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#カラフルピーチ
Ayaka0826
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#カラフルピーチ
しぁ@krpt
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第45話 零の鐘がなるまで
――十二月三十一日、大晦日。
窓の外は、冬晴れだった。
空気は冷たいのに、日差しだけは、やけにあたたかい。
今年も、あと一日。
……いや、あと半日か。
💚「……」
俺は、自分の部屋の真ん中で、天井を見上げていた。
目の前には、散らかった服。
積み上がった漫画。
そして、開けっぱなしの押し入れ。
……中には、ぎっしり押し込まれた、ありとあらゆるもの。
💛「……やっぱり、押し込んだだけやん」
戸口で、たっつんが笑ってる。
💚「だって! 時間なかったんだもん!」
💛「それ、毎年言ってるよ?」
💚「うっ……」
💛「ほら、手ぇ動かして。今日中に終わらせるで」
たっつんは、ぐっと袖をまくった。
毎年、大晦日の朝は、こうなる。
大掃除。
もちろん、隣の家から助っ人が来る。
💛「ほら、押し入れからあけるよ?」
💚「え、待って、それは――」
ガラッ。
どさどさどさっ!!
💚「うわぁぁぁ!!」
💛「やばぁ…」
押し入れの中身が、雪崩みたいに崩れてきた。
クリスマスツリーの空き箱。
古いゲームのコントローラー。
読みかけの漫画。
💛「……お前なぁ」
💚「てへっ!」
***
それから二人で、延々と片付けた。
たっつんは、てきぱき。
俺は、ときどき、手が止まる。
💚「なんだろこれー」
押し入れの奥から、古い画用紙が出てきた。
『しょうらいのゆめ』。
小学校のときの、作文だ。
💚「うわー! 懐かしい!」
💛「何て書いたん?」
💚「えーっと……」
『ぼくのゆめは、ヒーローになることです』
💚「……あ」
💛「…………」
たっつんが、じっと作文を見ている。
💛「ヒーロー。ほんまに、なりたかったんやな」
たっつんは、ふっと目を細めた。
優しい顔。
なんだか、胸がくすぐったい。
💚「……ねえ、たっつんは、何書いたの?」
💛「……忘れたわ」
💚「えー! 絶対覚えてるでしょ!」
💛「忘れた!!」
💚「ずるい!」
たっつんは、頑なに目をそらしたまま、ほこりを払っていた。
耳が、ちょっと赤い。
……なんて書いたんだろう。
💚「いろんなもの出てきて面白いねー」
💛「面白いって…自分の部屋やろ?」
押し入れからガシャンとなにかが落ちた。
小さな、お菓子の缶。
ふたを開けると、中から、どんぐりが、ころころと転がり出てきた。
💚「……あ」
💛「…………」
その横には、ビー玉と、変な形の石。
それと折りたたまれた小さな紙。
💚「これ、小学生のときのやつじゃない!?たっつんがくれたやつ!」
俺は紙を広げようとする。
💛「…………っ」
するとたっつんが、紙を奪ってきた。
💛「返せ! 捨てろ、そんなもん!」
💚「やだ! 絶対捨てない!」
💛「捨てろ!」
💚「俺の宝物だもん!」
💛「…………」
たっつんの手が、ぴたっと止まった。
また耳が、じわじわと、赤くなっていく。
💛「……捨てへんの?」
💚「当たり前じゃん」
💛「…………そっか」
たっつんは、ふいっと顔をそらした。
そのまま、窓の方を向いて、小さく言った。
💚「うん!」
缶の中のどんぐりが、からん、と鳴った。
***
夜。
たっつんの家で、年越しそばを食べる。
もちろん、作ってくれたのはたっつん。
💚「うまっ!!」
💛「よかったなー」
💚「毎年、この味だ……」
💛「毎年、同じやつ作っとるからな」
テレビでは、歌番組が流れている。
二人で、並んで座っている。
💚「ねえ、たっつん」
💛「ん?」
💚「今年、いろいろあったね」
💛「あったなぁ」
指を折って、数えてみる。
**
部活を作った。
たっつんが部員になってくれた。
のあちゃんと一緒にお菓子を作った。
体育祭でゆあんくんの背中を押した。
期末考査でるなと勉強をした。
夏休みは4人で遊んで、夏祭りも行った。
シヴァさんと色々なことをした。
俺が風邪を引いて、たっつんがどぬくくんの悩みを解決してくれた。
文化祭でうりとバンドをした。
ハロウィンはみんなにお菓子を配った。
