に転び落ちた。顔を上げると手をドンと横に置かれ、獲物を逃がさない目鋭い目つきの獣がいた。長い髪が垂れて、横の情報をシャットダウンし、顔に集中線かのように視界が真ん中に行く。髪の隙間からほのかにため息のような光が入り込み、毅然とした顔に目を離せなかった。
「なんでお前がイかずに終わろうとしてんだよ。」
「シャークんもう1回出したんだから。終わっても文句ないだろ。」
「まだ全然満足してねぇーよ。ナカに出せばいいじゃねーか。それにそんな固くして言われても説得力ねぇよ。」
「そういう訳にはいかなぃ、ッあ、シャークんッ!あたってる…♡」
「あててんの。今度は俺が気持ちよくさせてやるよ。勝負にまた負けちゃったし♡」
俺の固くなった陰茎とシャークんの陰茎同士がぶつかり合う。段々シャークんのが熱を帯びて大きくなっている。ビキビキと血管を浮き、睾丸はどくりと鼓動を打ち活発になる。
我慢汁でぬるぬるの亀頭同士の弁を擦り付け、もう射精してしまいそうだった。自分の脳ももういいだろうと体を制御しない。
「まっまって……!っほんとにイッちゃう♡……ッやめて!」
「ははっ、イケ♡」
「あっ……ぐっ、っ…………〜~~~♡♡」
シャークんの白い手が輪っかを作って一往復したら瞬間、白い液が勢いよく飛び出し、2人の体を汚した。どくどくとやっと我慢したものを放出する感覚に浸り、はあっと熱い息を吐いた。射精後の倦怠感を感じさせることなく、第2回戦と行くようだ。
「、!ッシャークん、まってぇ♡!…ッいった、ばっか、……ッンとめて♡♡!!」
「でもまだできるでしょ?ほらぁ、もう勃ってきたぁ♡」
自分の意思とは反するに、陰茎を扱う度に勃ち上がる。ぞくぞくとした快感が背中を駆け巡り、壁に寄っかかる体をどんどん起き上がらせる。頭が興奮で上手く回らなく、揺さぶられている。程よいテンポと強さで竿を刺激される光景を直視出来ず、顔を覆ってしまう。弟に触られているという状況に罪悪感と興奮をしている複雑な気持ちが混ざりあう。器用に動かす手はますます早まる。眉間に皺を寄せ、荒い息を零しながら、自然に腰が手に擦り付けるように動かいた。汗が頬を伝う。先端からどんどんでてくる液が、白い手に纏わり、水っぽい音が響く。
「またちゃんと勃ったね」
「……、こっからなにすんだよ……ッ」
天に向かって反り立つようになったら、動きが止まった。もうすぐでイケそうだったので、もどかしいという感情が真っ先に浮かんだ。血液が性器に集中しているのを感じる。心拍に合わせどくどくと、興奮を伝えた。
ふっー♡と熱い息を吹きかけられると、体全体電流が流れたようにビクッと跳ねた。睾丸を指の腹で優しく焦れったく撫で回される。裏筋をつーとゆっくり亀頭の前まで通らせると、涎を垂らし、待ってました言わんばかりに咥えた。
「ッは、…………な、なにして、…………ッぁあ!♡♡」
小さな口元から除く赤い舌が、亀頭をペロッと裏から反時計回りで舐め、深く奥深くへと咥えていく。自分の肉棒を奉仕している姿でどうにかなってしまいそうだ。興奮を押し殺す為に、モゾモゾと足に力を入れて動く度、布団の皺が増える。シャークんの肩に手を置き、離そうとするがあちらも俺の腰に手を回し、離すまいとガッチリ掴んだ。
「…っふふ、っん、でかすぎw♡♡」
そのまま、ちうちうと舌で性器を嬲る。全体を舐め回したら、ぬるり、と裏筋を舌で這う。同時に、五本の指でくちゅくちゅと音を立てて亀頭を刺激する。その延長線上で口を玉袋へと動かし、はむはむと咥える。堪らず漏れ出る、あぁ♡!、という声に満足気に笑った。
「すっげぇー脈打ってんじゃん、そろそろ限界なんじゃない?」
「いっ…いからッ、……ッは、なせっ!」
自身のモノがビキビキと血管が浮きでて、膨張している様にもうすぐにでも爆発すると嫌でもわかった。まずいと。このままではシャークんの口の中に出してしまうことになる。引か剥がそうと肩に力を入れようとするが、上手く力が入らない。シャークんも譲る気はなく、ラストスパートでも言うかのように、頬に形をはっきり残し、喉全体でぐぽぐぽと頭を上下に動かした。
「……あ”っ、ぐっ!………ッはあ!、はあ”♡♡!」
当たり前に性行為をするもんだと、思ってしまった弟を止めなければ兄として駄目だとだと分かっているのに、この有様だ。せめてでも、欲望の塊を口内に吐き出さないようにしようと点と点の理性が繋がり踏ん張っていた。だが、動きは止まることなく、どんどん激しくなる。じゅぷじゅぷ、泡立つ音が聞こえてくる。その液が口から溢れていくのが見えて、何かが弾けた。遂にはシャークんの愛くるしいふわふわの頭を掴んでしまい、揺さぶってしまった。
「あっ、あ”♡♡!!!…………ッく、くぅーーーー〜~~~、……ッ♡♡!!!」
「ッん!?、……んっ♡……んふふっ、ぁッ……♡♡」
ビクン!と腰が跳ね、精液が口から溢れる。満足したのかガッチリ掴んだ手を離し、口から溢れた精液を掬い、口に含んだ。果てた俺とは対象的に元気に肩を叩いてきたので、疲弊した顔をあげると、口をあー♡と開け、重力に逆らえない舌の先から垂れる液をずるっ、と吸い、そのまま口の中に吐き出した俺の種を飲み込んでしまった。ごくん、と鳴らし、喉元を通っていくのが見えた。シャークんは一息ふぅ、と吐いて、今まで1番卑しく目を細めて笑った。
俺は目を見開いて呆然していた。
「お前の濃すぎ、まだ足りないだろ」
「……、なんで飲み込んだの、まずいし、……俺外に出そうとしたのに離さなかったし」
「だってさっきナカに出せなかったから。口ん中ならセーフって意味だろ。それに気持ちよかったでしょ」
口の周りに残っている白い液体とは言えない粘性の物体を丁寧に指で掬い口の中に含む。勝負に勝ったかのよう余裕そうな表情で毛先をくるくる回してみせた。最愛の弟だが、まるで俺が早漏の耐え症のない男だと言っているのか。相手を満足出来ない素人童貞だと言いたいのか。そんな態度を見せ、飽きたでも言いたいのか自分の布団に帰ろうとする腰を力いっぱい掴んで引っ張った。
「待てよ、まだまだいけんだけど。眠いとか言うんじゃないよな」
「はっ、それはお前のほうだろ。ずっと俺のリードされて男として恥ずかしくないのか?」
「言ってくれんじゃん、やめてって泣いても知らないからね」
「おーおー!やってみろよ童貞」
その言葉に頬がピクっと上がり、怒りが眉の辺りに這う。クルッと身体を回し腰をガッチリ手で固定して、一気に突き上げる。
「お”っ”!!!!♡♡♡♡♡♡」
と男として情けない声で喘いだ。視界がチカチカと点滅し、足はピンと一直線に伸て突いただけでシャークんのモノから白濁液がピュッと漏れた。それ以外言葉が発せないのか口をパクパク息だけが発せられる。独りでにモゾモゾ上下に動く腰。ゆっくり動かしてやると、何度も甘イキしているのが感じる。
「もうイッちゃったけどこの後まで耐えれるの」
身体を密着させ、シャークんの耳元で優しい声で囁く。先程噛んだ跡をなぞってあげると
「ぁっ、…ンあっ……」と喘ぐので、
「シャークん、噛まれるの好き?」
と問いの答えを待たずに、首やうなじに甘噛みする。噛まれる度にナカが締め付けられ、それに応えるように俺の陰茎も大きくなる。
もっと強く噛まれたいと、こく、と頷いてみせる。ビクビク期待で震わせるシャークんに、ふっと笑い、
____がぶりっ、血が出てきそうなほど鋭く歯を突き立てた。
「ッあ”あぁぁぁーーー~…………♡♡」
