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ダズモンガーは「準備に1日ほど頂けると助かるのですが」と言った。
六駆は「ああ、いいよ、もちろん! ゆっくりやって!」と答えた。
気軽に戦争の準備をさせるな。
カツオを野球に誘う中島くんか、お前は。
「クララ、クララぁ! 麻雀するのじゃ! 妾のガン牌テクニックを見せつけてやるのじゃ!!」
「えー! 困るにゃー。クララパイセン、遊びに来たんじゃないんだよー?」
「ほっほっほ。久方ぶりにクララ殿がいらっしゃったので、魔王様もはしゃいでおられるのじゃよ。どれ、半荘ほど囲みましょうぞ」
「近衛兵長のおじいちゃんまでー! もー、ちょっとだけだぞなー?」
クララさんにとって、やはりミンスティラリアは別格。
みんながクララを大好きで、クララもみんなが大好きである。
「今、移動要塞の運転手しててさー」とか言いながら、もう牌をジャラジャラやっている。
「うー。ファニちゃん取られちゃったよぉ。仕方ないから、芽衣ちゃん! ミンスティラリア案内してあげる!! ダズモンガーさん、飛竜に乗りたいですっ!!」
「莉子殿と吾輩は兄妹弟子! どんな願いも叶えましょうぞ! しかし、吾輩は戦支度がありますゆえ、誰か他の者をお供に……おお! シミ、暇そうであるな!!」
シミリートは「やれやれ」とお手上げのポーズを取って、応じる。
「ミンスティラリア救世の女神に頼まれては、断れんな。ダズ、大人しい飛竜を借りるぞ。ニカラモル村辺りまで、少し遊覧飛行をしてくる」
「わぁー! ありがとうございます!! 芽衣ちゃん、行こー!! 六駆くんは?」
「僕はちょっとやる事があるからね。2人で楽しんで来ると良いよ」
「そっかぁ。残念! まあ、デートなら現世でいつでもできるもんね! じゃ、行って来まーす!!」
莉子さん、ナチュラルにデートとか言い出した。
もうダメだ。おしまいだ。
「みみみみっ! 逆神師匠!! 芽衣はどうすれば!! ……みっ! 『幻想身』!!」
「はいはい、むやみに分身しない。莉子が一緒なら平気だよ。多くの異世界に慣れておかないと、おじさんに自慢できないよ?」
「みみっ……。確かに、師匠の言う通りです。異世界に行った経歴を増やして、退職届を受理させるのです! 行ってくるです!!」
「すみません、シミリートさん。うちの女子たちをお任せします」
シミリートは「ふむ。任せたまえよ」と手を振って、飛竜発着場へと向かった。
ここまでのやり取りは、夏休みに田舎のじいちゃんばあちゃんの家に遊びに来た若者たちである。
だが、ミンスティラリアに来た目的は繰り返すが観光ではない。
悪魔は悪魔らしく、魔族を有効利用する作戦の準備に独り勤しむ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
六駆はダズモンガーと一緒に魔王城から3キロほど離れた高台にやって来ていた。
「いやぁ、確かに煌気の感じが変わったねぇ」などと世間話をしているが、彼の両手は地面に置かれている。
「この辺りがいいかな? ふぅぅぅぅぅぅん!! 『門・極大陣』!! おっ! できた!!」
「六駆殿? このバカでかい壁はなんでございますか?」
「いやね、飛竜隊貸してもらえるんだったら、飛竜の通れる『門』がいるでしょ? 初めて作ったスキルだけど、意外とすんなりいったよ。どう? このサイズで通れる?」
「もちろんですぞ。と言うか、このサイズであれば、シミが開発しているリノラトゥハブ・改すら優に通り抜けられます!!」
ダズモンガーくん、必要のない情報を悪魔に与える。
するとどうなるか。
「えっ!? あの人工竜、改良してるの!? それって実戦に使えるレベル!?」
「あ、いえ。シミが言うには、まだ起動実験を何度も繰り返す段階だと。そのように申しておりましたが」
「じゃあ、起動実験はルベルバックでやろう!!」
こうなる。
リノラトゥハブは、懐かしの御滝ダンジョンにミンスティラリア魔王軍が設置していた迎撃・防衛に優れる煌気仕掛けのドラゴンである。
かの人工竜が吐く溶岩石には六駆もそれなりに苦労をした。
「いや、しかし、異界の民に万が一の事があったら」
「ダズモンガーくん、教えたよね、僕。戦争始めたら、もう何されたって言いくるめられちゃうんだよ。だってお前がやりだしたんだろ、の一言でさ」
現代社会に籍を置く人間の言う事とはとても思えない。
「テレパシーで聞いてみましょう。シミ、吾輩だ。実はだな——」
シミリートは生粋の研究者。
人の心も持っているひねくれた人情家でもあるが、実験の魅力の前には屈するらしかった。
「明日までに調整を済ませると申しております」
「よーし! これでパズルのピースがまた埋まった! あとは、ダズモンガーくんの迎撃部隊! 今は魔王親衛隊って部署作ったんだっけ?」
「はい。人族との戦乱で、やはり軍備は完璧にと話し合いで決まりまして」
「よし! 今から僕が行って、簡単なアレンジスキルを教えよう!!」
「い、今からでございますか!?」
「ダズモンガーくん。僕、言ったよね。世界には、過去と今と未来しかないってさ」
六駆は続けて言う。
「苦い過去と輝く未来を繋ぐのが、今の準備なんだよ?」と。したり顔で。
「ぬおおおおっ! 吾輩は忘れておりました! 六駆殿は常に前を見据える御仁!! ならば、それに付き従うのが弟子の役目!! 修練場へとご案内します!!」
こうして、時間の流れが同じになった事で実に良い塩梅に計算が立つようになったミンスティラリアにて、六駆は戦いの準備をみっちりこなした。
頭の中は46でも、体は17歳の健康的なものであるからして、数時間ほどの仮眠をとればコンディションは抜群をキープできる。
チーム莉子の乙女たちが4人並んでファニコラのベッドで夜を過ごす間、逆神六駆は彼にしかできない策謀をいくつも巡らせていた。
お忘れかもしれないので、一応念のために明言しておく。
逆神六駆は侵略者ではなく、ルベルバックをあるべき姿に戻すため立ち上がった、救国の雄である。
説得力がまるでないのは何故か。
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちら、ルベルバック。
反乱軍の前線基地では、「逆神くん帰って来ませんね」とみんなで話していた。
彼は「ちょっと行ってくる」と言って出て来たため、「まあ数時間もすれば帰って来るだろう」と南雲たちは考えていた。
だが、思い出してほしい。
逆神六駆は高二の夏休みで29年分の人生を過ごした男。
彼にとって、1日も10日も「ちょっと」の範疇なのである。
「そ、総司令官殿ー!! なにやら、巨大な門が4つも同時に出現しました!!」
ガブルス軍曹が慌てながらアタック・オン・リコへと駆けて来た。
総司令官は南雲の事を指しており、「敵に通信を傍受された際、誰が総大将なのか一応伏せよう」との発案でそう呼ばれる事になった。
「逆神くんが帰ってきたんじゃないの?」
そこに現世の山根くんから通信が入った。
『南雲さん! 今、サーベイランスの煌気検知モニターでそのでっかい門を計測してみたんですけど! 壊れました! はは! 計測器が壊れるのって、漫画の中だけかと思ってましたよ!!』
「……えっ」
南雲の嫌な予感はすぐに現実のものになった。
悪魔のお帰りである。
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