電気のついていない部屋。
いや、つけていないと言うべきだろう。
車の走る音、人々が笑い話している声。
そして、
タッタッタッタッ
“今日も”この無機質な部屋に響く、足音のリズム。
コンコンコン
「兄さん……?今日はいる?」
いるよ。
だけど、その問いかけに返事はできないかな。
「………」
「……いるって、分かってるんだけどな…………」
「何で、なんで出てきてくれなくなったんだろう……」
「………それじゃあ兄さん、今度また。」
何でって、どうしてって…………
もう分かってしまったことなんだから、もういいのに。
もう、現実を見なきゃいけないのに。
誰の耳にも届かない愚痴をこぼした。
「………もう放っておいてよ、」
「______春喰。」
___________________________
春喰side
「………それじゃあ兄さん、今度また。」
分かっていた。
「…………ッ」
とっくの前から分かっていたけど、やっぱり兄さんは出てきてくれなかった。
笑顔で出迎えてくれる兄さんは、出てきてくれなかった。
______スマホのホーム画面に映ったツーショットにいる夏祭さんは、笑っていて。
それのために今こうしているのに。
「…………」
今日は寄り道して帰ろう。そんな気分だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!