早く助けたい。助けなくちゃ。
『はっ、はっ』
走って来たからか過呼吸気味になる。そんな想いを捨てないといけないほど今は緊急事態なのだ。
『今、出すからね』
カチッ
何となくだがポットからの出し方は分かっている。今すぐにでも出して話しかけたい、それくらい愛おしい相手だった。
(急がなくちゃ、救われないのはダメだ)
欲張りな事だと分かっている。でもこんなに好きな人を想って我慢してきたんだ、神はそんなことも許してくれはしないと言うのだろうか?それはさすがに理不尽だ。
考えれば考えるほど行動が遅くなってしまう。これで助けれないなんて絶対ダメだ。そんなの自分が許せなくなる。
カチッ カチッ
(早くしないと…!)
カシャン
『!』
何かが落ちたようだが今はそれを気にしていられない。あの子の命がかかっている。助けれないなんてダメだ。
『はぁ、はぁ』
早く、もっと早く
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
(なんで私のためにそこまでしてくれるの?)
ただ謎でしかなかった。だって私は飴村さんさえ生きれればよかったから。なんでそこまでして私を助けたいのか分からない。
(神宮寺さんにお願いしたアレ渡してくれたかな?)
一緒に付けたかったもの。ただ1つ最後に願いが叶うならあれを一緒に付けたかった。
でもそれも叶わない、なんたってもう私は死ぬから。
成功作と言われて生き続けたこの人生で私は自分のことを失敗作だと思って生きた。だって飴村さんの方が成功作に近かったから。
ガチャ
(あ、ポットから出られる。でも…………)
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
一斉にしてポットから水が溢れてきた。それと同時に流月が倒れ落ちる。急いで飴をあげなければ。
『あ、れ?え?どうして……』
持っていた飴がない、ちゃんと準備したはずなのになんで……?
“カシャン”
『あ………』
(まさか…落とした?)
蘇る音の記憶、あれは飴を落とした音だった。明らかに飴がない。それに
(もしかして1個しかなかったの?)
ポケットを漁るが何も入っていない、あるとしたら寂雷から貰った箱くらいだろう。
『流月?』
息をしているようには感じなかった。いや、息をしていない。飴を持っていないからもうこの子は目覚めないの?
『やだ、やだよ?』
あぁ、ならせめてこれだけしたいな
チュ
童話の中ではきっとこれで目を覚ますんだろう。でも現実を見ればそんなことはありえない、ありえないはずなのに。
『飴村さん……?』
流月が目を覚ました。非現実的すぎて今俺は幻覚を見ているのではないかと、そう疑った。
『え?なん、え?』
『助けてくれてありがとうございます。それにしてもなんで…』
ギュ
抱きしめたくてしょうがなかった。恋しかった。辛かった。会いたかった。
『…苦しいですよ』
『あ、ごめん』
『そういえばこれ中身見ました?』
流月が寂雷から貰った小さい箱のことを問う。もちろん見てはいない、寂雷から言われたことを守ったからだ。
『見てないよ』
『そうですよね!』
パカッ
そこには指輪が入っていた。ていうかなんでサイズ分かったんだろう?
『こういうのって普通ボクが用意するものだと思うよ?』
『いいんです』
まるでさっきまで死にそうだったとは思えないほどの元気っぷりだった。泣けてくる。どれだけ必死だったことか…
『わぁ、ホントにピッタリ』
『でしょう?』
指輪をつけてみれば本当にピッタリでずっとはめていたら抜けなくなるのではないかと思うくらいだった。
『外、でます?』
『うん』
☆彡.。☆彡.。☆彡.。
時間の流れは早くもう月が出ていた。
『今日は月が綺麗だね』
『飴村さんと見る月ならいつでも綺麗ですよ』
ベタかもしれないがそれでいい。だってそれくらい流月が好きだから
HappyEND 月が綺麗ですね