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長く重なったキスが、ようやく離れた。
貧ちゃんはソファに押し倒されたまま、ぼんやりと天井を見ていた。耳まで赤い。
「……」
「貧ちゃん?」
「……ちょっと待って」
手のひらで顔を覆う。
「いま、情報量が多い」
カンタローは思わず笑った。
「キスしただけだぞ」
「だけじゃない」
貧ちゃんは指の隙間から睨む。
「お前、キス上手いの何?」
「練習した」
「誰と!?」
「想像で」
「嘘だろ!」
思わず笑い声が漏れる。
カンタローは貧ちゃんの手首をそっと掴んだ。
「なあ」
「…なに」
「逃げないんだな」
貧ちゃんは一瞬黙った。それから視線を横にそらす。
「……逃げても追いかけるだろ」
「当たり前」
「だろうな」
小さくため息。それから、ぼそっと言う。
「別に嫌じゃない」
カンタローの胸が少し鳴った。
「寧ろ」
貧ちゃんはカンタローの胸板を指でつつく。
「なんでお前こんな体してんの」
「鍛えてるから」
「小学校の頃ガリガリだったろ」
「成長したんだよ」
「ずるい」
「何が」
「俺よりでかい」
「それは昔からだろ」
カンタローが笑うと、貧ちゃんは頬を膨らませた。
「こうなると」
「うん」
「なんか…完全に俺下じゃん」
「そうだな」
「即答するな!」
カンタローはまた笑った。そしてふと、貧ちゃんの頬に触れる。色白の肌は少し熱い。
「貧ちゃん」
「なに」
「ほんとにいいの?」
「何が」
「こういうの」
カンタローは少し真面目な顔になった。
「無理してない?」
貧ちゃんは一瞬驚いた顔をした。それから、ゆっくり首を振る。
「…無理だったら小学校からの幼なじみに押し倒されてない」
「それもそうだ」
「ただ…」
「うん?」
貧ちゃんはカンタローを見上げる。眼鏡がないから、距離が近い。視線がそのままぶつかる。
「ちょっと想定外なだけ」
「何が」
「俺がこうなるの」
そう言いながら、貧ちゃんはカンタローの肩を押した。
「…で、いつまで上にいるの」
「嫌?」
「重い」
「それはごめん」
カンタローが体を少し起こそうとした。
その瞬間、貧ちゃんがシャツを掴んだ。
「……あ」
カンタローが止まる。貧ちゃんは顔を赤くしたまま、小さく言った。
「別に…」
「うん」
「どく必要はないけど」
カンタローの喉が鳴る。
「貧ちゃん」
「なに」
「それって」
「言わせるな」
貧ちゃんは顔を背けた。
「恥ずかしい」
その仕草があまりに可愛くて、カンタローは思わず額を押しつけた。
「……やばい」
「なに」
「今すごい好き」
「今?」
「ずっとだけど」
貧ちゃんは苦笑した。
「ほんと、よくそんな真っ直ぐ言えるよな」
「だって本当だし」
少し沈黙。
それから、貧ちゃんがぽつりと言った。
「…カンタロー」
「うん」
「さっきの」
「キス?」
「……うん」
「どうした」
貧ちゃんは目を合わせないまま言う。
「もう一回」
カンタローは少し笑った。
「そんな気に入った?」
「違う」
「じゃあ」
「慣れたい」
その言葉に、カンタローの顔が少し柔らかくなる。
「そっか」
そして、また手を伸ばす。テーブルの上の眼鏡をちらっと見る。
「あれ、かける?」
「今はいい」
「珍しい」
「どうせ」
貧ちゃんは少し照れながら言う。
「カンタローしかいないし」
カンタローは一瞬黙った。
「…それは反則」
「なんで」
「嬉しいから」
そして、ゆっくり顔を近づける。今度は貧ちゃんの方から少し顎が上がった。触れる寸前、貧ちゃんが小さく言う。
「……優しくな」
「努力する」
「努力かよ」
その言葉の途中で、また唇が重なった。
さっきより長く。さっきより深く。
貧ちゃんの指が、ぎこちなくカンタローの背中を掴む。
まだ慣れない距離のまま、幼なじみだった二人の夜は、ゆっくり続いていく。
END
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普段はカン貧はXで書いております。
よければ。☞@iw_ta_cho