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コメント
6件
ぅおーーーー!😭❤さんめっちゃ安心する…(?)やっぱ先生としての風格と言いますか…好きです…🫰🫰❤️🔥🫶
〜第1章〜
―冠の下の素顔―
玉座から見下ろす王室。常について回ってくる近衛兵たち。ずっと被っていたら首がおかしくなりそうなほど重い王冠。今はもう、気が遠くなるほどうざったらしかったメイドたちに囲まれる生活が恋しい。このきらびやかな王室も、俺にとっては檻にしか見えない。
一国の王として生きるということが、こんなにも苦行だなんて思いもしなかった。
「父が討たれた」。一昨日、そうメイドから聞かされ、城に戻った、いや「戻された」時には、既に父は息を引き取っていた。ずっと政治やらなんやらをしていた父とはまともに話したこともなかったから、別に悲しいとは思わなかった。ただ、問答無用で王の座につかされたことだけが気に食わなかった。母は俺が生まれてすぐ死んだらしいから、王位継承権があるのは俺だけだった。会う人会う人から猫なで声で話され、向こうはずっと跪いているもんだから目も合わせてはくれない。
昨日は戴冠式?とか言うよく分からない式典を終えて、それだけで1日が終わってしまった。そして今日から、本格的に王として仕事をしなくちゃいけないらしい。これまたよく分からない書類に機械的に刻印を押し続けるだけ。なんてつまらないんだろう。数日前までのあの生活に戻りたい。…2人に、会いたい。
そんなことを考えていると、
「国王様。大森元貴という者があなた様に会いたがっているようですが。いかが致しましょうか。」
心を読まれたかのようなタイミングだ。断る理由もないので、
「分かった。執務室にお通して。俺も行く。あ、間違っても腕縛るとかしないでね。」
そう言って執務室に向かった。しばらく執務室で待っていると、静かに彼が入ってきた。続けて近衛兵たちが入ってこようとするので、
「だめ。2人にして。」
「しかしながら国王様。もし此奴が反乱軍だったら―――」
「絶対大丈夫だから。国王命令ってやつだから。分かった?」
と言って黙らせた。こういう時だけは便利だな、国王って。そうしていると目の前の彼が笑いを含んだ口ぶりで言った。
「随分と厚い信頼を置いてくださっているようですね、国王様?」
彼はふっと口元を緩ませているが、いざ話しかけられると緊張してしまう。たとえかつての恩師だとしても、ここは王として威厳を見せた方が良いのだろうか。
「あー、まあ、そう、だな…?」
声が裏返りそうになる。…やっぱ無理かも。
「国王様…いや藤澤、お前、無理してるだろ。」
俺は苦笑いしながら答えた。
「…バレました?」
「やっぱり先生はどこまで行っても先生ですね。」
彼には…先生にはこの呼び方がしっくりくる。先生は穏やかに微笑んでいた。そんな顔を見たら、うっかり…弱音を吐きたくなっちゃう。
「…前に先生に会ったの一昨日なのに、すっごい久しぶりな気がします。毎日知らないことだらけで、俺―――」
そこまで言ってはっと我に返り、これ以上言っちゃいけないと思った。既に俺の声は震えていたから。嫌なのに。先生の前で泣きたくなんかないのに。堪えきれなかった。
「…すごい、寂しかった。」
そう言って先生に抱きついた。先生は「うわっ、」と少し驚いていたけど、すぐに
「そうだよな。こんな急に王になれとか、困っちゃうよな。」
と言って俺を抱きしめて、頭を撫でてくれた。いつも厳しい先生が優しく肯定してくれて、今まで押し殺していた感情がどっと押し寄せてきた。それは大粒の涙となり、俺の頬と先生の服を濡らした。