たっつんと喧嘩して、泣いて、もふくんのおかげで仲直りして。
頑張りすぎて疲れちゃって、初めて俺から相談をして。
ヒロくんを連れ出して走った日。
そしてクリスマスまた4人で集まって。
今、たっつんの隣にいる。
一年ってこんなに長かったっけ。
でも短いような気もする。
苦楽とともに過ごした日々に、たまの休息。
そしてまた明日へ。
明日のことはわからない。
それでも、こんな日常が続きますように。
**
💚「……あと三ヶ月で、卒業だね」
口に出したら、胸が、きゅっとなった。
💛「そやな…」
💚「…ていうかさ来月、推薦の面接だよね?」
💛「……うん」
たっつんの箸が、少しだけ止まった。
💛「ちょっと、緊張してる」
💚「たっつんが?」
💛「俺だって緊張するよ。」
笑ってるけど。
その横顔は、いつもより、少しだけ硬かった。
……そうか。
たっつんも、不安なんだ。
学年二位で、なんでもできて、頼られてばかりのたっつんでも。
俺は、箸を置いた。
💚「たっつん」
💛「ん?」
💚「たっつんに、不可能なんてないんだから!」
たっつんは、目を丸くした。
それから。
💛「……それ、お前が風邪で休んどったとき、俺に言うたやつやん」
💚「あ、そうだっけ?」
💛「……そうや」
たっつんは、くすっと笑った。
💛「……ありがとな。じゃぱぱ」
💚「どういたしまして!」
***
夜、十一時半。
俺はこたつの中で夢を見ていた。
制服を着た男の子。
金髪で、向日葵色の瞳。
でも見たことのない制服。
少し照れたような表情で俺のことを見ている。
胸には金色のバッジをつけている。
これは…誰?高校生…?
💛「おい、寝るなよ。もうすぐ年越しやで?」
たっつんが指先で俺をつついてきた。
ゆっくり意識が浮上する。
💚「……起きてる」
💛「ほんまか?」
💚「ほんと……」
💛「……もたれかかっとるやん」
……あれ?
気づいたら、俺の頭は、たっつんの肩にあった。
💚「あ、ごめん」
💛「……別に、ええけど」
たっつんの声が、少し震えていた。
寒いのかな。
俺は、こたつ布団を、たっつんの肩にも、かけてあげた。
💛「……っ」
💚「寒くない?」
💛「……寒くない」
……うそだ。
たっつん、さっきより、ちょっと温度が高い気がする。
なんでだろう。
夢の続きはきっとまだこの先。
***
俺――たっつんは、息を止めていた。
じゃぱぱが、俺の肩にもたれて、うとうとしている。
やばい。
近い。
よく知っているシャンプーの匂い。
息が首に当たって、くすぐったい。
肩から、あったかい体温が、伝わってくる。
……心臓が、うるさい。
別に、特別なことやない。
こいつは、昔から、距離感がバグっとるんや。
深い意味なんて、ない。
そう、言い聞かせる。
それでも。
来年の、この時間には。
俺たちは、もう、中学生やない。
高校生や。
もしかしたら、違う学校かもしれない。
こうして、毎年、一緒に年越しすることも、なくなるのかもしれない。
……何を、考えとるんや、俺。
推薦の面接より、よっぽど緊張する。
テレビの中で、カウントダウンが始まった。
「十、九、八……」
💛「じゃぱぱ、起きろ。年越しやで」
💚「……んー……」
「七、六、五……」
💛「ほら」
💚「……あ、たっつん」
「四、三、二……」
じゃぱぱが、ぼんやりと、目を開けた。
至近距離で俺と、目が合う。
💛「っ…!」
「一……」
零。
テレビの向こうから、拍手と歓声が聞こえた。
遠くで、除夜の鐘が鳴っている。
ばっと視線をそらす。
💚「……あけまして、おめでとう!」
💛「……あけまして…おめでとう」
じゃぱぱが、にっこり笑った。
💚「今年も、よろしくねー!」
少しだけ照れたように。
……うわぁ。
やばい。
その顔は、ずるい。
💛「……こちらこそ。よろしく…。」
それだけ言うのが、精一杯やった。
***
💚「みんなにメッセージ送らなきゃー…」
俺――じゃぱぱは、スマホを手に取った。
画面には、ゆあんくんからのメッセージ。
❤️『あけおめ!! 今年もよろしく!!!』
いろんな人からメッセージが送られている。
一人ずつ返信していく。
🩷『あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!』
🩶『あけましておめでとうございます!』
🐸『あけおめ〜』
💜『明けましておめでとう』
