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まりも
『酔っ払い』
仕事の合間に来た、LINE。
『今日、誘われたから飲みに行ってきていい?』
簡単な内容で送られてきて、少々呆れた。これで許可すると思うのか?
『誰と?』
聞き返せば、すぐに返信が来た。
『タカシ君と居酒屋。事務所でばったり逢ってさ、ご飯いこうって話になった。』
二人っきりか…。
それも誘われたって言っているが実際は自分から誘ったのだろう。
数少ない心を開いている存在だからな。
ダメと言いたいが、相手は先輩だし。
『いいけど、居酒屋の位置情報と帰る時間教えて?』
すぐ返信が来て、居酒屋の位置情報と23時と返信が来た。
23時だったら自分も帰宅している時間だ。
『門限を破るなよ!』
そう送ると、高校生の親かよっていう返信が来た。
普通、心配するだろ!恋人なんだから。
心の中で文句を言いながら、仕事に戻った。
帰宅して、腕時計を見ると22時半。
玄関を開けると真っ暗だった。
さすがにまだ帰ってきていないか…。
風呂の準備をして、彼の帰宅を待つ。
風呂が出来るまで、台本を読んでいた。
ふと、時計を見ると23時40分。
遅くね?
携帯を見るが遅くなる連絡もない。
約束をそう簡単に破る奴じゃないのはわかっている。
ただ、心配で仕方がない。居酒屋に行こうかどうか迷った時に、携帯が鳴った。
画面を確認すると恋人の名前が表示されていて、急いで出る。
「じんッ「あー、勇斗?」
はっ??
恋人と思い電話に出たら、違う男の声が聞こえた。
ただ、この声に聞き覚えがあった。
「………カイ君??」
「おー!当たり☆偶然さ、ユーキと居酒屋に入ったらタカシと仁人が居たから4人で飲んでたら、仁人が酔って眠ちゃってさ、悪いけど迎えに来て?」
携帯を切ったあと、急いで車のカギを取り、居酒屋に向かった。
案内された部屋に入ると、2人で苦笑するカイ君とタカシ君の姿があった。
そして、カイ君が目くばせをする。目くばせの方向に視線を向けると、ユーキ君と仁人が抱き合って寝ていた。
「………はっ?」
状況把握が出来ずにいると、カイ君が携帯を取り出し、動画を再生する。
そこには先輩に絡むベロベロに酔っている仁人の姿があった。
『カーイくんッ☆いつもー!声かけてくれてぇありがとぉゴザイマスッ☆俺、うれしぃー』
ガバッ(抱
『うぉっ!仁人危ない!!』
酔っているせいか舌っ足らずでカイ君に勢いよく抱き着く。
抱き着いて、カイ君の胸に顔を埋めてぐりぐりしている。
『コラ、仁人、ケガしてまうから!危ないで?』
タカシ君がカイ君から仁人を離す。
仁人はそのままくるりと身体を回転させ、タカシ君に抱き着いた。
『タカシくん、優しいぃ!いつもぉ優しい!大ちゅきぃ~!』
『判ったから、離れてぇや。そんなポメラニアンみたいな目で見らんといて…。』
タカシ君が剥がそうとするが、全く離れない仁人。
『もぅ!カイやタカシに抱きつかないで!二人とも俺のぉ!!』
仁人の服を引っ張り、強制的に剥がすユーキ君。
ユーキ君もこの時点で酔っているのだろう。目が虚ろだし、舌っ足らずだ。
『むー!ずるいぃ!ユーキくん!!』
今度はユーキ君に抱き着き、抗議していた。
『もうぅ!いいじゃなぁいですかぁぁあー!抱き着いたって~減るモンじゃあるまいしぃ!!』
『だめぇ!おれのぉ~!』
『むぅぅぅう!じゃぁ、ユーキくんにしゅる!』
その時、仁人がユーキ君のほっぺにキスをした。
『へへぇー!もちもちぃー☆』
『あー!やったなぁぁ!じゃ、おれもぉー』
チュッ☆
『じんとのほっぺもぉーもちもちぃー!』
2人でえへへーと笑いあっていた。
『くちびるもやわい?』
おい、こら待て、仁人…まさか…。
チュ☆
『ふわっぁ、ユーキきゅんのくちびるぅ、ぷるぷるだぁぁー。』
『じんとのもぷるぷるだよぉー☆』
ここで動画は終わった。
「って、事があって、もうカオス。」
カイ君が苦笑いしながら携帯をしまった。
「この後、2人とも眠いって言って抱き合ったまま眠ってもうたんよ。」
タカシ君も少し呆れていた。
「それにしても、仁人って酔うと凄いね。これじゃ、勇斗は心配だ。」
「ご迷惑おかけしてすみません。ここまでのは初めて見たカンジっすね。まぁ、もう飲ませられないっていうのが判ったからよかったっス。」
俺は仁人の傍に行き、肩を叩いて起こす。
「仁人帰るぞ!」
仁人は『ほえぇ?はやと~ぉ?』と言いながら抱き着いてきた。
カイ君とタカシ君にお礼を言い、仁人の分の料金を払い、店を出た。
帰り際、カイ君にさっきの動画を送ってもらうように頼んだ。
さて、仁人、大いに反省してもらおうじゃねぇか!
