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せんたくのり
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佐野さんの癖に反応する吉田さんの話
傷つけられたい佐野さんのお話。
そういう行為をするとき、勇斗が決まってすることがいくつかある。
帰ってきてから俺に甘いものをくれること。
いつも以上に俺に触れてくること。
なかなか寝室に行こうとしないこと。
そして、爪をやすりで整えること。
この行動をされるとき、あぁ今から抱かれるんだなと確信に変わる。
爪を切るだけなら、ただ伸びてきたから整えているんだなで済むのだが、やすりをかけていると話が変わる。
この日も、帰宅するなりコンビニの新作スイーツを渡された。
ちなみにこれは、行為をがんばる俺へのご褒美らしい。
夜ご飯を食べ終わってもリビングに居座り、頭や手に必要以上に触れられる。
俺が風呂から上がると、パチパチと爪を切る音がする。
全ての指を切り終えると、棚からやすりを取り出す。
やすりをかける指先は妙に丁寧で、まるで壊れ物でも扱うみたいだった。
その姿を見て、温まった体が更に火照るのを感じる。
この間、何をしていればいいのか分からなかったので、隣に座って爪切りを持つ。
この前一緒にお風呂に入った時、勇斗の背中に傷がたくさんあるのを見た。
あれは恐らく俺がつけたもので、体を洗う時に染みるのか、若干顰めた顔が忘れられない。
伸びきった爪。
勇斗を傷つけたことに罪悪感をずっと感じていた。
親指の爪を切ろうとした瞬間、優しく勇斗に取り上げられた。
「え?」
「全部できたから、行こ」
見れば、勇斗の爪は瞬く間にツヤツヤになっていた。
「俺も切るからちょっとまって」
「仁人は切らなくていい」
「は?なんで?」
自分は切るのに?
お前、また背中に血が滲むんだぞ?
それをそのまま言葉にした。
「いや、それとこれとは話が違うじゃん?」
「ちがくない」
「仁人の中傷ついたら嫌じゃん」
そう言って、勇斗は俺の手を軽く撫でた。
どれだけ我慢した日でも、勇斗の爪はちゃんと整えられている。
その理由が、なんとなく分かってしまって。
「……でも、勇斗の背中も大事。」
「俺は別に痛くないし」
「嘘だろ。こんなんに引っ掻かれたらたまったもんじゃないって」
「いやほんとに」
「嘘つけ」
そう言ってまた爪切りを手に取る。
そしてまた奪われる。
目を逸らしたかと思えば、こんなことを言う。
「……俺、仁人に引っ掻かれるの好きだから」
「は?」
何を言っている。
「なんか、仁人が一生懸命頑張ってるって感じがする」
そんなこと言わなくていい。って言いたかったのになんだか恥ずかしくて言葉が出てこなかった。
「痛くないはさすがに嘘だけど、なんか、なんだろ。その痛いのも好き。仁人から付けられるなら」
「……なにいってんの」
「仁人のもの、って実感する」
その言葉に、最中付けられた首元の赤い印を思い出す。
『俺のって印』
なるほどね。
俺のものって実感が欲しいなら、いくらでもくれてやるよ。
俺は勇斗の襟を強引に引っ張り、首元に口付けをする。そのままの勢いで赤い花を咲かせる。
チクッとした痛みに勇斗の肩が跳ねる。
勇斗の顔を見ると、目が飛び出そうなほど驚いていた。
「え、仁人から…初めて……された……」
「うん」
間抜けな顔。おもしろいな。
その様子ににやけていると、まんまと仕返しをされた。
しかも2箇所。
「ちょ、ねぇ勇斗!ここ見える!」
「仁人がしてきたのと同じ場所なんだけどな」
ほら、と見せられる。
「〜〜!それとこれとは別!」
「笑 なにそれ」
この日は、いつもよりも多くの花が咲いた。
互いに、自分のものにしようと必死で。