目の前が真っ白になり、俺のモノを離すもんかとガッチリ締め付け絶頂した。腰がビクンッ!と跳ね、まだガクガク小刻みに震えるて止まらないが、俺の律動が止まる理由にはなかった。
快楽の波が収まらず、たちまち、
「ぉ、ッお”♡♡…っと、とまぁッ!……とめてぇええ♡♡♡♡」
「さっきの威勢はどうしたのさ」
さっきよりも、より密着した羽交い締めにするよう、華奢な身体を抱き寄せ、とちゅん♡と奥をノックするように押し当てた。それだけでまた頭を真っ白になったようで再度孔を締め付け、はふっはふっ、と声にならない声を漏れた。
「ッはぁぁあ…………♡♡…、ッそれ、ゃっばい♡♡はッ、は……ンあたまぱー、にぃ、なりゅ…♡♡♡♡」
「なんで?まだいけるよねぇ?」
「っだ、ひッ♡……って、ぁッはあ”ん♡♡」
「奥つつかれるとイキまくるからやめて欲しいって?」
「っしょぉ♡ンまっ、ってぇ、んほんッとに、ぁ”♡♡あ”あ〜~ーー♡♡っあぁっ……ーーーっ♡♡」
今度はとちゅん♡とちゅん♡と奥を何度も突いていく。その度に足がガクガク震え、何度もイッてしまう。力は入らなく、されるがままにめちゃくちゃにされていた。そこを責めると、参りましたと言わんばかりに雄に服従してしまう。
「あ”っ……、んん”♡♡っ、っお、お”おぉぉ……ーー、ッ~~~♡♡♡♡」
「ははっ、汚いオホ声なんて出しちゃって♡そんなに奥つかれんの好きなの?」
「んあッ!♡♡あっ、んんっ……ーーっふぅーー〜ッ…!♡♡」
いつもなら何ともない少し高めな爽やかな声も今のシャークんにとっては興奮材料だ。どちゅん♡と助走をつけて突き上げると、ひくんひくんと身体が跳ね、ナカがうねりナカが俺のモノの形を覚えつつ、搾り取るように締め付ける。
それの攻防に耐えれなくなっていき、そろそろ達すると直感で理解したので、シャークんの体を180度回転させ、向き合う体勢になる。シャークんは1mmも離れたくないのか、俺の首の後ろに手を回し、身体を持ち上げぴったり密着した。汗でぱちんぱちんと擦れ合う音が大きくなり、更に深くへ挿入った。何も考えられずずっと絶頂しっぱなしで、ただ快楽だけを感じている。
「シャークん、出していい?」
「ぅん♡♡っは、ッはぁく、きて、ッぇ♡♡!」
「ッシャークん、!シャークん!!」
そう名前を呼び、目の前でぱくぱくする唇が、デザートの様に美味しそうに見えたので舌を目掛けて食い尽くす。胸焼けがしそうなほど甘々な真紅の華を必死で吸ったり、絡めたりする。
シャークんは上も下の快楽でびくびく痙攣しまくり、絶頂の間隔もどんどん狭まっている。
余裕のない声が色っぽく、ナカが震える。
1番奥を勢いよく突かれた瞬間、ナカの熱い棒がぶるりと震えて、熱せられた鉄球のような弾丸がナカをどくどくと満たしていく感覚が、全ての器官で待ち望んでいたとばかりに最高に気持ちの良く、また達してしまった。自分のモノは透明な液体がすごい勢いで出てきて、女の潮みたいだった。
ナカにようやく出してくれたこの時をじっくり感じたくて、身体はさらに火照り、温かな幸福感に包まれた。一滴残らず搾り取ろうとする収取を繰り返す内壁に耐えられず、また熱が注がれた。
2人して疲れ果て、へたっと横になった。きんときは俺に寄りかかるように倒れ、少しの間肩で息をしながら見つめ合い、ゆっくりとナカから肉棒抜いた。白い液が孔から溢れてくるのを勿体ないと寂しく思った。
シャークん、と囁く方に顔をやると、優しく抱き寄せ、ごめん、と呟き頬に1つ口付け、肩に顔を埋めた。力強く、それでも優しく抱きしめられる。いつも堂々とし、余裕のある兄の姿は何処にもなく、甘え足りない子供のように情けなかった。戸惑いながら面倒くさそうに頭を撫でてやる。顔を上げることなくごめん、ごめん、とずっと謝っている。俺は何に対してこいつが謝ってるのか理解ができてなく、せっかく最高だったのに後味悪すぎだろと呆れていた。
身体に汗がまとわりついて寝れないので、また風呂に入ろうと起き上がろうとするが、きんときが邪魔して立ち上がれない。不愉快だと引き剥がそうとするが、中々剥がれないので引き摺って一緒に向かうことにする。歩くと精子がナカから零れてしまい、床を汚してしまうので、孔を抑える。全裸の男2人が1人を引き摺り歩く姿は実に滑稽だ。
「ほら着いたぞ、離れろよ。いつまでグズグズしてんだよ」
「だって、シャークんに優しくできなかった。」
「俺はそれが良かったんだからそんなに傷つく理由が分かんねぇ。」
「ナカに出した」
「それも俺が同意の上だろ。顔上げろ」
そう言って浴槽から水を汲んできんときの頭におもいっきりかけた。水をはらい、水が滴る身体は色っぽく、男女問わず憧れの眼差しを向けられる、ガッチリと筋肉質な身体と引き締まってる腹筋、眼は緩やかに切れ上がり、ぱっちりとした瞳に長いまつ毛が生えている。鼻筋も通っていて、見れば見るほど顔がタイプだなと感心する。
「嫌いになってない…?」
上目遣いでこちらを見つめる姿は弟が出来たのかと錯覚してしまうほど愛しいと思ってしまった。直視出来ない美しさに目を逸らす。くそ、調子狂うな。そんなことを言うやつじゃなかったのになんでこんなに弱々しいんだ。
「なっ、なってないからあんま見つめんな!汗流したし、お前の精子出たから先出るからな!」
そう言って風呂場を後にした。
カッと体中を巡る血が顔の中心に集まってきたのがわかった。何故、自分でも赤くなっているのかが分からなかった。だが、心がキュンとした。なんで、何処に!?意味わかんない!!とそわそわ身体を動かしながら髪をタオルで乾かしていく。あいつが来る前に顔が早く戻れ、と考えないようにすればするほど身体が火照っていく。
「シャークん、寝よっか」
いつの間にか寝室の戸の傍に寝巻きに着替えてタオルで髪を拭いてるきんときが立っていた。
明かりをふっ、と消す。外は少し明るくなり始め事の長さを感じた。きんときの布団が汚れてしまった為、1人用の布団に男性2人が一緒になって横になる。密着しないと入り切らないので1人だと感じない圧迫感を感じた。先程の行為ことを思い出し、汗を流したはずなのにまた流れてきた。顔を見られないようにきんときと同じ方向で寝る。その時も俺をぎゅ、と抱きしめ肩に顔をうずめた。さっきそれをやられた時はうざったかったのに、今はドキドキして疲れている筈なのに寝られる様子じゃない。
「まだいじけてんのかよ……」
「寝るまではこれでいさせて。起きたら元通りにするから。」
ぎりぎり聞こえる声で会話する。そのままきんときが寝息を立てたのを耳にし、もうめんどくさくなり仕方なく眠りにつくことにした。
起きたのは太陽が眩しくなったお昼すぎ。きんときは壁に寄りかかり煙管を吸っていた。何処から取り出したのか分からないが、後ろから見るその姿は様になっていた。
「おはよ。身体は痛くない?」
本当にいつもの余裕のある兄の姿に戻っていて、呆気にとられていた。じゃああれはどうしたんだと。それよりも手に持つ煙管が見慣れなく、
「煙管吸ってたんだ」
と問いかけた。あぁ、と1回吸って独特の匂いの息を吐き出し、灰柄を落としてこう言った。
「これは尊敬してる人の真似事だよ。あんまり好きではないんだけど、あの人が一夜を共にした後にこれを吸ってたのを思い出してかっこいいから真似してみたんだ。でもやっぱりあんまり美味しくないわ。」
「へー。俺も吸ってみたい」
どんくらい吸えばいいのか分からなかったので、肺一杯になるまで吸ったら、煙が肺を埋めて苦しくなり噎せた。あはは、笑い、”大人の味はまだ分からないね”、と兄の様な言い草で俺の背中をさすった。
