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翌朝、 また聖奈さんに起こされた。
「あれ?なんでベッドで寝ているんだ?」
昨日は確か…酔っ払った聖奈さんをベッドに運んで、俺は飲みが足りないからソファでお酒を飲んでいたよな?
ヤバい…その後の記憶がないぞ……
俺は恐怖に駆られ、恐る恐るキッチンにいる聖奈さんに問いかけた。
「なぁ。昨日は聖奈がベッドで寝てたよな?俺はソファで寝たと思ったんだけど…まさか…」
それを聞いた聖奈さんは、動かしていた手を止めて、両手で顔を覆う。
「うわぁーん。ひどいよぉ…」
いや、アンタ嘘泣き下手やなぁ。
「ありがとう。何もなかったんだね」キリッ
俺はアルカイックスマイルで答えとした。
「ぶぅー。でもびっくりだったよ。人の気配で目が覚めたら、聖くんが徐ろにベッドに入ってきたんだから!
すぐに寝てたけどね。
ドキドキを返せー!」
絶対ドキドキしてない奴のセリフだな。
今日も美味しい朝食で餌付けされた俺は、聖奈さんの話を聞くことに。
「と、言うわけで私は大学を辞めて来るね。あっ。もちろん辞めるのは友達には言うけど、聖くんのことは一切匂わせないから安心してね」
聖奈さんみたいな美人が、俺みたいな呑んだくれと一緒に暮らしてることなんて話せないだろうから、そこは心配していない。
それよりもこの行動力はすげぇな。決めた次の日には大学を辞めるんだもんな。
よく今まで聖奈さんの親は聖奈さんを言いなりに出来たな……
「わかった。俺はネットで砂糖とかをポチポチしとくよ。後、スペアキー持っていってくれ」
暫く色々していたら、聖奈さんが帰ってきた。
「ただいま。手続きってなんでこんなに面倒なんだろうね」
「おかえり。まぁ、手続きなんてそんなもんだ」
手続きは俺も嫌いだ。同じような書類にサインしなくちゃいけないし、もちろん目を通すから同じような内容だったらキレそうになる。
「でも、これからもっと面倒な手続きが待ってるから、頑張らないとね」
はて?なんのことだ?
「聖くん?もしかして、なんにも考えてないの?」
「なんのことだ?」
再び疑問が出たから聞いてみた。
「起業だよ。このままだと私達ずっと無職のままだよ?
もちろん個人事業主でもいいけど、先のことを考えると法人で起業したほうが信用度が大きくなるし、不動産を借りるときにも有利になるからその方向で進めたいの」
起業?個人?法人?
何も考えてない……
「任せていい?メリットデメリットも全然理解出来そうにないから…」
「もちろん!必要な書類は集めてくるからサインはしてね。後、前に決めたことをする会社を作るのに、初期費用が500万くらいはいるからね。
その間、聖くんは異世界に砂糖の補充よろしくね」
そうだな。砂糖の補充はやらなきゃな。
なんか大口の取引が終わったから安心してしまっていたが、継続して収入を得るためにも砂糖の輸出は続けないとな。
まずは500万円もいるのか……
まぁ、考えるよりこれだけ必要って言われる今のやり方のほうが、俺には合っているな。
いくら稼いでも、お金はすぐになくなるのなんで……
「わかった。俺は夕方に一度異世界に行ってくるよ。
白砂糖瓶を補充したら戻ってくる」
ストックが残り100キロ(異世界価格800万相当)あるが、宿を借りていないので、一度には運べない。
少しでも多く輸出する為に、聖奈さんのカバンにも詰めて行くことに決めた。
夕方。異世界に着いた俺は商人組合に来ていた。
「ハーリーさん。こちらが今日の入荷分です」
別室で白砂糖30キロ分を渡した。
「ありがとうございます。今は少量の注文が近くの商人組合から来ています。
書簡が王国全ての商人組合にまわるまで、もうしばらくかかります。
それと今の売り上げですが、お渡しいたしますか?」
組合長やハーリーさんの話だと、本格的に売れ出すのは一度少量を頼んだ所が使い始めてからになるってことだったから、まだ時間は掛かるだろうな。
「お願いします」
そう伝えて、俺は預かり証を渡した。
準備していたのか、すぐに戻ってきたハーリーさんから渡されたのは金貨8枚。つまり800,000ギルだった。
「今日の入荷分を足した預り証になります。
これから注文が殺到すると予想されますが、どうしますか?」
これは以前相談されたことだな。
注文が殺到した場合、売り切れまでそのまま売るのか、販売数を調整するのか、はたまた値段を上げるのか。
「今は販売数の調整でお願いします。値上げの方の判断はハーリーさん達に任せます。
いずれ安定供給を目標にしていますが、まだまだ時間が必要です。
今は少しづつの補充になると思います」
「わかりました。馬車のご用意も整っていますので、いつでもお譲り出来ますよ」
そうだった。馬車もあるんだった。