🩵『おめでとうございます!』
🤍『おめでとうございます!』
……あれ。うりからだけメッセージがない。
多分寝てるなこれ。
うりにも一応メッセージを送っておく。
💛『あけおめ』
なぜか隣りにいるたっつんからもメッセージが来た。
💚「なんで?」
笑いながら聞く。
💛「一応!」
💚「一応?」
ピコン。
俺、たっつん、のあちゃん、ゆあんくんの4人で遊んだとき作ったグルラにもメッセージが来ていた。
❤️『先輩たち、ねえねえ、初詣、みんなで行こうよ! 今日のお昼!』
🩷『いいですね!』
❤️『俺、受験生の先輩たちの、合格祈願をしたくて!』
💚『えっ、いいの!?』
❤️『もちろん! それから、俺の必勝祈願も一緒にしたいなーって』
💛『ゆあんくんの大会、もうすぐやもんな』
❤️『うん!!』
……あれ。
ゆあんくん、文字のテンションが、いつもより少しだけ、高い気がする。
気のせい、かな。
💚『じゃあ、決まり! 今日のお昼、みんなで行こう!』
🩷『はい!』
💛『分かった』
画面のすみっこで、ゆあんくんの名前の横に「入力中…」の表示が出た。
出て、消えて。
また出て、消えた。
結局、何も、送られてこなかった。
……何を、言いたかったんだろう。
そう思ったときには、もう、新しいメッセージが流れていた。
***
スマホを置いて、窓を開けた。
冷たい空気が、ひゅうっと入ってくる。
空には、星がいっぱい。
遠くで、除夜の鐘が、まだ鳴っている。
あ、冬の大三角。
重なる冬の大三角を指で繋いだ。
星空の下で沢山の家々が影を刻んでいる。
💚「……ねえ、たっつん」
💛「ん?」
💚「今年は、どんな一年にしたい?」
💛「……急やな」
💚「だって、新年だよ?」
たっつんは、少し考えて。
それから、静かに言った。
💛「……いい一年に、したいなー」
💚「ふふ。超ざっくりだね」
💛「お前は?」
💚「俺は……」
空を見上げる。
いっぱいの星が、きらきらと光っていた。
💚「みんなで、ちゃんと、笑って卒業したい」
💛「……っ」
💚「受験も、頑張って。高校も、ちゃんと決めて」
💚「それで……たっつんと、ずっと一緒がいい」
……あ。
勢いで、言ってしまった。
でも、嘘じゃない。
たっつんは、しばらく、黙っていた。
それから。
💛「…………ほんまに、お前は」
小さな声で、そう呟いた。
その横顔は、耳まで真っ赤で、なのに、少し泣きそうだった。
💛「……最悪」
💚「何が?」
💛「なんでもない! ほら、窓閉めろ! 寒い!」
💚「えー、今、星綺麗だったのに!」
💛「うるさい! 風邪引くやろ!」
ぴしゃん。
窓が閉まった。
部屋の中は、窓を開けたせいで寒い。
でも、胸のあたりは、なぜか、さっきから、ずっと熱い。
……新年だからかな?
うん、たぶん。
きっと、そう。
笑い声だけが響き渡る。
***
――新しい年が、始まった。
何が待っているのかは、まだ分からない。
推薦の面接。
ゆあんくんの大会。
受験。
卒業。
きっと、これから、たくさんのことが起こる。
でも。
隣には、たっつんがいる。
それだけで、不思議と、怖くなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
いつも♡やコメントをしてくださってる方はフォロバしました!いつもありがとうございます!
今回の曲はいれるのが超難しかったです笑
次回 第46話 結び目 ♡200↑
コメント
5件
恋、自覚してないのかぁ!?さっさと付き合ってくれぇ!?てかシャンパンタワーさいきんきいてないな~、と思ったので今日ききます!頑張ってください!
シャンパンタワーだ〜!めちゃくちゃエモい…!、書き方上手くて本当に尊敬です🫶💕
ああ、いいなあ……大晦日のぬるっとした空気感と、二人の距離感がぎゅっと詰まってて、すごく好きです。特に押入れから出てきたヒーローの作文とどんぐり缶のところ、あれ、“捨てへんの?”“当たり前じゃん”のたったそれだけのやり取りで、どれだけお互いを大事にしてるか伝わってくるのが憎い。年越しのカウントダウン直前のたっつんパート、心臓の音が聞こえそうなほど生々しくて、読んでるこっちまで緊張しました。“最悪”が本音の裏返しなの、分かり切ってるよ……。穏やかだけど確かに積み上がってきた一年の重みが、新年の一声に全部乗ってる、そういう話でした。素敵なエピソードをありがとうございます。