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Hayato×Jinto
※花屋さんの吉田さんとお客さんの佐野さん設定です
Hayato side
とある花屋の店先
金髪の青年が花の小鉢を両手に抱えて運んでいる
着ていたTシャツが何故か汗ばんだ
彼に見惚れて
躓いてしまった
彼はこちらを見て微笑んだ
花屋の前を通る度彼の姿を探すようになった
いや、花屋の前を通るルートを知らず知らず選んでいる
彼の姿を見つけても
何も出来ずにただ通り過ぎてゆく
これが恋なんていうものなら
なんて苦しいもんなんだろう
おはよう、花屋さん
心のなかで何度も話しかけたけど
実際にはそんな勇気なんてなかった
花屋の前を何度通り、
花屋さんにおはようを何度念じたかわからない
「こんにちは」
花屋さんの声
花屋さんの眼差しが自分に向けられている
「…こんにちは」
やっと声になった挨拶
「いつもお店見てらっしゃるから、花がお好きかと思って」
金髪が光に透けてキラキラ光っている
心拍数はさらに高まった
「あの、…その花の名前は」
自分の心音で、自分がどのような声を出しているのかわからない
「ああ、ラナンキュラスといいます。可愛い花ですよね」
はじめて見た時に彼が抱えていた花
「ラナンキュラス…1つ、いただけますか」
「どの花にしますか、色がたくさんあって…」
「…花屋さんが、一番好きな花で」
「…僕の…ですか?」
少し不思議そうな顔をしたが
「…じゃあ、これを」
彼が選んだのは優しい黄色の花だった
「またいらしてください」
優しい瞳で微笑まれて
何を話して
どう受け取ってどう帰ってきたのかもわからない
あの髪の毛みたいに透き通った、でも少し甘い声だった
胸は苦しいのに、喜びで満ちている
彼は不思議な力を持っている
魔法使いのようだ
魔法使いのような人に
めぐり逢えることを
僕はずっと待っていたのかもしれない
5月の扉を開けると
街は花で溢れだす
名前も知らない花屋さん
僕の気持ちを連れ出していく
「こんにちは」
今日は自分から話かけると
長めの前髪から覗く瞳が細くなって
微笑まれているのだと知る
「…名前を、教えてください」
持てるだけの勇気を振り絞って言った
きょとんとした顔
「…どの花ですか」
「…あなたの」
「花屋さんの名前が知りたい、です」
名前を告げる奏でるようなその声は
頭に優しく乗せられた 花冠のようだった
きっと
魔法使いのような君に
めぐり逢うことを
僕はずっと祈ってた
fin.
花冠と5月の魔法使い/ya-foo
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