――朝。
目を覚ますと、頭を抱える程の頭痛と気持ち悪さが襲ってきた。
俺は昨日どうなった?寝てるってことは自力で帰って来た?
全然思い出せない…。気持ち悪い…。とりあえず薬だ。
薬を求め、リビングに行くと、勇斗が薬と水をテーブルに置いて台本を見ていた。
「おはよう、仁人。」
台本からは眼を離さず、挨拶してきた。なんか感じ悪い…。
「………はよっ。なぁ、これ俺の為に準備した?」
聞くと、勇斗は『あぁ。』とだけ言った。
機嫌悪い…?
そう思いながら、薬と水を口に運んだ。
「飲んだか?」
勇斗の目線が俺に向いていた。
顔を見たらおもいっきり不機嫌な顔をしている。
「俺がなんで怒っているか、仁人、解る?」
頭の中をフル回転させたが、何も浮かばない。記憶が全くないのだから。
「………ワカリマセン。」
俺が答えると、勇斗はおもむろに携帯を取り出して、動画を再生した。
そこには、先輩たちに醜態を晒している自分が映し出されていた。
「なっ!……えっ?!」
パニックになっていると、勇斗は盛大なため息を吐いた。
「お前、自分が酒弱いって解ってるのに何やってんの?」
「……タカシ君とご飯だったので嬉しくてつい…。」
睨まれ、小声になっていく。
「タカシ君の人柄で許したところもあったが、あんな風に言い寄られたらどうなっていたか分かったもんじゃない!タカシ君達がまともな理性を持っていて助かったってだけだからな!!」
怒られ、身体が委縮する。
「………ごめんなさい。もうしません。」
「しばらく、お前だけ行く飲み会禁止。行くなら俺も同伴。俺のスケジュールが無理なら飲み会を断れ。いいな!」
「………はぁい。」
うぅ…俺の狭い交友関係が更に狭くなる…。
「仁人。」
名前を呼ばれて顔を上げる。
「お前、これで終わりと思うなよ?」
俺を見下ろし、悪い顔をした勇斗が立っていた。
「お前、分かっていると思うが、お互いオフなんだよ。」
そこで俺は察した。
今から寝ようと思ったが、寝れないという事。
貴重なオフがオフで無くなる事。
「仁人、立て。」
素直に椅子から立つと、ひょいとお姫様抱っこをされ、ベッドに置かれる。
「さぁ、昨日の謝礼を貰おうか…。心身ともにかなり頑張ったからな。今日、この部屋から出られると思うなよ?」
さようなら…俺のオフ…。
なんであんなに飲んだんだよ…!俺のバカ!
悪態をつきながら、俺はベッドの中に勇斗と溺れていった。
次の日
腰の激痛を支えながら事務所に行くと、全員集合している先輩たちが居た。
俺を見るなり、一桁は苦笑&失笑しており、二桁はニヤニヤしていた…。
なんだ?と思っていたら、後々ハルから先輩たちのグループLINEにアノ動画が投稿されている事実を知って絶叫した話はまた今度…。
END
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