でもまだギルが足りないし、これは宝石を買う予定のものだからまだ無理だな。
「すみません。もう少し売れて余裕が出来たらお願いします」
「お金は売れた後でも構いませんよ?」
そうは言ってくれても、管理する宿にずっと泊まれないんだよな。
「ご厚意は嬉しく思いますが、確実に払える様になってからにしますね。
不定期で申し訳ないですが、なるべく日を置かずに来ますね」
別れの挨拶もそこそこに、俺は慣れた足取りで商人組合を出た。
綺麗に揃えられた石畳を歩いていると、美味そうな匂いがしてきた。
釣られて向かうと、屋台で焼き鳥の様なものを売っていた。
「すみませーん。一つください」
「あいよ!300ギルだよ」
屋台の人にお金を渡し、謎肉の串焼きを受け取った俺は、近くのベンチに座り串焼きを食べた。
「うまっ!何の肉だよこれっ!?」
中々の美味さだったので、聖奈さんに持ち帰ろうか考えたが、今まで生物を転移していないから、やめておくことにした。
「いつも頑張ってくれているから、何かお土産でも買って帰りたいな」
そう考えた俺は、露店を見て歩くことにした。
色々見ていると、ふと、ハンドメイドのアクセサリーが目についた。
「すみません。これください」
露店の人に声を掛けて、青い色の石に紐を通したブレスレットを掲げて聞いた。
「ありがとうございます。3,000ギルになります」
小銀貨を丁度3枚渡し、お土産を購入出来た。
物にしては割高感はあるが、全部手作業であることを考えると妥当か。
問題は聖奈さんが気にいるかどうかだが、そこは心配していない。
異世界の物ならあの人は何でも喜ぶだろうな……
ぶらぶらした後にいつもの店に来た。
「またサファイアを売ってもらえませんか?」
サファイアばかり大量に買う俺を不審に思うだろうか……
しかし、地球での生活の為、今は仕方ない。
「いつもありがとうございます。お客様がサファイアを購入してくださるので、正直助かっています」
どうやらこの世界では、本当にサファイアは嫌われ者の様だな。
「そうですか。こちらにその意図はないですが、それなら何よりです」
「今、ご用意しますね」
いつもの美人店員さんが奥へと引っ込んでいった。
何故か感謝されたが、怪しまれたりするより余程いいな。
「お待たせしました。こちらになります。失礼ですがご予算は如何程でしょうか?」
おっ!俺が選べないことを知っているからか、先回りして聞いてくれたな。
助かるぅー!
「今回は700,000ギル程ですね」
そう伝えると、用意していたのか、すぐに言葉を続ける。
「700,000であれば、他のちゃんとした宝石も買えますが…本当にサファイアでよろしいのですか?
もしや、うちに気を使われているのではないですか?」
気なんか使ってねぇよっ!サファイアよこせ!
「大丈夫ですよ。サファイアが気に入っただけですから。
その予算でお願いしますね」
輸入品の仕入れを終え店の外へ出ると、空には既に月が出ていた。
ここはリゴルドーの中でも比較的高級店が並ぶ通りだ。
店の外観も綺麗で、恐らく魔導具のモノだと思われる灯りが石畳の道を照らしている。
プレゼントを気に入ってくれると良いな。
その想いを抱えて、地球への帰還を急いだ。
ガチャ
「ただいま」
寝室から出た俺は、リビングに居た聖奈さんに挨拶をした。
「おかえりなさい。どうだった?」
どうだったとは、砂糖のことか?
「少し売れていたぞ。800,000ギル貰ったから、100,000ギルを残して宝石に変えたよ。
後、屋台で謎肉の串焼きを食べたけど、美味かったよ」
そう言って宝石を出したが、宝石には目もくれず……
「ええ!!いいなぁ。ずるいなぁ…持って帰ってないよね?ね?」
やはり宝石よりそっちに食いついたか……
「残念だけど、生物の転移はしたことがないからな」
俺の答えに残念そうに俯いた聖奈さんに、とっておきをお見舞いした。
ジャラッ
「でも、異世界のハンドメイドアクセサリーはあるぞ」
そう言ってお土産を渡す。
「えっ!?嘘っ!これって私に!?」
驚く聖奈さんに頷いてみせると、
「ありがとう!大切にするね!」
満面の笑みで応えてくれた。
「いつもお世話になってるからな。でも、安物だから気にせず使い倒してな。
デザインが気に入らなかったら、しまっててもいいけど」
「こんなに可愛いんだからつけるよ!
ホントにありがとねっ!」
こんな安物で喜んでくれるのなら、また買うかな。
いや待てよ。その前に聖奈さんも転移出来るかもしれないな。
満月待ちだけど。
その後、馬車のことや白砂糖のことを伝え、今日の業務連絡を終えた。
残金
1,130,000円(納税分は別にある)
4,000+800,000-700,000-3,300=100,700ギル(次回から端数は除く)