ひっさしぶりに投稿するわw
すんごーーーい短い
設定が違ったらごめん!
「君の音」
昼休みの音楽室。ピアノの鍵盤にふれる音だけが、静寂のなかで響いていた。
水がそっと指を置いたのは、E♭の音。青はその横で、じっとその響きを見つめていた。彼女の瞳の奥には、数列のような色彩の軌跡が揺れていた。
「今の音、何色に見えた?」と水が問う。
「……深い青。夜の入り口の色」
水はもう一音、Dを弾く。青がわずかに首を傾けた。「赤紫。少し不安定。だけど……綺麗」
「じゃあ、二つ重ねてみようか」
和音が鳴る。
青は目を閉じ、数秒の沈黙のあと、ぽつりと呟いた。「今のは……あなたが“話そうとしてる”音だった」
水は驚いたように彼女を見た。「わかるの?」
「声にならない気持ち、音になると、かすかに読める。でも……全部じゃない。少しだけ」
水はふと笑った。「それで十分だよ。全部、じゃなくていい。青の世界に、少しでも僕が届いてるなら」
そのとき、扉の向こうから足音がした。
赤が、音楽室に顔をのぞかせた。「あ、ここにいたんだ」
その背後には、桃と白と黒の姿もあった。どうやら、青が描いた“音の地図”を頼りに、集まってきたらしい。
「これ、青が描いた“地図”? すごいな。まるで音の羅針盤だ」と桃が驚く。
「色と線だけなのに……不思議と、意味がある気がする」と白も呟く。
黒は水の脇に座り、楽譜の空白を見つけて鉛筆で小さく「沈黙のなかにある想い」と書いた。
「……話さなくても、伝わることってあるんだな」
水がうなずく。「でも、沈黙って、本当は色とりどりなんだよ」
青がスケッチブックにそっと描いたのは、六人がそれぞれ異なる色で円を描く図。その中心には、淡い白が灯っていた。
誰も声を発さなくても、そこには確かに会話があった。
言葉にならない気持ちが、色と音と沈黙に宿っていた。