「シャークんは知らないことだらけだね。一人で居たらすぐに悪い人に騙されちゃうよ。……俺がシャークんの分からないこと全部教えてあげる。」
そう言って青い右手に柔らかい唇が触れた。
それから2人の約束で、
・暗くなる前に帰る
・分からないこと、したいことは相談する
・セックスは3日に1回
この3つが決まった。何度も情事のことで喧嘩したが、何とか丸く納まった。思い描いてた暮らしと少し違う形にはなったが、今が幸せだから気にしないようにした。何よりシャークんが色々なことに興味を持ち、俺が本を読んでいるの隣で読みの練習をする姿が愛くるしい。段々と成長していく姿を見るのが楽しくて、本に集中出来ないことも増えた。
しっかり肌を重ねる回数も守っており、3日目は常にソワソワしている。
今の姿は幸福そのものだろう。でも起きる時に必ず、
(残り36日です。)
と言ってくるからこのままじゃ駄目みたいだ。
そう、気づけばもうすぐで残り約1ヶ月となってしまってる。ここからどうしたらもっと幸せにしてあげればいいか分からない、そんなことを頭の片隅に残しつつ、今日はシャークんと一夜を共にできる日だったので、堪能した後のイチャイチャタイムとなった。
「兄ちゃんの身体温かい」
「シャークんも温かいよ」
この時だけ、兄ちゃんと呼ぶようにしてと頼んだら、最初は嫌々だったが、今は自然に言ってくれるようになった。お互いの体を触れ合う時間は、自分の癖紹介みたいになってきている。
「手ゴツゴツしてるよね、兄ちゃんって。骨格も俺と違うのかな」
「ほんと手好きだね」
「そっちこそ、俺のおっぱいばっか触りやがって、俺女みたいに膨らんでないし兄ちゃんの方が厚いじゃん」
「女の人の胸が好きとか1回も言ったことないでしょ。シャークんの胸が好きなの。」
「じゃあ俺も兄ちゃんの触っちゃう」
「ふはっ、くすぐったい」
いつもはシャークんが早くに眠くなり、この時間は終了するのだが、今日は全然眠くないみたいで、かれこれ30分ほどお互いに触れ合い、こちょがし合う。まるでその姿は恋人の様_____
待てよ、恋人?俺たちは“兄弟”の筈で“恋人”ではないのだが。急に頭が冴えてきた。所謂、賢者モードというやつだ。
俺の胸に顔を当て、どく、どく、と拍を嬉しそうに感じている。いやらしい手つきで胸にある飾りを触る手を掴んだ。どうしたの、とでもいいたげな表情で見つめてくる、無垢な顔。最初はの時もだが、何故こんなに性行為にやる気なのだろう。デリケートな部分だから聞くか悩んだが、それよりも知りたい欲の方が上回ったので、
「シャークんは…なんでこんなに俺とセックスにやる気なの?」
恋人の様な関係を断ち切る為に、この行為が好きな訳を聞いときたかった。過去にある程度経験がありそうなことを言ってたり、過去の体験と比較することもあったから、もしかしたら色々あったのかもしれない。
顔を逸らし、少し恥ずかしそうに口を開いた。
「昔、嵯牙のやつらとやってた…よくやってんだ。あの時はわけも分からずだったから、最初の頃は痛い思い出もあるけど、それよりも気持ちいい、が上回ってたから、仲間の奴らとやってたんだ。そん時、よく女が居ない時に下になってた。まぁ俺も女抱くよりもこっちの方がいいし。それに威勢のいいやつを泣かすのは楽しかったから下になるのも悪くないんだよな。」
ふつふつと嫉妬か怒りかムカムカとした炎が胸にこびりつく。別に経験があるのは構わない。俺だって何度も女を抱いたことはあるから。だが、男に…しかも抱かれた経験ありは流石に心にくる。嵯牙は悪い大人しかいないのか、こんな子供に性処理させるなんて、あってはならないだろう。止めてくる大人がいなかったのか。
ぎゅっ、と腕の中でわしづかむように抱きしめた。
「なんだよ嫉妬かーw処女中だったりすんのかよ」
「そうじゃないけど」
余裕そうに言うシャークんの耳をみると赤く染まっていた。思わず息を飲み込んだ。もしかして、恋愛的に好きだったりするのか。それはまた話が別だ。何となく自分に好意を寄せている人が分かるんだ。今まで女性に言い寄られた経験もあり、断るのが苦手な俺はそれを早くに察知し関係を絶つようにしていた。さもないと、強引に夜這いされるから。
あまりこのことは考えないように、空気を変えるため話を振った。
「あー……シャークんは、したいこととかないの?ほら、別に仕事とか無いわけだし」
「したいこと……あっ、俺色んなとこ行きたい!俺この街しか見たことないから」
「旅か…いいね。希望とかない?海とかでもいいし抽象的でもいいよ」
「うーーーん………あっ!俺“桃源郷”行ってみたい!」
「“桃源郷“…?」
「ほら、前教えてくれたじゃん!1回見てみたいわ!どんな場所か。」
そう弾けるように語る声とは対象的に、冷や汗をかき眉を下がらせ返事をした。
”桃源郷”まさか本気で考えていたなんて。本来なら平和で自由な別世界、天国と意味することもある場所だ。ある意味ぴったりかもしれない。俺が思う桃源郷を探す旅、死に場所を選んでもいいだろう。最後くらいいい景色を見ても誰も怒ることは無い。それにシャークんを付き合わせる?それは出来れば避けたいが、目を輝かせてこっちを見てくる。
「あーー…っと、シャークんはどんなものがあったら桃源郷だと思う?」
「桃源郷って天国のような場所がこの世に存在するってことだろ?ならー…」
また隠してる。桃源郷は本来なく、人々が心に秘め、いつか行けるように心の安寧の様な場所を具象化したところだから、この質問はおかしい。それに探すと見えなくなると言われている、それなのに聞いてしまった。
「うーーん…………分かんねーや!2人で探してみればいいんじゃない?」
「ふふっ、…はははっ!そうだね、2人で見つけ出そうか!”桃源郷“!」
「もう寝よ、明日準備して明後日の朝出発するぞ!」
「えっ、早くない?」
返ってきた答えは、想像とは相反するもので、思わず笑顔で返した。旅なんて家族らしくわくわくする。最後にしたのは、師匠に拾われて1年後くらいだったが、その光景を未だに覚えている。シャークんにも一生覚えているような景色を見せてあげたい。逸る気持ちを抑えて、眠り落ちた。
翌朝、足りない道具を買いに行き、ついでに行きつけの茶屋に別れを告げるため訪れた。
顔を見せると、机の掃除の手を止め俺の隣に座った。
「どうした、なんか聞きたいことでもあるのか?」
「まぁ、それもそうだけど、俺、この街から出ることにするんだ」
「そうか、それがいいよ」
そう笑顔を見せるが、何処か寂しそうな表情にも見えた。正直昨日ぱっと言い出したから本当に出ていくのか、と実感が持ててない。でも、こうして縁のある人に別れ話をするとふつふつと出ていくという実感が湧いてくる。
いつもの三色団子と茶をもらい、談笑する。その流れでおすすめの場所を聞いてみた。やはり茶屋は旅の者が訪れるようで色々な場所を教えてくれた。それを紙に書き記した。
ひとつは、この地方で1番は栄えている街、次に、温泉が有名な街、沢山の花が咲いている丘、最後に教えてくれた場所は…行けば分かるとのことだ。
何故か何があるか教えてくれなく、聞き出そうとするが、口を開けることはなかった。ただ、大きな花が年に1回空と池に咲くとだけ言われた。
最後までけちなじじいで、二度と来るか、と吐き捨て別れを告げた。
