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「明後日には笑い飛ばしてるかな」

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「明後日には笑い飛ばしてるかな」

1 - 「明後日には笑い飛ばしてるかな」

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2022年12月30日

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【必ずキャプションをお読みください】


🌷こちらはstxxx様のnmmn小説です

nmmnの意味がわからない方はブラウザバックをお願いします。


🌷Cpは桃赤。地雷等は自衛をお願いします。


🌷とある素敵な方々の名前をお借りしていますが本人様に一切関係ございません


🌷このお話はフィクションです


🌷活動休止中メンバーが名前だけ出てきます。



長いです‼

↓本編









ただその日は気分が乗らなくて、作業にも全く手がつかなかった。


ただボケっとベッドに寝転んで、たまにエゴサをして、寄ってきたギンちゃんと一緒に昼寝をして。

流石に一食も食べなかったから、そろそろお腹が空いてきたと思って寝室を出た頃にはもう空はオレンジ色に染まっていた。


物置状態になってるキッチンに向かって、冷蔵庫を覗く。

基本冷凍食品で生きてる俺が自炊をするようなものを買ってるわけもなく冷蔵庫の中は飲み物で溢れ返っていた。


「…」


パタンと扉を閉めて、出しっぱなしだった飲みかけの生ぬるい水を飲み干した。 



唐突に、風に当たりたくなった。

けどそんなのは嘘で、ただ逃げ出したかっただけかもしれない。


薄いパーカーを羽織って、スマホと鍵だけ持って、つーちゃんの心配そうな目も全部無視して家を飛び出した。




***




糠雨の降る外は寒くて、薄いパーカー1枚で来たことを後悔した。

じゃり、と砂の音を立てて公園の前に止まると、近くのマンションに住む子供達が五人ほどで遊んでいて、遊具によじ登っては飛び降りて、楽しそうに笑って。

今の俺にはそんな事できないなと思いながらバリカーを越え、一番端のベンチに座った。


楠んだ水色の空が、雲に覆われて。冷たい風が頬を指した。


しばらくその子達の姿を追って見ていた時、公園の真ん中にそばだつ大きな時計の短針が六の数字を、長針が十二を指した。

それから耳に馴染んだチャイムが淀んだ風に乗って流れてくる。


それに気付いた子供達はベンチに放られた鞄をそれぞれ手に取り嵐のように去っていってしまった。


元気だなぁと微笑して、背もたれに寄りかかり上を見上げた。


暗いけどまだオレンジ色の空に一番星が見えて、なんだか寂しくなる。

ふ、と吐いた白い息は空に飲み込まれてしまった。 


そっと、瞼を落とす。 







***






がくんと首が揺れた衝動に目が覚めた。冷たいベンチの感触が背中にあって。

もう夕方で冷えてきた頃、しかもこんな薄着で眠ってしまっていた。

段々覚醒していく脳に、自身の体が随分冷えてしまっている事に気付く。

両の手で体をさするが、何も変わらない。


そろそろ帰ろうかと腰を上げた。


「……」


足が動かなかった。

前に進みたいのに、一歩、歩くだけなのに。それが重たくってしょうがない。 


家に帰ったら、また、配信をして、編集をして、歌を録音をして、脚本を書いて。

また、きっと何か言われる。


それが怖くて、もう、耐えられなくなって。

逃げたくなって、ここに来た。


──帰りたく、ない。



ここにいて そのまま、











突然、濡れないようにとポケットの中に入れていたスマホからけたたましい着信音が鳴る。

激しく震えるスマホに一驚し、半ば無意識に液晶を見た。



「さとみくん…?」


ああ、丁度、声が聞きたかった。






「───もしもし、」





***






長引いた作業がやっと終わって、少し休むかとベッドに横になった時、なんとなくアイツの声が聞きたくなった。


最近忙しくて、完全に仕事の時にしか会っていなかったから、二人でゆっくりくだらない話をするなんて事もしなかった。



鈴を振るような声で俺の名前を呼ぶ声が、好きだ。


きっと作業が終わったと伝えれば俺の好きな声でお疲れ様と言ってくれるだろう。


あいつのアイコンを見ながらニヤけている俺は、多分気持ち悪い笑い方をしてたと思う。

弾む気持ちで、りいぬに電話をかけた。




『───もしもし、』




りいぬの、の声が聞こえた。どこか覇気のない声だ。


「もしもし?りいぬ今何してた?」


なるべく優しく問うと、彼は黙った。

沈黙は長いこと続き、あまりに音がしないものだから、電話を切られてしまったのかとも思った。

一度耳に当てた液晶を見て、まだ手元のスマホが彼と繋がっていることを確認する。


