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「全く最近の子は不思議なことを言うものだね」
そう笑うマリトの顔はどこか焦っているようだった。
「私は真実を知りたいだけです」
「僕がその写真に写っていたらもうとっくにおじいさんの歳だよ」
「じゃあこれは」
そう言って前田さんはもう1枚の写真を取り出した。
さっきの写真よりかは新しめで裏には1982年と書いてあるカラー写真だった。
そこにはまたマリトそっくりの青年が写っていた。
スーツを着た男性でごった返す街中で1人独特の雰囲気を放つ青年だった。
「そっくりだけど別人だよ、僕の方がイケてる」
「内心焦ってるんじゃないですか」
そう言う前田さんの顔にも汗が滲んでいた。
そうであって欲しい、でもそうであって欲しくないと言わんばかりの微妙な表情だった。
「君は生徒会の子だろう?変なこと言ってる自覚はないのかい?」
「ありません、確信していますから」
「何も不老不死の人間がいた、研究しろなんて政府に渡すわけじゃないんですよ」
「私はただ知りたいんです」
「教えていただいたら私は大人しく帰ります」
「ほんと?」
「はい」
何かを悩んだ後でマリトは話し始めた。
「君のような子は数年に1度必ず現れる、ほんと呆れちゃうね」
「その2つの写真に写ってるのは確かに僕だ、だが僕ではない」
「…と言いますと?」
「…あんまり現実味がない話だから毎回作り話だと思われるんだ」
「だから話したくない」
「教えてください、疑いません」
「現に今、この写真にあなたは写っていてあなたは私の目の前にいます」
「…」