テラーノベル
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駅前は、あまり変わっていなかった。
看板も、ロータリーも、
少し古くなっただけで、記憶の中とほとんど同じ。
相馬は、改札前で立ち止まる。
(……まじで、来るんだよな)
スマホには、短いメッセージ。
《着いた》
《昔みたいに遅刻すんなよ》
胸が、嫌な音を立てて鳴った。
「――久しぶり」
声がして、振り向く。
そこにいたのは、
少し背が伸びた気がする先輩だった。
髪は短く、表情は落ち着いてる。
でも、目だけは、昔と同じ。
「……老けたな」
「最悪な第一声だな」
笑い合う。
その一瞬で、
離れてた数年が、少しだけ縮んだ。
並んで歩く。
肩が触れそうで、触れない。
昔なら、
乱暴に腕を掴んで、引っ張っていた距離。
今は、お互いに慎重だった。
「……元気だった?」
「まあな」
言葉が、どこかよそよそしい。
(変わったのは、先輩だけじゃねぇ)
相馬は、そう思った。
気づけば、校舎の近くまで来ていた。
「ここさ」
先輩が言う。
「初めて会った場所」
「覚えてる」
忘れるわけがなかった。
あの日の夕焼け。
強気な声。
胸がうるさくなった瞬間。
「……なあ」
先輩が、少しだけ真剣な顔になる。
「俺さ」
「戻るって言っただろ」
相馬は、黙って頷いた。
「正直」
「簡単じゃなかった」
先輩は、笑わずに続ける。
「忙しくて」
「逃げたくなる日もあって」
相馬の指が、ぎゅっと握られる。
「でも」
「お前のいない場所で、全部終わらせたくなかった」
その言葉が、胸に落ちる。
「……俺もさ」
相馬が、ゆっくり口を開く。
「昔みたいに」
「何も考えずに待ってるだけじゃ、嫌だった」
先輩が、目を細める。
「ちゃんと、自分の足で立って」
「それで、また会いたかった」
沈黙。
でも、それは苦しくない沈黙だった。
「なあ」
先輩が、一歩近づく。
「今の俺でも」
「今のお前でも」
少し間を置いて。
「……まだ、好きでいていい?」
相馬は、一瞬だけ目を伏せてから、答える。
「遅ぇよ」
そして、はっきり言った。
「ずっとだ」
先輩は、静かに笑った。
「成長したな」
「うるせぇ」
でも、手が伸びてくる。
昔より、優しくて、迷いのない手。
相馬は、それを拒まなかった。
指が絡む。
(ああ、戻ってきた)
そう、思った。
「今度はさ」
先輩が言う。
「離れるとかじゃなくて」
「一緒に考えたい」
相馬は、少し照れながら答える。
「……当たり前だろ」
「もうガキじゃねぇし」
二人で、笑う。
夕方の空は、
あの日と同じ色だった。
でも、立っているのは、
あの頃より少し強くなった二人。
「行くか」
「どこに」
「未来」
相馬は、鼻で笑って言う。
「……大げさ」
それでも、手は離さなかった。
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