りいぬ?ともう一度聞くと、なにかの雑音がする。







『………会いたい』



雑音ばかりがよく耳に入る中、しっかり聞こえた。



「……すぐ行くよ、家?」 


『うぅん、』


「…外?」


『公園まで、散歩してた』 



「………寒いだろ。すぐ行くから。待ってて」 


少し間が空いてから、待ってる。

そう小さく言われプツンと電話は切れた。


俺は立ち上がってマスクとコート、莉犬に着させる用の上着も持って、家を飛び出した。





***




どうしてだか、電話越しに彼の声を聞いたら急に涙が止まらなくなった。

こんな目も鼻も赤くした情けない顔を彼に見せられないと思い、まやかしの笑顔を貼り付けようとする。


彼が来るまでに、泣きやんで、笑顔にしとかなくちゃ。

ゴシゴシと服の袖で痛いくらいに目元を擦る。 


会いたい、


「さとちゃん、」


彼との電話が終わって数十分。散々泣いて、ガラガラな俺の声。

また、風が吹いて、涙がつたった頬が冷たい。




じゃり、と砂の音。


驚いて顔を上げると、そこに。




「…!!りいぬ…!」


こんな寒いのに汗を垂らして、息切れもしてて、髪の毛だってぐちゃぐちゃ。

その部屋着にいつものおしゃれなコートはアンマッチだし、雨でびしょ濡れだ。 


でも、誰よりもカッコよくて。


急いでこっちに駆け寄ってくる彼。

見られてしまった顔。


どうでも良くなり、涙を流したままの顔で無理やり笑った。



「すごい、さとみくん。おれが思ってたより来るのずっと早かった」


「おまえ、…」



ぽすっと、肩に暖かいものがかかる。


後頭部に優しい手が添えられて、ゆっくりさとみくんのお腹におでこをくっつけた。



「なに、泣いてんだよ」






「……さとみくんの声、聞いたら安心して涙出ちゃった」



「──りいぬ、ちょっと遠いけど家来な。今日は泊まってけ」


うん、と言おうとする前に、嗚咽に飲み込まれてしまった。




***



家に上がらせてもらった途端さとみくんの服を片手に風呂へと連行された。

風邪ひかれたら困るから、と自分もぐしょ濡れな癖におせっかいなさとみくん。


いや、こっちもお前が風邪ひいたら困るんだけど。


なんて、言う暇もなく気付いたらさとみくんちの大きな浴槽に浸かっている。

ぐっと足を伸ばしてもまだまだ余裕があって、泳げそうなくらい広い。きっと、ジェルくんでも足伸ばしきれるのかなぁなんて考えながら、肩まで身体を沈めた。

ふわっと、棚に置いてあったお高そうなシャンプーの甘い香りがする。

あまりに心地よいから眠りそうになってしまう。


「……」


しばらくぼうっと湯船に浸かってたがのぼせたら面倒だし彼にも迷惑がかかるから、そうなる前に風呂を出る事にした。




これまたお高そうなふわふわのタオルで身体を拭き、これを着ろと渡されたSTPRのパーカーを頭から被って、リビングに戻った。  


「さとみくん、」


「お、上がったか。」


俺も入ってくる、と肩の横を通り去ったさとみくんを横目に、浴槽に負けないくらい大きなソファーにすとんと腰を下ろした。

そうすればシャルちゃんが足元ににじり寄ってくる。 

丁寧に手入れされてる柔らかい毛が軽く触れるのが擽ったくて、シャルちゃんを抱き上げて膝の上に乗せた。


そうするとやっぱりご主人様の膝がいいみたいですぐに逃げられてしまった。


ぽすんと横に体を倒すと、ふかふかのクッションが頭を受け止めてくれる。

きゅっとソファーの上で膝を折り曲げる。


なんとなく、瞼を閉じた。


微かに聞こえるシャワーの音と、猫が水を飲む音。

段々と、頭の中が淡くなって─





***




「りいぬー、って………あれ…」


シャワーを浴びて、リビングに戻ってきた時。彼の姿が見えなかった。

莉犬?と浅く名前を呼びながら辺りを見渡すと、やたら猫達がソファー周りをうろついているのに気付いた。


なんだとそちらに向かって歩けば、ソファーに小さく体を丸めて眠る莉犬。

座面から少しズレた手が垂れているのに猫達は集まっていたらしい。


彼を起こさないようにブランケットをそっと掛け、横に腰掛けた。

ぎしっと、小さくフレームの音がする。


どこか苦しげな顔で眠る莉犬を見つめた。

時折漏れる辛そうでくぐもった声を聞いていられなくなって、安心させるように髪を撫でて、腹を軽く一定のリズムで叩いた。


莉犬の、綺麗な声が好きだから。昔から耳触りのいいその声が好きだと思っていた。


「なぁ、りいぬ。」


おまえが辛そうにしてるとこ、見たくないから。 

なんてクサイ台詞は絶対言ってやんないけど、 


「ふは、」


莉犬の髪をもう一度撫でて、俺は立ち上がる。コイツが起きたら話を聞いて、ゲームをして、腹が減ってるなら何か食べて。

一緒に寝てそしたら明日はコイツの家に凸ってやろう。


そうやって、自然に元気を出してくれたならそれでいい。






***




ハッ、と目が覚めた。