粗方荷造りも終わり、最後の自分の布団に入った。ここで寝るのも今日が最後かと柄にもなく浸った。先に布団に入ったシャークんは中々寝付けないようで、もぞもぞしている。意外と俺が思っているより楽しみみたいで、荷造りの時にずっとそわそわしていた。さながらそれは子供のようだった。
(残り35日です)
いつもの目覚ましの声で目が覚めた。天気は快晴で、出だしは最高のようだ。この旅が上手くいくように応援してくれる気がした。
いつもの服に着替え、サングラスをかけたら、それを横からとり、ムスッとした顔がこっちを見ていた。
「どうした、それ返して」
「やだね」
「なんでよ」
取り返そうと手を伸ばすが更に上に伸び、届かない所に。
「別にかけててもいいでしょ」
「俺がやだ、だって必要ないでしょ」
「これがないと落ち着かない」
「そんなに大事?」
「大事大事、理由聞かせてよ」
何故か頑なに返してくれず、不満が募る。なんだかんだ昔からつけてきたから、このまま過ごすと思っていた。サングラスが嫌いなら前から教えても良かったのに。理由を聞き出そうとするが、中々口を割らずどんどん赤面していく。シャークんの考えていることが分かってきてると思ったが、まだまだのようだ。しつこく、聞き出すと、ようやく話してくれた。
「…ーーーッあーーー!もう、お前の顔がよく見えないからだよ!しつこい!言わせんな!!」
「えっ、あっ、…ごめん……」
予想外の返答が返ってきて、おどおどしてしまう。そんなこと思ってたんだ、あっ、そう…
そういえば行為の時よく顔みてきたな〜、とか顔にどんどん血液が流れてくる。見上げると、シャークんは顔を逸らしてこっちから顔が見えないが、耳が赤くなっていた。
俺もやり返そうと、ふと右手をみると、いつものように白い布で自分のコンプレックスを隠していた。
「じゃあ、俺も1つお願いしようかな」
「何?」
「それ、隠さないで?別にもう隠す必要ないでしょ?」
シャークんは少し嫌そうに右手をさする。昔この跡のことで言われたことがあったのかもしれない。だが、俺にとって愛おしい大切な模様だ。2人を繋ぎ合わせたものと言っても過言では無い。
「だって、双子の証だよ。シャークんは俺のこれ嫌い?」
「別にきんときのは嫌いじゃ…ない…」
「だったらいいじゃん。笑う人もいない、居たとしても俺が守ってあげるから」
「ははっ、それもそうか」
そう言って、肌着を脱ぎ、見慣れない肌色が裾から出ていた。いつもあるものがなく違和感を感じるようで、手が忙しなく動く。それを握りしめ、大丈夫、と落ち着かせる。しっとり手に汗がついていてる。
「大丈夫だよ、2人なら」
「シャークん、忘れ物ない?」
「うん!…あっ、ちょっと待って」
大きな鞄に着替えや有り金全部と野宿する可能性も考え色々詰め込んだら、ずっしりと重くなってしまった。残り35日間分の全てがこの鞄に詰まっている。何度も荷物を確認していた筈なのに、ギリギリになって忘れてた物に気づくことってあるよな〜、と走って取りに行く様子を見ていた。
「もう大丈夫、行こっ」
手に持つ鞄は俺の一回り小さいようだったので何を忘れたのか疑問に思ったが、そんなことはすぐに忘れこの旅を楽しむことにした。
5日ほど歩き、最初に訪れた場所は、この地方一の繁華街、「臨薫」。そこは夜でも暗くなることがなく、毎日が祭りのように賑やかな場所だった。栄えているだけあって、眩しいくらい輝く物品や触り心地が良い服だったり、豪勢な料理や珍しい食品を使った料理などがたくさんあって、どれも心を揺さぶるものだった。シャークんは意外と大食いだったらしく、長机が埋まるほどに並んだ料理をぺろりと食べた。俺がそこまで食べないからふたりで丁度いい量だった。
今日寝泊まりする宿につき、久々にゆっくり寝れると安心して部屋に入ると、初めて見る寝台があった。腰掛けると驚く程に柔らかく、ここで飛び跳ねたいと思った。ここならすぐに気持ちよく寝れそうと初めて体験する柔らかいものに包まれる感覚を楽しんでいた。
「もう寝んのか」
寝台の横に立ち俺に向かって問いかける。明かりをつけずにいたため、表情が読めない。少し恐怖を覚えてる。なんで、怒らせちゃった、はしゃいでる姿ダサかったかな、頭の中をフル回転させ、言葉を絞り出す。
「ごめん、流石に早かったよね、もうちょっとおきてょ、んんっ!?……ふっ、んッ!……むっ♡」
当然唇を奪われた。左手で顔を固定させ、舌で無理やり前歯をこじ開ける。柔らかな感触を再確認させられる。どんどん壁に押されて逃げ場がなくなってしまった。
手を絡ませられどんどんキスが深くなる。くちゅくちゅと舌を絡ませる度に隙間から薄い水のような唾液が漏れる。息が苦しくなってきたが、肩を叩いても全く離れようとせず、寧ろ更に激しくなる。少し勃ち上がり、主張している鼠径部を膝でゴリゴリ刺激され、より一層影が大きくなる。
「んふッ!…っは、ふッ、……んあっ、むッ………んん”!」
どんどん体の中の酸素が消えていき、耐えられなくなったので、無理矢理剥がした。肩で息をしながら新鮮な空気で肺を満たしていく。熱い息が一定のテンポシャークんにかかった。さながらその姿は犬の様。口周りについた涎を左腕で拭い、右手を前に出し止めようとするが、また顔が近づき、唇に触れそうになったので左手でシャークんの唇を無理やり邪魔して止める。
「どどど、どうした!?いきなり!」
「んふw照れてんのかぁ〜!かわあいーなぁ〜」
上機嫌で俺の頭をわしゃわしゃと雑に撫でる。声が上ずって、呂律も回っていない。これはもしかしたら酔っているのか?もしかしたら料理の中に酒が入っていたのか、それとも知らない内に呑んでいたのか。どちらにせよ、この状況を何とかしなければ。
「シャークん酔ってんの?早く水飲んで」
「はあ!?酔ってねぇって!おれゃ〜ずっときんときにぃ抱かれてえーの!黙って裸になれ!」
そう言ってズボンに手をかけられる。止まるように言っても無理くり引っ張られる。酔っていても怪力であり、脱がされてしまった。だがその勢いを止めることが出来ず尻もちをついた。その間に水を口いっぱいに含んで、シャークんの口に移した。基本的に口の中に入ったものは飲み込むので水を飲み込ませることは成功した。まだ何が起こったか理解しておらず、ぼけーっとしている。
「大丈夫か?立てる?」
「んー…はこんで」
「え、はあ?」
「はこんで!!」
「お、おう。いくよ?」
「うーん、…んふふふ顔近〜い」
嬉しそうに顔を綻ばせるシャークんに思わずこちらも口角が緩んでしまう。そのままお姫様抱っことでも言うのか、抱き上げ優しく寝台に乗せる。幼子のように無邪気で食べてしまいたいほどにかわいい。何だこの愛らしい生き物は。
「シャークん酔い冷めてきた?もう眠いでしょ?」
「うん…なんか〜…ふわふわする」
「ふわふわするかー…」
態度も口調も幼くなってしまっているから、ついつい頭を撫でてしまう。本人も満足気に体を揺らしいている。本当にかわいいから自分からキスをしてしまいそうだが、ぐっと押し留まる。この状態でのキスは何が起こるか分からない。実際さっきも危ないところだったわけだ。だが、自分の下腹部を見ると半勃ち状態で頭を抱える。シャークんが1人寝たのを確認したら適当に処理するか。
「もう寝ような。もっと水持ってくるから」
「えー…寝ちゃうの〜…?」
まだまだ起きてたいようだが、これ以上は自分が何をしでかすか分からないので、早く寝てもらいたい。これ以上刺激を貰ってしまったらおかしくなってしまいそうだ。ちらっ、とシャークんの方に顔を向けると、俺の下半身を見ている気がした。それを隠すようにそっぽを向く。なんか嫌な予感がする。
