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第二章「特別になりたい」
昼休みの教室は、ざわざわとうるさい。
私はその音の中にいるのに、どこか遠く感じていた。
隣の席は空いている。
水輝ちゃんは、クラスの女の子たちに囲まれて笑っていた。
その笑顔を見ているだけで、胸がきゅっと締まる。
——あんな顔、私にも向けてくれてるよね?
自分に問いかけるたび、少しだけ不安になる。
「花凛〜!お弁当食べよ〜!」
突然、後ろから声がして、びくっとする。
振り返ると、水輝ちゃんがいた。
「ごめん、ちょっと話しかけられてて」
そう言って、当たり前みたいに私の隣に座る。
その“当たり前”が、嬉しい。
「花凛、今日元気ない?」
「え…そんなことないよ〜」
そんなことある。
だって、さっきまで水輝ちゃんは、私の知らない話で笑ってたから。
でも言えない。
言ったら、重いって思われるかもしれない。
「ねぇ」
水輝ちゃんが、少しだけ声を落とす。
「花凛ってさ、私が他の子と話してるの嫌?」
心臓が止まったかと思った。
「……そ、そんなことないよ」
嘘だ。
本当は嫌だ。
嫌で嫌で、胸がざわざわしてた。
少しの沈黙のあと、水輝ちゃんは笑った。
「そっか。よかった」
その”よかった”が、少しだけ寂しそうに聞こえたのは、気のせいなのだろうか。
その日の放課後。
今日も一緒に帰る。
それが、もう習慣になっている。
校門を出たところで、水輝ちゃんがぽつりと言った。
「ねぇ、花凛ってさ…」
「うん?」
「私のこと、好き?」
息が詰まる。
友達として、って意味だよね?
そう思いたいのに、心臓は変な鳴り方をしている。
「好き、だよ」
小さく答えると、水輝ちゃんは少しだけ安心したように笑った。
「私も。花凛が一番好き」
“一番。”
その言葉が、胸に深く沈む 。
「ほんとに?」
思わず聞いてしまう。
水輝ちゃんは、私の手を取った。
「ほんと。だって花凛、私がいないと寂しいでしょ?」
図星だった。
でも。
「……水輝ちゃんもでしょ?」
言った瞬間、空気が少し変わった。
水輝ちゃんの目が、揺れる。
「うん…寂しい。」
その声は、思ったよりも弱かった。
「花凛がいないと…私、なんか、空っぽになる…」
私は、その怖さよりも嬉しさを選んでしまう。
「じゃあさ…」
水輝ちゃんが、少しだけ近づく。
「ずっと一緒にいようよ…!」
その距離の近さに、呼吸が浅くなる。
「うん」
迷わなかった。
「水輝ちゃんとなら、どこでもいい」
たとえ、世界が二人だけになっても。
その時はまだ、
それがどういう意味か、分かっていなかった。