ゆっくり重い瞼を開けると自分が何をしていたのか段々と思い出してくる。


そっと体を起こすと肩からぱさりと何が落ちる。 


「あ、りいぬ起きた?」


おはよう、と微笑みながら湯気の浮かぶマグカップを机に置いた彼に、状況を把握する。


雨の中さとみくんの家に来て、お風呂に入って、それからソファーで、寝ちゃったんだ。


身に覚えのない煤色のブランケットを彼がかけてくれた事にはすぐ気付いた。 


「ごめん、寝ちゃった」


「いいよ全然。よく寝れた?」


「……ん、」


横に腰掛けた彼の肩にそっと頭を預ければ驚いたようにビクッと小さく肩を揺らしてからブランケットを手に取り俺の膝に優しくかけ直す。


「なんか嫌なことあったのりーぬ」


「……うん、」


もぞもぞとブランケットの中にさとみくんの手が入ってきたと思ったら、空きっぱなしだった掌に俺より随分大きな手が絡められる


きゅっと握られると、温かい彼の手からどんどん温もりを奪っていくようにじわりと自分の手が暖かくなっていく。 


「……おなかすいた、」


ぽつんと呟くと、さとみくんはいつもみたいな豪快な笑い方じゃなくて、耳がくすぐったくなるくらい優しく笑った。


「なんか食う?」


ちんまりと頷けば彼は苦い香りのコーヒーを啜った。

ゴクンと喉が動いて、色っぽい流し目が俺の間抜けた顔を見つめる。 


「さっき俺が食おうと思って焼いてたトーストがあるんだけど、それ食う?」


「…うん、たべる」


嬉しげに返事をすればもう少しで焼けるから待っててと彼は口吻を緩ませた。


背もたれに体重を掛けて、先の様に頭を彼に預ける。

目線の先ではひなちゃんが向かいの椅子に登って、床を歩くシャルちゃんを見つめていた。 


ぴくっとしっぽが揺れたと思えばひなちゃんが机に乗り移ろうとしたのでさとみくんが慌てて小さな身体を抱き上げて自身の膝に乗せた。


「可愛いでしょ」


少し舌にもつれる様な甘い声でひなちゃんを撫で始めたさとみくんに、微笑が漏れた。 

「あ、」


突然、ポツンと呟かれる。


「え、なに?」


「やっと顔が柔らかくなった」


いたずらっぽく笑った顔にどくんと心臓が跳ねる。彼の優しい手が目にかかった前髪を懇ろに耳の方へ流した。


「ずっと険しい顔してたから、」


「ほら、おいで」 


綺麗な二重の目が細まって、両の腕が開かれたと思ったら優しいシトラスの香りに包まれた。

さとみくん家のシャンプーでさらさらになった髪を撫でられて、胸板に耳を寄せると心地よい心臓の音が聞こえる。


全部がどうでも良くなるくらい温かくて、ずっとここにいたかった。

俺も彼の背中に手を回した。


誰かにこんなに優しく抱き締められたのも、こんなに弱い所を晒したのも初めてだった。


「……」


何も、言えなかった。言葉が出なかった。

ただ沈黙が続いて、でも彼も何も言わなかった。



止まってた時間が動き出すように、彼が呟く。



「疲れたら、いつでも来て」


「お前はお前だから、りいぬのいいとこは全部おれが知ってるから。」


「これからも頑張ろうな」


だらだらと長く何かを言われるわけでもなく、欲しかった言葉が一つずつ呟かれる。 

目尻が熱くて、鼻の奥がツンとした。なぜ、こんなにも優しいのだろう。 


「……おれ、頑張れてた?」



震えた声に、慰撫するような小さな笑い声が頭の上から聞こえてくる。  

黙って頷いたその瞳があんまり優しくて、寸前だった涙があふれ出てきた。

ぱたぱた顎を伝って、借りたズボンにシミが出来る。


認めてもらえたみたいで、こんな感情久しぶりで。

本当に嬉しいとき、言葉よりも涙が出るのだと知った。


「りいぬは頑張りやさんだからな〜」


大好きな声でそう言われたらもう、涙が止まらなくて。

長いこと、彼に泣きついてしまった。



───




「落ち着いた?」


「うん、…服汚してごめん…。でもありがとう、」


精一杯笑うと、彼も微笑んだ。

その時、俺のお腹がきゅるると小さく音を立てる。

一度自分の腹を見てから、お互い顔を見合わせてあ、と声を漏らした。


「…パン、」


さあっと若干青褪めた顔でドタドタとキッチンに駆け込むさとみくんにソファーで気持ちよさそうに丸くなっていたひなちゃんが驚いたように立ち上がった。


チンとトースターを開ける音がしてから、焦げてる焦げてると彼の焦った声が聞こえてきた。


が途端に手前のパンは辛うじて生きていた事を知ると良かったと安堵するような笑い声が響いて、彼がお皿に乗せたそれをこちらに運んできた。


「ごめん焦げちった」


カタンと陶器の鋭い音が鳴って机にお皿が置かれる。

所々黒い情けない食パンになんだか笑いが込み上げてきて、あははと声を上げて笑った。


彼も、豪快な笑い方をする。


「これ、食べても大丈夫かな」


「まぁ大丈夫だべ、」





焦げたトーストは、苦いのにやたら美味しかった。





end 







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