シャークんは寝台の真ん中に寝転がり、服を脱ぎ出した。まずい、これはまたスイッチが入ってしまった。
「きんとき〜さっきのキッスで興奮しまくりじゃ〜ん!足りないなら俺が満足させてやるよ?」
そう言って目を細め、手で円を作りその間に舌を通し笑う。その姿でぐぅー!と自分のムラムラメーターが上がり、抑えられなくなった。ベッド付近にあった灯籠の火をつける。シャークんの赤く染まる顔が良く見える。首元に隠してあった俺の印が消えかけている。
「眠くなったらそれで終わるから」
「やる気だね♡服脱がしてあげる」
いつもなら照れ臭くてそんなこと絶対しないが、ばんざーい、って子供みたいに素直に従ってしまった。自分が情けない。常に笑顔が漏れ出て笑ってる。本当にかわいい。自分の唾液を指に垂らし、孔を弄る。そして俺の陰茎に優しく触れて、髪を耳にかけて舐めようとする。正しくその姿は絶景だった。
「シャークん待って、お尻こっちに向けて?」
「ん?うん」
このままでもいいが、今日は俺が柔らかくしたい。俺はシャークんの綺麗に縦に割れた孔に舌を入れた。入れてちょっと下を動かすだけで俺の性器を舐める手が止まる。それが面白くてもっと早いスピードで舌を動かす。片手でシャークんの腰をしっかり掴んで、空いた手でシャークんの陰茎を少し扱うだけで呆気なく達する。
「んにゃぁ!♡それやばい♡へんなかんじ♡♡」
「ほらほら、手止めないで」
チャププ♡、ヂュバ♡と下品な音を立てて刺激する。シャークんは力なく喘ぎながらも俺のモノを亀頭まで咥えて、そちらもヂュバッ♡、ヂュバッ♡と汚い音を立てて吸う。俺は舌引っ込ませ、指で更に解す。すんなり2本はいり、それぞればらばら動かす。孔がひくひく呼吸していて眺めがいい。
「お”っ♡♡指やばい、そこッ、いい…♡ぁっ、あっ♡♡」
俺の角張った骨がいい感じに肉壁を刺激する。もう1本指が入りそうなのでこじ開けて挿れる。3本挿れただけで、シャークんの陰茎がパンパンで少しでも弄ったらイケそう、とか思いつつバラバラ動かす。3本指でナカを探索していき、いつも弄るしこりをそーと撫でる。
「あ”ーそこぉ♡♡もっとぉ、もっとちょーらい♡♡」
「ここ?ここだよね?」
すっかり蕩けた声でオネダリをしてくる。もう俺のをしゃぶる余裕は無いようだ。こくこくと頷きはっ、はぁ、と期待で息が漏れてる。だが分かっていながらわざと、触れないで焦らしていく。きっとトントンと押して欲しいのだが、反応が面白いので軽く触れるだけで終わる。
そうすると、
「んん”ん”〜♡もっとつよぐぅぅ〜!♡♡」
と我慢ならない声を出す。
「ここ?ここ?」
「しょう♡あっ、あっ♡♡くる、く、る♡♡」
「えい!」
「んぉおぉぉお”おぉ!!!♡♡♡♡」
強く前立腺を押してあげると勢い良く絶頂した。へたっと倒れ、全身でイッた感覚に浸ってる。俺の腹とシーツが白く汚れる。浸ってるところ悪いがまだこっちは満足出来てないので後ろから突こうと思う。腰をがっちり両手で掴み、一気に全部奥へ挿れる。バチュン!♡と音とともに粘液で濡れた孔へ入れ込んだ。
「ふ〜♡あっ、ぁ♡……んッ!……お”へぇ?♡♡♡♡」
何が起こったか分かんなかったようで、変な声と共に絶頂してしまった。視界がチカチカして、何も考えられない様子。どうやら挿れたら飛んでしまったようだ。
流石にこんな大きな喘ぎ声が他の宿泊客に聞こえたらまずい。何が起こってんのか近所迷惑だと言われかねないので、近くに脱げ捨てた、俺の下着を丸めてシャークんの口に入れた。ビクビク跳ねて、中イキはずっとしており、腰もはねているので体は起きているが、脳が働いていない。声が全く聞こえないので、今度は前立腺目掛けてずちゃ♡と突いたら、
「ん!んん”ん”ん”んんーーーーー〜〜〜〜っ!!!!♡♡♡♡♡」
と起きたの同時にまた達した。いつものかわいい声が聞こえないのは少し物足りない気もするが、これこれでいけないことしている感じがあってありだと思う。知らず知らずにリミッターが外れ、ぱちゅ♡ぱちゅ♡ぐぷぐぷ♡、と音を立て、激しく腰を振りたくっていた。
「シャークんッ、かわい、ッかわいい♡」
そう言ってあげると、腹の奥がキュンと切なくなり、更に肉壁がうねり、搾り取ろうとしてくる。寝台がギシギシ揺れる。これならこれだけ腰を振っても身体が痛くならなそうだ。羽交い締めのように上にピッタリ重なり、首元にキスを落とす。左手は腰をそのまま掴み、右手で前の突起をぐにぐに、と触り、人差し指と親指できゅ、と摘んだ。シャークんは口が締まらなくなって、下着はもう取ってしまった。
「あっ、あ”っ!!♡♡…ンむり、んっもう、やばッ♡はっ、それっ…イグッ!!♡♡」
「そんなに締め付けられたら…!くっ、ーーーーーー〜〜〜〜~っ♡♡!!!!!」
「んあ”あぁ!!♡♡♡♡きちゃ!♡♡お”っ!おなかよろんでりゅ♡♡♡♡あ”っ!いっぱいきてりゅぅぅぅ♡♡♡♡♡♡!!」
最後に思いっきり最奥を突いて、射精してしまった。低く唸り、どくどくと熱い液がナカに遠慮なく注ぎ込まれる。シャークんはがくんっ!と身体が大きく跳ね、もう何度目か分からないほど絶頂った。後孔からずるりと引き抜き少し喘いでいたが、シャークんはもう完全に寝てしまった。
俺も眠ってしまいたいが、流石にこの状態じゃ寝れたもんじゃないので、シャークんを抱きかかえ、銭湯へ出向く。途中、女将さんに「お楽しみだったようで」と言われてしまい、やっぱり壁が薄かったかと恥ずかしくなった。身体を洗い、シャークんのナカに出した俺の種を全て洗い流し、部屋へ戻る。そしたら、なんとシーツを交換してくれていた。有難いという気持ちと申し訳ないという気持ちでいっぱいになった。明日多めにお金を出しておこう、そう思って眠り落ちた。
(残り30日です)
それから、シャークんにお酒を飲む時はちゃんと言って、と注意したが、昨日の記憶が殆どないみたいで頭にはてなマークを浮かべながら聞いていた。全く、あんな可愛いのをまた見たら体に悪い。
少し観光もしたり、有名な屋台の飯を食べるなりして、この街を離れることにした。次の街に行くには電車で1週間かかるらしい。そこで暇にならない為の暇つぶし、と言っても1週間もしたら飽きるものだが色々買って電車に乗った。
電車に揺られて早2日____時刻は夕刻、日の入り前と言ったところだ。何故かこの景色に見覚えがある。電車に揺られ、隣にはシャークんがいたような他の人だった気もするが。何故か既視感を感じる。それが何かは思い出せない。きっと気のせいだろう、そう思うことにして俺もまた眠ろうと思った。
あれから1週間が経過して、山間部に着いたら温泉街が広がっていた。硫黄の香りが何処からか漂う。色んな効能がある温泉を巡り、シャークんが饅頭を食べている内に、次の目的地への道を聞いていた。次はだいぶ遠くの方で歩かないと行けないらしく、ここでしっかり休んでから行くことにした。
この街で一番の絶景スポットの温泉に入って温まる。温泉は疲れた体に染みる。中々温かいお湯に浸かることなんて出来ないからすごく気持ちいい。今まではある程度人がいたが、朝早いからか2人きりで貸切状態だ。2人きりなのに眠っているような沈黙が続いた。水がちょろちょろ流れている音と鳥が鳴いてる声だけが聞こえる。何を考えいてるのだろう、何に浸っているのだろう。そんなことを考えいるのも忘れるくらいいい光景ではあった。見ていると自分の汚いところも浄化されていくような気がする。
