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〜キミのニセモノに恋をする〜
待ち焦がれ続けた横顔がそこにはあった
僕は気持ちを抑えきれず店内へ入った
⌜いらっしゃいませー⌟
⌜何名様ですか?⌟
⌜あのー?⌟
⌜…ちょ、ちょっと!⌟
対応する店員の声を無視し、彼女の座る所まで歩く
スマホの画面を見つめる彼女に向かって
声のボリュームも気にせず叫ぶ
「奈々…!!」
スーツを着ているからだろうか
あの頃のあどけなさは感じられなく
最後に会った時よりも髪が随分と伸びている
彼女の姿は、自分の知らない大人の女性に見えた
彼女がこちらに視線を向ける
「奈々…ずっと探してたんだぞ!?」
「今までどこいってたんだ!?」
「急に居なくなったりして…」
彼女を一目見ただけで想いが言葉になって溢れてくる
『……』
表情を変えることなくぼんやりとこちらを見ている
今、僕の目の前にいる女性は2年前この場所で出会い付き合うことになった女の子
1年前突然と姿を消した僕の彼女
奈々に違いなかった
⌜すみません、お客様周りの人の迷惑になりますので、店内ではお静かに⌟
⌜とりあえず受付まで戻って貰えますか?⌟
奈々に夢中で店員の存在に気が付かなかった
「ああ、いや…今はそれどころじゃ」
この機を逃せば、もう二度と彼女に会えないかもしれない
『すみません、この人私の知り合いです』
懐かしく優しい声が聞こえた
⌜あ、お客様のお連れ様でしたか…⌟
⌜はい、ご迷惑をおかけしました⌟
奈々が店員にぺこりと頭を下げる
その丁寧な仕草は、僕の知る彼女とはかけ離れていて
少しだけ違和感を覚える
『とりあえず、座って?』
「ああ、ありがとう…」
⌜では、ごゆっくり⌟
⌜連れなら最初からそう言えよ…⌟ 草
店員がぶつくさと文句を言う声が耳に入る
でも、そんなこと今ではどうでもよかった
「さっきはごめん」
「久しぶりだったから、動揺しちゃって」
「いや、でもほんとに久しぶりだね 1年ぶり…だよな?」
『……』
奈々が少し考えるようなそぶりを見せると
口重そうに話を切り出した
『あの…どちら様ですか?』
「どちら様って、、ははは、なんの冗談だよ笑」
「僕はキミの彼氏だよ」
『何言ってるんですか?流行りのナンパかなんかですか?』
嘘や冗談を言ってるようには見えなかった
「キミは…奈々だよね?」
まさか望まない答えが帰ってくるとは思わなかった
『いいえ…』
『私の名前は “奇跡” ですよ』