テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
46
☘️💟宮静🪻📗
第三話:血塗られた休息
パドキアの夜風は冷たい。
リアとイルミが降り立ったのは、喧騒から切り離された高級ホテルの最上階だった。
今回の依頼——それは、マフィアの幹部数名を「跡形もなく」消すこと。
「リア、左は任せていい?」
イルミが指の間に数本の針を挟み、無機質に問いかける。
「ええ。右の三人は私が片付けるわ。……終わったら、美味しいお菓子でも買って帰りましょう」
リアは銀髪を一つに束ね、音もなく闇に溶けた。
彼女の武器は、極細の鋼糸。
月光を反射して一瞬だけ煌めくその糸は、獲物が気づく前にその命を刈り取る。
「……っ!? 何だ、今の——」
ガードマンが声を上げる暇さえなかった。
リアが指先を微かに動かすだけで、銀の糸が空を舞い、標的の喉元を優しく、そして確実に切り裂く。
「おやすみなさい。地獄で後悔するといいわ」
返り血を浴びることなく、舞うように標的を仕留めていく姿は、まさに死神の舞踏。
一方、反対側ではイルミが正確無比に針を打ち込み、人間を「人形」へと変えていた。
わずか数分。
豪華なスイートルームは、静寂と死の臭いに包まれた。
「終わったよ、リア」
返り血を一滴も浴びていないイルミが、平然とした顔で戻ってくる。
リアもまた、束ねた髪を解き、ふうと息を吐いた。
「相変わらず手際がいいわね。……さあ、帰りましょう。キルアがまた拗ねてるかもしれないし」
二人は建物の屋上へと向かう。
ヘリを待つ間、イルミがリアの頬に付いた、自分のものではない血を親指で拭った。
「……キルアのことばかりだね、君は。僕のことも、もう少し見てよ」
その声には、弟に対する執着とはまた違う、湿り気を帯びた独占欲が混じっている。
「見てるわよ、ずっと。……世界で一番近くにいるのは、私でしょう?」
リアがイルミの胸元に軽く頭を預けると、彼は満足そうにその銀髪に顔を埋めた。
殺戮の直後だというのに、二人の間には奇妙なほど穏やかな時間が流れる。
「ねえ、イルミ。もし、いつかキルアが本当に家を出ていったら……あんたはどうする?」
「決まってるじゃないか。追いかけて、壊してでも連れ戻すよ。……リア、君も手伝ってくれるよね?」
イルミの問いに、リアは即答しなかった。
ただ、夜空に浮かぶ欠けた月を見上げ、静かに微笑むだけだ。
「……さあね。その時が来たら、考えてあげる」
家族という名の鎖。
双子という名の共犯関係。
二人の影は、夜の闇に溶けて一つになった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!