何故かこの景色も既視感を感じる。露天風呂に5人くらいで入って語り合った記憶。組の時に温泉など仲間内で入った記憶はない筈だが、何故なのだろう。
そんなことを思いながらシャークんに目をやると、ふわふわと動いている。怪しいと思って近づいたら、ばたん、と横になってしまった。慌てて抱えると顔が真っ赤になって目を回していた。どうやらのぼせたようだ。すぐに風呂を後にし、長椅子に横にさせ冷ませる。少ししたら目が覚めた。
「俺倒れてた?」
「うん、びっくりしたよ。言ってくれたら良かったのに」
「自分でもなんか分かんなくてぼーっとしてた。俺のぼせやすいみたい」
「この後はご飯食べて、行けそうならここ出ようか」
熱が冷めてから美味しいと評判の海鮮丼を食べた。やはり中々食べれない物を食べることができるのが旅の醍醐味だ。特にナマモノはすぐに腐ってしまうから店でしか食べれない。感動的においしい。一匙すくっては味わい、一匙すくっては味わい。たちまち皿の中は空になる。腹一杯満足して、この街を後にした。
それから通りかかった村で泊まったり、時には野宿もしたりして、歩き続けた。泊まらせてくれた村にお礼として村の手伝いをしたりした。農作業や子守りなど、シャークんは嫌そうな態度であったが、ちゃんと感謝を伝えるのは大事だと教えてやると、渋々手伝ってくれた。ついでに次の花畑と、最後の場所も一緒に考えてくれた。
「”大きな花が年に1回空と池に咲く“ねぇ……あっ、あそこじゃない?もうすぐ大峠で花火がやるじゃない?池は何か分からないけど」
「花火?」
「あー!それだわ!お兄さん、あそこの花火は見た方がいいわよ?もうそんな時期なのねぇ。あそこの行き方はあの大きな山を越えたら川があるから、そこを辿ればここよりもずっと大きな村があるわ。大峠は大きな花火を2日間打ち上げるの。それはもういい景色なこと。きっと今から行けば間に合うと思うから。」
「それに花畑も道中にあるから。」
「なるほど、ありがとうございます!」
感謝を告げてすぐに出発した。残り日数はもう2週間になっていた。まず、シャークんは景色で感動できるのか、という根本的な問題を考えてしまった。大都会も温泉も中々いい場所だったと思うが、ただ日数が減るばかり。それに俺が居たら邪魔なのでは……嫌な妄想ばかりしてしまう。弱気になってちゃ駄目なのは分かっているのだが、疲弊してきているのかそんな妄想ばかりしてしまう。次行くとこが小さな花畑だったらどうしよう、そんな思いをしながら数日歩いた。
だが、そんなことを吹き飛ばせるくらい、そこには一面の花が咲いていた。広大な花畑に柄にもなく走り出した。シャークんもそれに笑顔でついてきた。どこを走っても花しかない。ポピー、ガーベラ、アネモネ、ネモフィラ…夢でも見ているかのような景色がずっと続いていた。ふたりで夢中で駆け回り、さながらその姿は子供のよう。走り疲れてクローバーの上に寝転んだ。シャークんはまだまだ元気で走っている。
その姿を見て思いついた。辺りのシロツメクサを摘んで、俺は器用にシロツメクサを1本ずつ巻いて、編んでいき、花冠を作った。シャークんがこっちに座り込んで尋ねてくる。
「何それ」
「はい、花冠」
「ふふ、こんなの作れんのかよ」
「昔教えてもらったの。やってみる?」
そう言って花冠をシャークんの頭に被せる。サイズがピッタリ合って我ながら良くやったと思った。シャークんは手先が器用ではないので、苦戦しながら編み込んでいった。最初の方はゆるゆるで花がとれそうだが、時間をかけて最後の方ではコツを掴んだみたいだ。だが、俺に比べたらぐちゃ、としていて本人は満足しておらず、また一からやり直そうとしていた。
「やっぱ俺こういうのむいてねーよぉ…」
「いいじゃん、それにそれも綺麗だよ」
「ほんとか?」
「うん、俺に頂戴?」
ふたりお揃いの白い冠。それをふたりで笑いあった。なんとも幸福、皮膚が輝き出すような柔らかい笑顔で楽しそうな笑い声が花畑を包んだ。
シャークん、
と呼ぶと
何?
と目を少し細め少し首を傾げ何を言われるか待っている。シャークんの青い左手を取り、シャークんが来る前に作っていたシロツメクサの指輪を、薬指に通した。
「ずっと俺の隣にいてください」
風が吹き、花びらが辺りを舞う。 俺がシャークんを幸せにして寿命を全うするまで一緒に暮らしたい。その想いが高まり、ついついカッコつけプロポーズみたいになってしまった。
「なんだよそれ、ガキでもやんねーぞw」
そう言って強がるシャークんだけど、顔は照れてどんどん沸騰したみたいに赤くなっていた。大層なものでも無い指輪なのにそれを大事そうに太陽に透かしたりする。それを見て段々照れくさくなっていき、また走り出した。ふたりだけの幸せな時間が全てを置き去りにし流れていた。
「きんとき、俺にあんなこと思ってたんだ」
「何んだよ」
「もっかい言ってくれてもいいんだぜ」
「言わねーよ、恥ずかしい」
「へへっ、照れてやんの」
さっき言ったことをからかわれる。ほんとに悪戯好きなんだから。顔を逸らすがわざと覗いて様子を伺ってくる。頬には満足そうな笑いの皺がニンマリと刻まれて、にやにや笑っている。夕刻の赤く染まる空が視界を邪魔する。眩しくて前が見えない。2人の影が長く伸びる。その姿は家族そのものだった。
長い旅も終わりが近づく。山を下ると本当に川があり、それを辿れば少し大きな村があった。
残り日数は2日。もはや自分が死んでもいいから最期にいい思い出を作ろうと考えが変わっていた。最後に泊まる宿に荷物を置き、少し村を見ることにした。会話はほぼない。それは何日も一緒に過ごしていたら話すこともないと言われたらそうだけど、明らかに今日は会話が弾まない。
「少し早いけどご飯にしようか、」
この空気を切り抜けようと口を開いた。うわずった声は、ただ沈黙の重さから逃げようとしているだけだ。何故か体に冷や汗が流れる。俺何か気に触ることしたのか、今嫌われちゃったらどうしよう。また自分の嫌なとこが浮き彫りになって出てくる。
「あ〜、うん。でも今日前言ってた花火があるらしいから出店でよくねぇか?」
「あ、今日なんだ。ごめん…」
頭がぐるぐるする。何を話せば喜んでくれる、何をすればいつも通りになる。そんないつも当たり前に出来たことが出来ない。息が詰まりそうな空気がまた流れる。そのまま何処かぎこちない会話が空が暗くなるまで続いた。
今日、明日はこの村の祭りで、最後に花火が打ち上がるようだ。暗くなってくると人も集まり、自然と会話ができ、話さない時も人の賑やかさで気にしなかった。なるべく遠くの方で人が少ない場所で観る事にし、手にはいっぱいのご飯を持って花火を待機していた。
黙々と食べていたら花火が上がる前に食べ終わってしまい、暇になる。気の引ける話題なんてとうに無くなってしまった。つくづくつまらない人間だと思う。風がふたりの間を通り抜ける。ねぇ、と声をかけようとしたら
「あのさ、」
と塞がれた。
今日初めて話しかけてくれて、なに?、声がうわずむ。
「俺、ずっと隠してたことがあってさ、」
「…う、うん」
「ずっと、お前を、_______!」
その瞬間花火がヒューと打ち上がり、途方もなく大きな傘が1つ開いた。よく晴れた夜空を覆い尽くすように、巨大な菊型の花火が次々に炸裂する。光の玉が一瞬のうちに視野いっぱいにまで広がってゆく。きらきらとした火の粉が今にも顔面へ降りかかってきそうだった。横に目をやると、シャークんが瞳を大きく開けて空を見つめていた。花火が赤や緑へと色彩を変えるたびに、菊や滝が空一面に広がるたびに、彼の頬は様々な色に変化していった。
