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大衆食堂を出てすぐに、三人はラスターと別れた。ジュリアは、しばらくぷんぷんしていた。
でも、次に立ち寄った役所の隣の公民館の歴史展示では、目を輝かせながらリィファに講釈をしていた。
(多少喧しくはあるが、ジュリアはこうでないと調子が狂う)と、楽しげな二人を横目に、シルバは静かに安心していた。
以後も三人は、何か所かを回った。金銀細工屋を辞した時間は午後四時四十五分、三角行進の開始の十五分前だった。やや急ぎ足で、三人は受付場所の円形闘技場前の草地に向かう。
五十五分に着くと、既に多くの人が散らばっていた。円形闘技場の直下では自警団が一列に並んでおり、中央にはラスターの姿があった。木の机上に置かれた箱の後ろで、厳格な佇まいを見せている。
ラスターに歩み寄った三人は、順に木製の箱から籤を引いた。ジュリアは赤組、シルバとリィファは、合気道の権威であるテンガを掲げる黄組となった。もう一つは、ウォルコットの青組である。
三人の組の決定から少しして、ラスターから大声が飛び始めた。総参加者数は三百十二人である旨とルールの告知の後に、各組の色の紐が全員に渡された。皆が手首に付け終えると、ラスターはスタート地点に行くよう指示を出した。
がやがやと動く集団に従い、シルバたちも移動を開始する。
しばらくして黄組は、アストーリの城門の一つに到着した。大人の身長の倍近い城壁の真下に、六列でぎゅうぎゅうに並ぶ。どの顔も血気盛んな雰囲気だった。
「覚悟はしてましたけど、やっぱりすごい祭ですね。人数の多さといい、みんなの異様な盛り上がりといい。でも最後までいられるように頑張ります」
シルバの眼前で後ろ向きのリィファが、控えめに呟いた。前と左右からの圧力に縮こまっているが、眼差しは力強く並々ならぬ決意が読み取れた。
「きつくなったら言いに来い。人込みに流されて無理なら、なんとか脇道から逃れろ。無理はするな。必ずしも、参加しなきゃならないもんじゃねえよ」
シルバは強く念を押した。後方からの力がリィファに行かないように、軽く踏ん張りながらだった。
「わかりました」と、小さな声でリィファから返事があった。ややあって、城壁に上った一人の自警団員が、大人の掌で掴めるほどの球を群衆の中ほどへ投げた。勇ましい声が上がる。