テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ワノ「」蓮『』
ーーーーーー
キィーッ (古い門を開ける音)
「ジョウロどこだっけぇ……」
『あ、ワノさん…』
「……?あ、蓮くん!おかえり!!」
『…………………』ガタガタッ…
「……………んふ、蓮くん。僕ん家上がる?」
ポフッ (ソファに座る)
「今日も虐められたの?」
『…………』コクコクッ
「…そっかぁ。辛かったね?」
『違っ、辛くは………』
「蓮くん。辛い時はどう言うんだっけ?」
『……!……辛い、です…』
「………偉い!…生きてて偉いよ蓮くんは!!」
ワシャワシャッ
『……グスッ』
俺はワノさんの優しさで今日も生きている。
ワノさんは俺が小さい頃からお世話になっていたお兄さんだ。
今は保育士をやっているらしい。
………保育士なだけあって人をあやすのが上手い。
そんな俺はまだ中学生。
学校でいじめにあっている。
「………………落ち着いた?」
『あ、はい』
「んふ、よかった!」
俺はこの人が弱っている所を見た事がない。
そのくらい元気でいつも「幸せ」に過ごしているように見える。
『あ、じゃあ、そろそろ、帰ります。親が…………』
「…………今日は泊まる?僕ん家」
『え……?い、いんですか?』
「うん!いいよ!親御さんには連絡しとくから!」
『ぁ、いゃ、連絡、は………』
「…………………うーん。でも警察に連絡されても困るよね」
『っ、』
「大丈夫。変な事は言わないから」
俺の親は少し過保護だ。
友達の家に泊まりに行けた事も無く、外に出る事も極端に制限されている。
ワノさんは隣の家の人で俺の親と仲がいいからワノさん家に寄る事は可能だ。
だけど長居はするな、と言われている。
プルルルッ
『………』グッ…(自分の手を強く握る)
「…………………あ、もしもし〜。はい、あ、ワノです〜。今蓮くんに勉強を教えていまして、はい。今日は沢山勉強を教えて欲しいらしくて〜、なので泊まらせても大丈夫ですか?………あ、ありがとうございます!はい!では〜」
ガチャッ
「いいって!よかったね!」
『あ、は、い』
「でも一応疑われた様に勉強も進めとこっか」
『……!はい!』
疑われた用に、と考えて勉強も教えてくれるワノさんは、どこまで考えて行動しているのだろうか。
ミーンッミンミーンッ…
「夏って夜でも暑いね〜、」
『そ、うですね』
ワノさんは服を伸ばしてパタパタと扇いでいる。
俺は少し目線を逸らす。
「ん?どしたの」
『あ!いや!………別に』
「………あ!そうだ!ちょっとまっててね〜」
バタンッ
『………?』
「はい!アイス!暑いからさ!」
『あ、ありがとうございます……………でm…』
「蓮くん!」
『ビクッ、はい…』
「…………今日だけは特別にしよ!!ね?」
『…………!はい……!』
ミーンッミンミーンッ…
「もう夜だから明日の為にも早く寝なね〜」
『……ワノさんは、?』
「ん?あぁ、僕はまだ保育園に持ってく資料が間に合ってないから作ってから寝るよ!」
『あ、分かりました、おやすみなさい』
「うん!おやすみ!」
ミーンッミンミーンッ…
『………寝付けない』
暑いな…
でも泊まりに来てる訳だし、言うのはちょっとあれかな…
グスッ、グスッ…
『………?なんの音……』
1階、か……?
ちょっと降りて確認、するか…
ギィッギィッ… (階段を降りる音)
『(ワノさんまだ起きてる…?何して……)』
「……グスッ、」
『(あ……)』
ワノさんが泣いていた。
泣いてるのを見たのは、初めてだった。
昔から、笑顔が素敵な人だった。
いつも明るく俺に話しかけてくれていた。
そんな人の泣き顔を、見た事は無かった。
そしていつも気になっていた事が明らかになった。
ワノさんは、夏なんて関係なく長い袖をいつも着ていた。
暑くないのかと聞いた事もあったが、本人は「暑いけど肌を出したくない」と言っていた。
その理由がわかってしまった。
いつも明るくて太陽みたいなワノさん。
そんな人の腕に何本も赤い線が入ってるなんて知りたくはなかった。
その腕には数え切れない程の我慢と、苦痛が詰まっていたと思う。
………いつも元気だったのは嘘だったのだろうか。
バレたくは無いよなと思ったから2階に戻り、いつもどうり眠りについた。
「蓮くん!蓮くん!!」
『はっ、はぁ、はぁ、ワノ、さん?』
「学校!遅刻しちゃうよ!!」
『!!』
時間を確認すると8:14だった。
俺の家から学校に行くのは30分くらいかかる。
このままでは遅刻確定だ。
………親になんて言おう…
『……はぁ、すみません。急いで行ってきます』
「蓮くん。車出してあげる!!」
『え?』
「遅刻しちゃうとやばいでしょ?」
『で、でも』
「………僕は蓮くんが怒られてる所見たくないから。ね?」
『……!はい、分かりました』
ブロロロロロッ…
『……………』
「………ねぇ、蓮くん」
『ビクッ、はい、?』
「昨日、よく寝れた?」
『…………は、い』
これ勘づかれてるかな…
「…………そっか!ごめんね!変な事聞いて!」
『……………………ごめんなさい。本当は寝付けなくて途中まで起きてました。……すみません』
「………そっかぁ、昨日覗いてたのも蓮くん?」
『……はい』
「……………おかしいよね!」
『………何がですか?』
「んー?……腕の話だよ」
『……………俺は、別になんとも……』
嘘だ。
本当はびっくりした。
おかしいとは思わなかったが、
元気な人でもこういう事があるんだなと、驚いただけだ。
「………………蓮くんは優しいね」
『……………………』
「…あ!でも腕の事は蓮くんと僕だけの秘密ね?誰にも言っちゃダメだよ?」
『…………言いませんよ』
「んふ、ありがとねぇ」
キキーッバタンッ
「はいよ!行ってらっしゃい!」
『……はい。いってきます』
ブロロロロロッ…
「………………バレちゃったか」
蓮くんの前では、元気でいたかったんだけど。