嗚呼、そうだ思い出した。電車の光景も、温泉で入った記憶もあるのも、死んだ後に5人で旅をしたんだ。お互いの気持ちを昇華する為に。この花火と共に。その時にシャークんにも会ったし、俺を殺した奴も居た。全く知らない奴ももちろんいた。何故また生き返ったのか、何故あの時俺の魂ごと昇華しなかったか。答えはもう出てるだろ、双子の弟、シャークんのことが心残りだったんだろ。シャークんは嵯牙で家族を教えてもらった、嵯牙で生き方を学んだ、それが堪らなく憎かったんだ、許せなかった。俺がしたかった事、教えてあげたかったこと、全てが取られて許せなかったんだ。その想いが強くてまた繋ぎ合わせてくれたのか。
また俺の魂が昇華するような感じがした。ここが最期に見る光景で良かったよ。明日気持ちよく死ねる気がする。そういえばどうやって死ぬんだろう。動物とか人が急に現れてくるのだろうか。そんなことは明日になれば分かるんだから、今はこの幻のように鮮やかな花火を弟と楽しもうと思った。シャークんも話す気はもうこれっぽちもなさそうだ。
「奇麗だね」
「?うん」
よく声が聞こえなかったみたいで適当な返事が返ってきた。シャークんも花火に見とれているみたいでずっと黙って見ていた。これがシャークんの記憶にずっと残っていればいいな。その願いを最後に一番特大の花に込めた。
辺りから拍手の音がする。どうやら最後の花火だったらしく、みんなぞろぞろ帰ろうとしていた。空はもう黒い煙が霧みたいに星を隠していた。
「帰ろっか」
そう言って煙臭くなった場所を後にした。その帰りはさっきの沈黙が嘘みたいに話が弾んだ。シャークんはずっと今日何を告げようか考えて、タイミングを伺っていたのか。そして何を言いたかったんだろう。それを聞きたかかったが、自分の口から言って欲しいから待つことに決めた。たとえ聞けなくても。
(残り1日です)
とうとう来てしまった人生最後の日。最早全てが輝かしく見える。空は快晴、鳥の鳴き声もいつもは気にもとめないが、こんなにかわいいものなのか。そして、大好きな弟の寝顔。これが見れただけでも幸せだっただろう。気持ちよさそうに眠る顔、かわいくって頭を優しく撫でる。本当に好きだ、どうか俺のいない世界で幸せになってくれ。何か言おうとするが、口が震え何も言えない。おでこにキスをし、この部屋を後にしようとした。そしたら、
「おい」
と腕を掴まれ思いっきり引っ張られる。どうやら起きていたみたいだ。
「でこじゃなくて口にしろよ」
「そこかよw」
そんな冗談で笑いあった。しんみりとした空気が明るく変わる。大きなあくびをして背中をぽりぽり掻く。いつもと変わらない態度で安心する。あんまりしんみりしない方が悟られなくていいなと少し反省した。
「で?どこ行こうとしたんだよ、俺を置いて」
「ちょっと散歩するだけだよ」
「ほんとかよ」
やっぱり置いていこうとしたことはバレていたらしい。最後は一人でいようと思ったけど、それは難しいみたいだ。ふたりで最後の目的地へ向かった。昨日村の人に池に咲く花を尋ねたら、そこの池の睡蓮と教えてくれた。
お昼すぎにご飯を食べ、そこに向かうと、もう太陽は西へ向かっていた。その道中は思い出話が語られていた。
最初は仲悪かったね、
本当にあの時嫌いだったもん、
急に仲良くなったね、
あの時助けてくれたしきんときがずっと俺の事気にかけてくれたからだよ、
えっちは流石に強引すぎだったね、
あれしか分からなかったから、
この旅楽しかったね、
本当に楽しかったありがとう、
着いてからも池の周りを歩きながらそう言ったことを語り合っている。なんで急に思い出話なんかするんだ。もう終わると悟っているように。
「本当にありがとうね、俺色んなこときんときから教えて貰って本当に”幸せ“だった」
”幸せ”だった。そのフレーズで俺は100日間のことが報われた気がし、もう思い残すことは無い。シャークんが幸せならそれでいいんだ。俺の事なんかどうでもいい、どうか俺がいないところでも……。
「幸せだったんだよ、本当に。でもそれだけじゃダメなんだよ。」
そう不穏な台詞を吐き捨て、池の中に入る。そこを歩く姿は本当に天使のようでお迎えに来たようだった。何がダメなんだ、それだけでいいじゃないか。
「……きんとき、誕生日おめでとう」
「え、今日誕生日だっけ?」
「そうだよ、だから俺も誕生日だ」
「そうだね、おめでとう」
「ふふっ、ありがとう。7/9、俺達の誕生日だ。丁度出会って100日記念日でもあるよ。」
誕生日を祝われたことなんて人生で殆どないからとっくに自分の誕生日さえ忘れていた。誕生日だったのか、何かしてあげればよかった。
待て、なんで今日が100日経ったのを知っているんだ。まさか…
「誕生日だから、俺のおねがい。俺の言うこと全部信じろよ」
「……俺さ、隠してたことがあったんだ。ずっと。早く言わなきゃ、終わらせないとと思ったんだけどね。
俺は目的を持ってまた転生してきたんだ。もしかしたらきんときもそうだったんじゃないか?前に話したことがある気がするんだ。
で、俺的にはその目的はすぐ終わると思ってた。楽勝だと思ったんだ。でもきんときはずっと俺に優しく接してくれた、教えてくれた。それで段々おかしくなってきちまったんだ。いつしか、その目的を忘れてこの生活を楽しむことにしたんだ。おかしいんだ。自分がどんどん変わっていってる。自分がどんどんきんときを好きになっているんだ。今は嫌われていないかなとか思っちゃってんだ。不思議だろ、ほんと。
きんときは俺に”本当の家族“を教えてくれたんだ。嵯牙のことは勿論大好きなんだけど、それよりも強い縁を感じるんだ。
昔、命乞いをする人が言ってたんだ。家族だけは許してくれ、って。それが理解出来なかった。自分の命よりも大事な命なんてないだろう、って。でも今なら分かる。自分の命まで投げ捨ててまでその人の幸せを願うのが”本物の家族“なんだなって。
だから……ね、…………」
もうその次の言葉を聞きたくない。最悪の言葉だけが頭の中でいっぱいになる。やめろ、そんなこと絶対に言うなよ、杞憂であれ、ゆめであれ!俺も幸せだったよ、俺も嫌われちゃったらどうしようとか考えていたんだよ、だからそのまま生きててくれ、どうか_______
「もう死ぬしかないんだ」
聞きたくない台詞が頭の中で反芻する。嘘だ嘘だ嘘だ!嘘だと言ってくれ。シャークんの表情は笑顔で強がっているが、目には涙が溜まって、声が震えていた。何か言わなければ行けないはずなのに声が出ない、身体が固まっている。今にも消えそうな声で続ける。
「俺の転生した目的は、”きんとき、お前を殺すこと“だ。最初は本当に殺そうしたんだ。でも一筋縄じゃいかなくて。じゃあ頭を使おうと思って、毒を飲ませようとしたり、油断させた時に殺そうとしたんだ。でもまだ一緒に居たいなって思っちゃって。いつか殺そう、いつか殺そう、期間はあるから、って。でも気づけば残り半分、1ヶ月、2週間って過ぎてたんだ。
だから、この旅で嫌なことがあったら殺そうって決めたんだ。だけどなんでだろうね、きんときが完璧だから全然見つかんないし、寧ろどんどん好きになってるし。だからもう諦めることにしたんだ。」
「俺に素敵な景色を見せてくれて、ありがとう」
パンッ!
シャークんの服の袖に隠していた俺の相棒の銃が顕になり、彼の頭目掛けて発砲された。赤い糸のような細い血のすじが頭から大量に出てきた。目の前の光景が信じられなかった。ただ血塗れの彼に駆け寄り、抱きかかえた。ただただ叫ぶことしか出来ない。どんどん池が赤く染まる。彼の美しい顔がどんどん血で染っていった。
「嫌だ、嫌だ、生きて一緒に暮らすって!約束したじゃん!」
「ごめん……できなくて……」
「なんでなんで!そんな、シャークんばっかこんな目に遭わないといけないの!!!」
「ははっ……今までの償いだよ。顔見せて?…ふっ、涙でぐちょぐちょじゃん」
頭からの出血が止まらなく、どんどん冷たくなっていくのが感じてしまう。もうすぐで死んでしまうんだと嫌でもわかってしまう。
「きんときは……本当に、なんでも知ってるね…………ここ、…が……桃源郷か……いいとこだ……い、けて、…良かった……」
どんどん声が小さくなって、今にも消えてしまいそうだ。身体がぐったりとしていて、力が入らない。嫌だ嫌だ。そんな思いが強く抱き締めてしまう。最後の力で口角をふっと上げ、
「ありがとう……兄ちゃん…………だい、……す、…………き……」
そう言って目が虚ろになり、息絶えた。揺さぶっても、名前を呼びかけても反応がない。血が無情にも頭から流れ続ける。涙が止まらず、嗚咽してしまう。また守れなかった。何故こんな目に合わなければならなくてはいけないのだろうか。どこを間違えた、チャンスがある筈だったのに。嫌、ある訳ないか。これは神の悪戯だ。ふたりが幸せになる道など無かったのだ。
もうどうでもいい。シャークんのいない世界など灰色同然だ。
池に沈んでいる銃を拾い、シャークんに持たせるように指をかける。その上から自分の手を重ねる。これで終わりだ。何もかも。せめて殺されるならシャークんに殺されたい。
「本当に最後まで君のことが分からなかったな……。」
「今からそっちに行くからね。一緒に本物の桃源郷へ行こう、一人になんてさせないよ」
パンッ!
左胸を命中させた。いつも狙っているからきっとすぐに逝けるだろう。池の血の面積がどんどん広がる。
知っているか、シャークん。”桃源郷“はね、川を渡ると桃の木が沢山生えててね、神や天国にいることに許された人が自由に幸せに暮らしているんだ。全ての病を治す温泉もあるらしいし、薬もあるらしいんだ。一緒に行こうよ。
太陽の光が刺すようにこちらに向けて光っている。まるで世界も今日終わるみたいに空が赤く染った。
不思議と全く痛みを感じない。左胸から血が流れていき、身体中が忙しなく動いているのを感じる。もういいんだ、まだ生きようともがかなくても。もう全ていいんだ。最悪な誕生日プレゼントをありがとう、神様。俺の願いは聞いてくれるかな。
「来世では………弟と…………幸せに、…生きれますよーに……」
やがて空は暗くなり、遠くの方で花火が打ち上がった。血溜まりの真ん中には身体を寄せて、青い手同士を握りしめる双子の姿があった。
おまけ
ハッピーエンドにさせたい方向け。
「シャークんって花冠作れんの!?」
「そうだよ、意外でしょ?」
「誰かに教わったの?」
「それが記憶ないんだよね〜、教わったのかも。」
「それか前世の記憶とか?」
「なわけ!w」
下校途中のnakamuと河原でそんなことを話しながら他の面子の帰りを待つ。今日はみんなで誰が1番水切りで飛べるかという実に男子高校生らしいことをするって決めていた。
俺自身も花冠の作り方を覚えていることに驚いている。まぁ幼稚園の記憶は覚えてないもんだしな。くだらない話で4人が来るのを待った。
「お待たせ〜」
「おせーぞ!何してたんだよ!」
「いや、掃除の時につい野球してたら先生に見つかっちゃって〜」
「なにしてんだよwww」
「早くやろーぜ、負けたらサイゼ奢りな」
「え”ー!きつ!」
一気に周りが騒がしくなった。もう太陽は沈みかけている。周りの人達は帰ろうとしていた。
よし、と立ち上がったら、
「あっシャークん、髪に葉っぱついてる。」
「ん?あぁ、ありがと」
「待って、そこに寝転んだからめっちゃ背中に葉っぱついてんじゃん!」
「えー!まじ?」
「ほら、取ってあげるから動かないで」
そう言ってせっせときんときが綺麗に取ってくれた。その光景を黙って文句がありそうに見てくる4人。
「なんかさ、きんときってシャークんに甘いよね。てかお兄ちゃんみたいに見える」
「は?そうか?」
「そう、逆にシャークん弟みたい」
「そんな風に見える?」
「見える見える。しかも前々から思ってた。前世が兄弟だったとか?」
「そんな訳ねぇーだろwいいからやるぞ。きりやんとか絶対下手だと思うから奢らせるぞ」
「よしきた」
「はー!?シャークんにサイゼで暴食して奢らせるから」
その騒がしい声は日が完全に落ちるまで続いた。
あとがき
(全然読まなくていいよ!)
半年ぶりくらいですね。お久しぶりです。
この小説はいい双子の日の時に思いついた作品です。本当に半年ぶりに小説書いたのでめっちゃ読みづらかったと思いますし、長くなってしまいました。最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。えっちだけ読んだ方もえろかったでしょうか?
まず私は🪷🐉が大好きで、最近まであの兄弟はBLとかじゃなくてあのENDだからいい!と思っていた(今もその心はある)のですが、考えが変わり、というか性癖が変わりまして、受け優位が大好きになってしまったので書けました。本来のシャークんは受け優位では解釈違いをおこしてしまうのですが、🪷🐉軸ではそんなシャークんがいたっていいなって思った次第でありまして、今回のエッチシーンを書きました。
まじでえっちなこと書く時がいちばん楽しい。もっと書きたい。いや正確には書こうとしたのですが、導入が面倒くさくてそこで飽きるというのが3つくらいあります。小説って飽きるのとこれって面白い?って思ったら負けですからね……今回は終わりが結構気に入ってて早くそれを書きたいから飽きずに完成できました!
私は死ネタ別に好きって訳ではないと思ってんですが、なんかあの兄弟幸せになって欲しいけど世界がそれを邪魔してきそうですね。可哀想。
話を戻しますが、皆さん的にどうだったでしょうか?初めての短編小説で矛盾や誤字脱字、変な所があると思いますが面白いと思ってくれてら幸いです。考えいる内に色々思いついて変えてたり、天才的なシュチュ思いついた時にメモできなくて苦虫を噛み潰したような顔で書いていました。それと今回の話を勝手にイメソンと考えているのはpicdoさんの「桃源郷へ行こう」となとりさんの「プロポーズ」です。どちらもいい曲なので是非聴いてください!
話は変わって、なんで最近投稿しなかったのか、Twitterの方でもいなかったのかと言いますと、
・モノパスを見なくなった
・最近限界ばっかりみてる
・地雷が増えた
大きくわけてこの3つです。モノパスは私に合わなかったです;;私は”ワイテルズ”って言う名前の6人が好きだったんだって動画を見る度に思ってしまうので離れてしまいました。嫌いって訳ではないんですが、めんどくさいオタクの部分が出てきてしまいます;;
限界は昔っから好きなんですが、ワイテが終わってから特にのめり込んで、配信ないと虚無るほど好きです。(因みに書く予定はありません!何故なら読んだ後に罪悪感で殺して欲しいと思っちゃうので!)限リロにも行きました。アリーナで死にました。
あと地雷が増えたは本当に一番それですかね……本当にめんどくさいです。大きな声では言えないのですが、自分のことをBLでは私が正しい。全知全能。他は間違ってると思っているので、あんまり見なくなりましたね…特にここで解釈違い起きるので……。他の自カプはあんまし起きないんですが。切実に助けてください。昔のようになんでも食べた頃に戻りたい。でもそれはそれでTwitterでバカにされるんだよなー…
あと絵も投稿しないのはBLってだいたい2人じゃないですか?1人描くのにも何時間もかかるのにそれをもう1人!?って疲れるから描いてないですね。最近絵うまくなったけど、まじで筆が遅いです。
すごくどうでもいいところまで話してしまいましたね。兎に角、まだ私の事フォローしてくれる皆さんに最大の感謝を。もしまた小説書きたくなったら書くので。ワイテだったらまた書くと思います。消すか迷った時もありますが、フォロー通知とかの通知が来るのでまだ読んでくれている人がいるんだ、って思って留まってます。いつも本当にありがとうございます。
(昨日お気に入りの小説が消えてて荒れ狂ったので、)私にはいるか分からないですが荒れ狂う人の為にも、垢バレしない限りは消さないと思います。
改めて最後まで長い物を読了して頂き、ありがとうございました!